ウクライナとロシアに関する書籍が売れている。「ウクライナはどういう国なのか」「なぜロシアは軍事侵攻したのか」。疑問の答えを知ろうと手に取る人が増えているようだ。(井上勇人)
東京都千代田区の三省堂書店神保町本店では、3月上旬から関連本の特設コーナーを設けた。連日、多くの人が購入していく。
ウクライナが旧ソ連から独立するまでの歴史を記した「物語 ウクライナの歴史」(中公新書)は、黒川祐次・元駐ウクライナ大使の著。2002年に刊行された。出版元の中央公論新社によると、ロシアがクリミアを併合した14年にも注目を集め、9000部を増刷した。今回は、その時を上回る関心を呼んでおり、今月中旬までに9万部を増刷する予定だ。
同社には、読者から電話やSNSで「ウクライナを初めて深く知った。早く平和になってほしい」といった反響が届いているという。担当者は「侵攻を考えるきっかけにしてもらえれば」と語る。
ウクライナ民話の絵本「てぶくろ」(エウゲーニー・M・ラチョフ絵、内田莉莎子訳)も、よく手に取られている。日本では福音館書店が1965年に初版を発行した。
物語は冬の森が舞台。おじいさんが落とした片方の手袋にネズミやキツネ、クマなど7匹の動物が次々と潜り込む。先に入っていた動物が後から来た動物を受け入れ、窮屈になりながらも仲良く過ごすという内容だ。
三省堂書店神保町本店では侵攻前、月に数冊程度の売れ行きだったが、侵攻後は約20冊を販売した。担当者は「保護者らが、子どもたちにウクライナのことを伝えるために購入しているのでは」とみる。
昨年5月に刊行の「現代ロシアの軍事戦略」(ちくま新書)は、東大先端科学技術研究センターの小泉悠専任講師がロシアの軍事思想を読み解いた一冊だ。
出版元の筑摩書房によると、こちらも侵攻後に売れ行きが伸び、6万部超の増刷が3月中旬までに決まった。ロシアの過去の軍事侵攻や大規模演習、サイバー攻撃などの手段を紹介している。
担当者は「書籍では北方領土問題にも言及している。ロシアがどういった考えで行動するのか知っておこうと買う人が多いのではないか」と話している。