書店員らマンガ好きの有志が投票で選ぶ「マンガ大賞2023」が27日発表され、とよ田みのるさんの「これ描いて死ね」(小学館)が選ばれた。同作は、東京の離島に住む女子高校生が、長年、活動を休止しているあこがれの漫画家との出会いを機に、仲間やライバルたちとマンガ創作に挑む青春物語。
授賞式には、とよ田さん本人が登壇し、メディアからの質問に答えた。
――受賞の感想は。
「なぜ僕が、という気持ちですね。今年で(マンガ家デビュー)20年目くらいなんですけど、『やっとか』という気持ちもございます」
――どのように受賞の知らせを受けたか。
「(アウトドアレジャー用品メーカーの)すごいリラックスできる椅子があって、朝、それに座りながらゲームをしてたんですよ。そしたら、そんな時間に珍しく、小学館の担当さんから電話があって、それが受賞の知らせで。椅子から転げ落ちましたね。ただただパニックでした」
――家族への報告は。
「妻がちょうど買い物に出ていた時だったので、A4の紙に『俺がマンガ大賞だ』って書いて、顔に貼って寝てました。妻は『泣きそう……』って。小学3年生の娘は、すごい悔しそうな顔をしてました。作中で、主人公が初めて描いたマンガの拙さを表現するために、僕が娘が描いたマンガをパクったのを根に持ってるんです。ここで言ったから、許してほしい」
――ある意味、家族の合作。
「『チームとよ田の勝利だぞ』って家族に言いましたね。妻は本当に絵がうまくて、マンガの中で天才の子が描いてる絵は、妻に全部任せてるんです。拙いマンガは娘の作品を僕がマネしながら、左手で描いてます。よれよれの線を引くのって案外難しいんですよ」
――受賞を伝えたマンガ家仲間は。
「『寿エンパイア』のせきやてつじ先生と、『バイオレンスアクション』の原作の室井大資くんが仲の良い友達で、室井くんは泣いて喜んでくれて。2人が、この(授賞式で身につけている)ネクタイとハンカチを贈ってくれたんです。しかもその後に、『バンビ〜ノ!』というイタリア料理マンガを描いていたせきや先生が、いいイタリア料理店に連れてってくれて、2人でおごってくれました。ほんとうれしかったですね」
――主人公が住む「伊豆王島」は、自身の出身地・伊豆大島がモデルのようだが。
「連載前に、雑誌『ゲッサン』の編集長に出身地を聞かれて答えたら、『次回作は、そこを舞台にしたら』と言われたんです。舞台装置として、島っていいかもなぁと思って。島から船に乗って(本土の)コミケとかに行くのって、冒険みたいでいいじゃないですか」
「大島には3歳までしかいなかったので、昔からの知り合いはほとんどいないんですが、今回改めて取材をして知り合った方々に、『(賞を)取りましたよ!』と報告したいですね」
――印象的なタイトルの由来は。
「僕はいつも連載前、自分自身を
――今後の目標は。
「主人公が言っているように、自分で納得できるマンガを描きたいっていうだけですよね。このマンガも今後、それを追求する話になると思います」