“ありそう”な怖さに胸がざわつく…「何かおかしい」「変な家」で注目される雨穴の作家性

“ありそう”な怖さに胸がざわつく…「何かおかしい」「変な家」で注目される雨穴の作家性

ラジオ番組「オビナマワイド」放送中に起こる不思議な現象に迫る「何かおかしい」

(MOVIE WALKER PRESS)

今年5月よりテレビ東京にて第1シーズン(全6話)が放送され、早くも第2シーズン(全12話)が2023年に放送予定(Paraviでは8月12日からは順次先行配信、YouTubeテレビ東京公式ドラマチャンネルでは奇数話のみ無料配信)のドラマ「何かおかしい」。ラジオ番組の生放送中に発生するわずかな違和感が悲劇を巻き起こす、”リアルタイム進行型ヒューマンホラー”だ。本作の原案を務めたのは、昨年自身初の著書「変な家」を出版し、30万部超えのベストセラーとなったウェブライターの雨穴(うけつ)。全身黒ずくめの衣装にお手製の白いお面という不穏なビジュアルが印象的で、おもにオカルト系記事を執筆している。そこで今回は、「何かおかしい」「変な家」をはじめ、雨穴が描く独自の物語の魅力について語っていく。

■人間の恐ろしさを描く「何かおかしい」

「恋せぬふたり」の濱正悟が主演を務め、松尾諭、ヒャダイン、岡田結実といった個性豊かなキャスト陣が出演した「何かおかしい」では、架空のラジオ番組「オビナマワイド」の放送中、視聴者から届いたメールやゲストの話を基に番組が進行するなかで、徐々に不可思議な現象が発生していく。例えば第1話では、リスナーからのリクエストにより、閉園式典を行う遊園地でオビナマワイドが中継を行っていると、不気味なお面をつけた人物が映り込み始める。初めは1〜2人だったお面の人物が少しずつ増えていくのに伴い、SNS上でもその遊園地に関連する”あるツイート”が拡散、増加していき、生中継にも異変が現れる、というものだった。

このほか、刑務所横の民家の庭にたなびくカラフルなハンカチの秘密や、山奥の村で行われている奇祭の取材に訪れた女性レポーターに起こる顛末などが描かれた「何かおかしい」。そこには、「結局、一番怖いのって人間だよね」という、ヒューマンホラーやサイコスリラーなどでこれまでにも描かれてきたテーマが内包されている。しかし、雨穴によるシナリオでは、独自のアプローチで人間の恐ろしさが描かれていき、どこか「ない話でもないのかもしれない」という妙な生々しさがゾワリと恐怖心を煽ってくる。

■独特な雰囲気を醸し出す…雨穴とは?

雨穴は、Webメディア「オモコロ」で行われている記事制作コンペでの受賞をきっかけに同媒体のライターとして加入。その後は、上記のようなオカルトものはもちろん、不思議なものを生みだす工作記事や、街でふと見つけたちょっと不気味なアイテムのレビューなど、雨穴ならではの世界観が発揮された記事を多数執筆している。しかし、実はその風貌や雰囲気からは想像しづらいユーモアも併せ持ち、SNSでは日常に近い投稿も多い。

上記のように、ただならぬ雰囲気を持ちつつ、“普通の人”っぽい側面もある雨穴は、「何かおかしい」でストーリーテラーとして出演している姿の通り正体不明で素性はいっさい明かされていない。そんなつかみどころのなさも雨穴の魅力と言えるだろう。

■映画化も決定!ノンフィクション風で描く「変な家」

2021年に出版された雨穴の代表作の一つ「変な家」は、2020年に「【不動産ミステリー】変な家」としてアップされたWeb記事が基になっている小説。事故物件でもなく、そして怪奇現象が起きるわけでもない、しかし、間取りを見るといくつかの違和感がある“変な家”の真相に雨穴が迫っていくという物語で、「台所にある謎の空間」や「子ども部屋に至るまでの導線の不自然さ」などから推測できるその家の秘密が語られた。

そして、このWeb記事を“序章”としつつ、全4章で“変な家”の真実にさらに踏み込んでいくのが書籍版「変な家」だ。すでに本作は映画化も決定しており、この独特な世界観がどのようにスクリーンで表現されるのかも非常に気になるところ。

■ポップでかわいい(?)面も。多才な雨穴の魅力とは

オカルト創作で人気を集める雨穴だが、実はポップな記事も多い。例えば、「食品のパッケージ写真をそのまま再現してみた」という記事では、タイトル通り、商品パッケージの再現料理に雨穴自身がチャレンジする内容。彼は定期的にお料理記事を作っているが、どれも完成度が高く、驚かされる。また、うさぎのことを考えない日はないというほどのうさぎ好きで、彼の家の窓にはうさぎのイラストが置かれている。実はお料理上手だったり、かわいらしい一面もあったり、ただの黒ずくめの怖い人ではないのだ。

一方、やはり雨穴の一番の持ち味であるオカルト創作には、ある特徴がある。彼の記事の多くは、“ノンフィクション風”で書かれており、雨穴が実際にその話を見聞きしている、という体で話が進んでいく。一方、掲載媒体である「オモコロ」は、漫画や小説といった創作も多いが、記事広告や取材モノ、実践記事といったノンフィクション記事が多いのも特徴。雨穴はオカルト記事以外にも、実際に料理や工作をする記事も多いため、媒体そのものの傾向と相まって、なにも知らずに読み始めるとノンフィクションとしてすんなり入ってきて、レポート記事かな?と読み進めるうちに、だんだんと雨穴ワールドにはまっていってしまう。

雨穴は以前、着想を得た作品として『犬神家の一族』(76)、『八つ墓村』(96)を挙げつつ、閉鎖的な村や一族の風習といったものに対し、「『実際にこういう世界で一生を終えた人たちが日本にはたくさんいるんだろうな』と、考えさせられました」と語っている。こう雨穴が答えた通り、「実際に真相を知らないというだけで、もしかしたら絶対にフィクションである、とは言い切れないのかも」と思わされるのが彼の作品の魅力ではないだろうか。

「何かおかしい」「変な家」をはじめ、斬新な形で作品を生みだし続ける雨穴。オカルト系創作では独自のセンスで強烈な印象を与えてくる彼だが、実は作曲を行ったり、自作の歌にあわせてダンスを作ったりと、とっつきやすい(?)一面もある。そんな彼自身の魅力にも心をつかまれつつ、今後の作品にも注目していきたい。

文/サンクレイオ翼

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