【山中秀樹】なくならないニュースでのおかしな日本語

 アナウンサーという仕事柄、ニュース番組での変な日本語がとても気になる。8月下旬の深夜ニュースで、メインの女性キャスターが、お天気キャスターに「毎日暑い日が続きますね」と話を振った。その天気キャスターは「早く残暑が来てほしいですね」とにっこり。テレビを観ていた私は、思わず「違うだろ!」と突っ込んでしまった。

 読者諸兄はお分かりだろうが、立秋を過ぎての暑さを残暑と呼ぶのであり、8月下旬はもちろん立秋は過ぎている。明らかに誤用なのだが、そのまま訂正もなく番組は進行していった。番組終了後の反省会でスタッフがちゃんと指摘していてほしい。

 それから一週間後、今度は5歳児が餓死した事件のニュースで「皮と骨だけの状態で発見され…」というナレーションが流れた。

 これは「骨と皮」でなければならない。こいう慣用表現をいい加減にしないでほしい。「骨肉の争い」を「肉骨の争い」とは絶対に言わないし、第一気持ちが悪い。

 原稿を書く側は、自分の基準だけで原稿を書くと思わぬ落とし穴にはまってしまう。私が20代の頃、あるスポーツニュースの原稿で「生みの難産」という表現が出てきた。すぐさま、原稿を書いた先輩記者に「こんな日本語はない」と指摘したのだが、体育会系のその先輩は「オレが書いた通りに読め」と譲らない。このまま放送したら、私だけじゃなく会社の不名誉になる。

 私は、会社にいた40代のデスクアナに電話で助けを求めた。そのデスクアナは原稿を書いた記者に「『生みの難産』なんて日本語はない。それを言うなら『生みの苦しみ』だ!」と一喝してくれた。

 先輩記者はしぶしぶ原稿を書き直したが、それ以降その人に「生意気な野郎」とにらまれる結果になった。別に気にもしなかったし、間違った日本語を放送するくらいなら、そんな個人の軋轢(あつれき)など些末な話だ。もう40年近く前の話である。

 山中 秀樹(やまなか・ひでき)1958年生まれ、広島市南区出身。幟町小から修道中・高、早大第一文学部を経て、81年にフジテレビにアナウンサーとして入社。同局の看板アナウンサーの1人として幅広い分野で活躍。06年12月31日付で同局を退社。現所属は(株)タイタン。血液型はO、好きなものは芋焼酎で、苦手は変な日本語。特技はベンチプレス100キロ。美智代夫人と2人暮らし。

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