■「あっけなく会うんだ…」予想を裏切られた“再会” 劇的ではないがゆえに「かつての2人にすぐ戻れた」
――前作では「season20」という節目の作品でしたが、その大台を超えて、何か違った景色は見えましたか?
【水谷】毎回そうですけど、振り返ることをしないでここまで来ていますからね。実は亀山くんの前に7人(特命係を)辞めているんですけど、今回亀山くんがカムバックということで、一番長く相棒をしてくれた亀山くんが再び戻って来てくれたということがまず僕にとっては大変なことで、僕はずっとこの日を待っていました。
――14年ぶりとなった水谷さんと寺脇さんのタッグ。右京さんと薫さんの再会のシーンが撮影でも最初のシーンとなったそうですが、お二人はどんな心境だったのでしょうか。
【水谷】最初台本を読むときに、さてさてどんな再会をするんだろうと思っていたんですけど、あっけなく会うんだ…って(笑)。でもこの“あっけなさ”に相棒であった2人の関係性がにじみ出ているなと。逆に劇的にしないぶん、かつての2人にすぐ戻れました。我々にとっては本当に楽しい出会いをさせてもらったなと思っていますね。
【寺脇】お互い照れる時間もなく…(笑)。台本が来る前は、それぞれ別々で行動していたのが、最後に合流するのかなと思っていたんですけど、ものすごい予想を裏切られて。でも、だからこそいいんだなと。会うまでが必要じゃなく、会ってから動き出すのが“相棒”なんだと思いました。現場でも14年経ったんだけど、14年間の記憶を持ってタイムスリップしてきたような、そんな感覚でした。
■「おいおい!若返れ!」14年ぶり亀山薫役に喝 卒業回「薫最後の事件」も回顧
――まさに“薫ちゃん”という再会の仕方でしたね。
【寺脇】そうですね! 脚本の輿水さんもその辺をわかっていらっしゃるなと思いました。
――そんな初日の撮影もスムーズに進み、寺脇さんは14年のブランクを感じさせないほどだったそうですが、それでも14年ぶりではあるので、変わったなと思うところはありますか?
【寺脇】自分が歳をとったっていうくらいですね(笑)。でも、亀山薫がまた僕の中に入ってきたので、「おいおい!若返れ!」って言われている感じがして、若返っています。
【水谷】僕はね、MA-1がまだこんなに似合っているっていうことがすばらしいと思いますね。久しぶりに戻ってきてまたMA-1を着るのはどうかなと思っていたでしょ?
【寺脇】そうですね、でも着てみると自分のものっていう感じがしましたよ。薫のショートヘアも久しぶりだったので、しなってなっていたらどうしようかと思っていたんですけどしっかり“薫ヘア”になってくれました。
特命係のセットに14年ぶりに入ったときも、もっと感慨深いかなと思ったんですけど、「ああ、ここだった」という感じで。2人が別の役で再会していたら違うのかもしれないですけど、右京と薫なんで、なにも変わらないという感じでした。
――寺脇さんが卒業されたのは、シーズン7の「レベル4〜後篇・薫最後の事件」でしたが、いま振り返ってみて、思い出されるエピソードはありますか。
【寺脇】最後の特命係でお別れするシーンは、なんだか薫なのか寺脇なのか、右京さんなのか水谷さんなのか、その辺がごちゃごちゃになってしまっていました。いろんな方への感謝の気持ちもあって、さまざまな感情が渦巻いていて。あのとき夕焼けの中でした握手は俺にとって特別な時間でしたね。
【水谷】やっぱり『相棒』というドラマですから、その中で生きている2人であるはずで、そうでなきゃいけないと思うんですけど、どうしてもそれだけじゃ済まない世界ができてしまっていました。
■「もう亀山としてはないと思っていた」寺脇が明かす後任“相棒”への思い
――『相棒』を卒業されたあと、新たに右京さんの相棒となった3人をどういう思いで見られていたのでしょうか。
【寺脇】相棒ではあるんだけど、それぞれ人間性が全然違っていていいなと思っていました。僕は卒業のときにもう亀山として(の出演)は無いと思っていましたので、ちょっと優しい目で見ていました。「大変だろ、右京さん。頑張れ!」っていう(笑)。だから仲間意識は強いですね。これから歴代相棒と会う機会があったら、すごく結束していると思うんです(笑)。
【水谷】一人を敵にしてね、みんなでまとまるつもりなんですよ(笑)
【寺脇】そうなると思いますよ(笑)
――では、水谷さんは改めて4人の“相棒”をどう見ているのでしょうか。
【水谷】共通するのは、“か”ではじまって“る”でおわるだけ。あと中身は全然違います。そして、プロデューサーのみなさんもそうなんですけど、『相棒』がもうそろそろ終わりに向かってきたと感じたときは、亀山薫再登場っていうのはイメージにあったんです。だけど、なかなか『相棒』が終わらない(笑)。
――そんな中、ついに寺脇さんが再出演となったのはなぜでしょうか。
【水谷】いよいよ、いつまでも待っていたら終わらないぞとなったので「そろそろ亀山くんに来てもらいましょう」ということになったんです。そり(反町隆史)も7年やって、もうちょうどいいくらいやってもらって、タイミングがものすごい良かったんです。本当によく来てくださいました!
【寺脇】よく呼んでくださいました!
――では『相棒』は終わりに向かっているということでしょうか?
【水谷】常に『相棒』って終わりに向かっているんですよ。ただ終わり方が分からないだけで(笑)。人生よりは先にドラマが終わるはずですけど、まだいつ終わるかは分からないんです(笑)。
――最後に本作を楽しみにしているファンの方へメッセージをお願い致します。
【水谷】これはね、視聴者の方も楽しみにしていたと思うんですよ。何と言っても初代の“相棒”ですからね。僕も同じように楽しみにしていたんです。4代目までいて、それぞれ違う“相棒”でしたが、そんな中で最初の“相棒”が戻ってきたっていうのは僕にとって逆に新鮮な気持ち。重ねてきたからこそ、「season21」を迎えられるんだなと思うと、本当にうれしいと思います。
【寺脇】やっぱりここまで続いてきたっていうのは、豊さんの力で、これだけ長くやってきて、帰ってこれる土壌を、築き上げてくださった。それが帰ってきたときの一番の喜びで、すごい所に帰ってこれたなと言う思いがあります。
【水谷】やっぱり相棒の現場はいいでしょ?
【寺脇】本当にいいんですよ。ぜひ、14年ぶりの杉下右京と亀山薫を見ていただきたいですね。