匂わせ描写や伏線が散りばめられていた?
最終章が盛り上がりを見せるマンガ『ONE PIECE』では、近年衝撃の事実がいくつも明かされてきました。なかでも一番話題になったのは、ルフィが「ゴムゴムの実」を食べた「ゴム人間」である、という大前提がくつがえされたことではないでしょうか。
原作第1044話「解放の戦士」では、ゴムゴムの実の別名が「動物(ゾオン)系 ヒトヒトの実 幻獣種・モデル『ニカ』」であることが発覚しました。ルフィが覚醒したことにより、かつて「太陽の神」と呼ばれた「ニカ」の力が開花したのです。
連載が始まって4半世紀後に発覚した新事実に関して、「さすがに後付けでは」と思った読者は多かったようですが、一方で「以前からニカを匂わす描写がされていた」という考察も生まれています。
たとえば58巻の第571話「処刑台」の扉絵には、大きなカニに髪をカットしてもらっているナミ、そして鏡が描かれています。鏡を「反転するもの」と解釈した場合、登場キャラであるカニを反転(逆から読む)すれば「ニカ」になるのです。
強引にも感じる考察ですが、第571話では当時の海軍本部元帥センゴクが「ヒトヒトの実 幻獣種・モデル『大仏』」の能力を初めて発揮させていたため、センゴクと同じくヒトヒトの実である「ニカ」を匂わせたという可能性も十分に考えられます。
ほかに62巻の表紙にも、ニカを匂わせていたといわれる描写がありました。そのポイントは、表紙中央にいるルフィの上に描かれた「メダカの人魚の五つ子(上からイチカ・ニカ・サンカ・ヨンカ・ヨンカツー)」です。横並びで五つ子たちが並んでいるのですが、ルフィの真上にいるのが「ニカ」でした。
兄弟や姉妹で並ばせる場合、普通であれば長男や長女から始まって末っ子にかけて並ぶものですが、62巻の表紙では左から「イチカ・ヨンカ・ニカ・ヨンカツー・サンカ」の順で並列しています。不規則な並びのため、やはり「ニカを中央に配置したい」という狙いがあっての順序だったように感じてしまいます。やはり「ルフィがニカである」ということを示唆していたのでしょうか。
また、ルフィの「ゴム人間」という設定にも、「匂わせ」説がありました。九州地方には「ゴム」の原料となる木「ガジュマル」が有名なスポットがあり、そのガジュマルの別名が「ニカ」というのです。作者の尾田栄一郎先生は九州の熊本出身のため、ガジュマルをもとに「ゴムゴムの実の別名はニカ」というアイデアが思いついたとしても不思議ではありません。
ちなみに幼少期のルフィがゴムゴムの実を食べた1話でも、「もうニカの影響が出ている」という考察があります。そうとは知らずに悪魔の実を食べ、泳げない身体になったことにショックを受けていたルフィですが、その直後の場面では魚屋のおっちゃんがルフィに「近頃一段と楽しそうだな」と言っていました。
ルフィは相変わらずシャンクスたちの船に乗せてもらえず、特に何かが好転していたわけではないのに「一段と楽しそう」になっているのは、太陽神・ニカの人びとを笑わせ苦悩から解放してくれるという特性が影響しているからでは、という考察です。
ほかにも、ファンの間で「30巻の第277話『箴言(マクシム)』に登場した大蛇が『にかっ!!』と微笑んだ」「『ONE PIECE』のタイトルロゴの『O』は太陽十字(〇のなかに十が書かれた記号)を表していた」などの「ニカの匂わせ」考察が出ています。
あくまでも想像の域を出ないものですが、ここまでさまざまな考察ができるのも『ONE PIECE』の魅力なのではないでしょうか。