「院内警察」出演中の玄理が涙止まらずNGを出した場面とは

「院内警察」出演中の玄理が涙止まらずNGを出した場面とは

ドラマ「院内警察」で外科医の上條萌子役を演じる(撮影現場で、写真提供・玄理さん)

(大手小町(読売新聞))

今年の三が日は実家に帰ることもなく、年末の疲れを少しでも取ろうと布団にくるまっていた。まさに「寝正月」であった。

冬季限定でモゾモゾと腕の中に入ってきてくれる我が家の犬、モモがずっと隣にいて気づいたが、犬って毎日が正月。食べて寝て食べて寝て……今年は義姉が送ってくれたわんこ用おせちに相当ご満悦で、もう二度とドライフードに戻れなそうなモモと新年を迎えた。

1月12日からは、フジテレビ系列ドラマ「院内警察」の放送が始まった。新年の撮影初日、朝方メイクルームで準備をしていると、流れるニュースから被災で家族を失った男性の嗚咽(おえつ)が聞こえてくる。やるせない気持ちで衣装に着替えた。

その前日には、友人の誘いでサカナクションの山口一郎さんのソロライブツアーに行った。ツアー最終日だった。山口さんがライブ中のMCで言ってたような「普段BLACKPINKとか聞いてて、友達に連れてこられた客」にドンピシャで当てはまった私だが、終盤あんなに泣きながら拳を突き上げて「新宝島」を聞くことになるとは思わなかった。

うつ病で療養していたことを公表し、それを分かち合い、周りへの感謝と未来への希望を紡ぐ山口さんの姿をいつの間にか応援していた。サカナクションが今年から復活する、という宣言ののち、それまで山口さんしかいなかった舞台にメンバーが突然現れた時には、私の気持ちはかれこれ30年くらいサカナクションを応援している古参のファンになっていた。彼が現代という荒波を航海する、リアルルフィのように思えたものだ。

正直に言うと、そこまで感情移入した理由の一つに、自分がいつかそうなってもおかしくない、という恐怖があった気がする。頑張って頑張って、ある日の朝いきなり一歩もベッドから動けなくなる。よく聞く話だ。ラジオ番組をやっていた頃、メンタルヘルスの問題はもちろんシングルマザー・子供の貧困や、路上生活者、LGBTQといろんな話題をとりあげて当事者や支援者の方達に会ったけど、毎回思うのは「紙一重の差」だということだ。

純粋に、一人の人間に原因や問題があることはごくごく 稀まれ で、誰も悪くなかった。いろんな偶然や選択の結果で、たまたま私はここにいるだけだった。

最後から2曲目に披露してくれた「シャンディガフ」という曲が特に好きで、私には私の、あなたにはあなたの地獄があるんだと言われている気がした。どんなに有名でも、お金持ちでも、成功してても、平凡でも、つまらない人生でも、自分のことが好きでも嫌いでも。そしてその事実を慰めにするんじゃなくて、誰かを理解して受け入れるために使えたら。

さて、「院内警察」で私が演じる上條萌子は、若い頃に父を過労で亡くし、それは医学部に進学したかった自分のせいだと思っている外科医である。

彼女自身も医者として十分に優秀だが、到底歯がたたない天才外科医の榊原(瀬戸康史さん)が同期だ。こんなはずじゃない、もっといけるはずだ、と自分を鼓舞し時に空回りする彼女が、やっと階段を一歩上れる瞬間を描いた第2話が好きだ。

撮影の本番中、横暴と思いきや人をよく見ている大物政治家(ベンガルさん)の台詞(せりふ)一言が、どうしようもなく心にしみて、涙が止まらなくなってNGを出した。「自分を責めちゃいかん」――。とにもかくにも頑張りすぎてしまう私たちにもまた、この言葉を送りたい。

さすがに犬のように、というわけにはいかないが、人間程よく働いて程よく休み、美味(おい)しいものを食べてたまに運動していっぱい笑う人生が理想かもなあと思う、一年の幕開けである。(俳優 玄理)

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