「芝居の生の魅力伝えた」 奈良の大衆演劇場「弁天座」9月末閉館

「芝居の生の魅力伝えた」 奈良の大衆演劇場「弁天座」9月末閉館

弁天座を家族で経営してきた(左から)宮崎和久さん、昌明さん、元伸さん=奈良県大和高田市で2023年9月7日、浜名晋一撮影

(毎日新聞)

 大衆演劇の劇場として2005年のオープンから親しまれてきた奈良県大和高田市北本町の「弁天座」が、9月で閉館する。新型コロナウイルス禍による経営悪化が原因。劇団やファンの間からも閉館を惜しむ声が上がっており、経営者は劇場の運営を他の会社などに任せられないか模索している。【浜名晋一】

 弁天座は、曽祖父の代から芝居小屋を開いていた宮崎昌明さん(76)が映画館を改修してオープン。桟敷席も備えた本格的な劇場としてファンの人気を呼び、黒字経営を続けてきた。しかし、新型コロナの感染拡大で状況は暗転。客の多数を占めていた高齢者の来館が激減したことで、売り上げは最盛期の3分の1にまで減少した。

 劇場は現在、昌明さんの他、妻美幸さん(69)、長男元伸さん(44)、次男和久さん(39)による家族経営。ここ2〜3年で5人いたパート従業員をやむなく1人に減らしたり、蓄えを取り崩したりして経営努力を続けてきた。しかし、今の状態が続けば銀行からの借り入れを余儀なくされることなどから、家族による相談の結果、閉館を決めたという。

 ◇建物取り壊さず、貸し出し模索

 9月公演を務める「劇団十六夜(いざよい)」の市川叶(きょう)太郎座長(50)はオープンした直後に舞台に立ったこともあり、思い入れは深い。劇場の中には人手不足で裏方も役者が務めざるを得ない所もあるが、「弁天座は裏方、大道具とも充実していてありがたかった」と振り返る。自身の劇団が弁天座最後のステージに立つことになり、「楽しく、お別れしたい」と語る。

 チラシで告知しているためファンの間でも閉館を知る人は多く、公演に足を運んだ大阪府池田市の主婦(57)は「弁天座は駅から近くて便利だし、好きな一座を追いかけてよく来た。大衆演劇の劇場がどんどん無くなるのは、さびしい」と話していた。

 「いい思い出はあるが、つらかったことはない」と振り返る昌明さん。「喜怒哀楽を表現する芝居の生の魅力をファンに伝えられたことに満足している」と力強く語った。

 一方、昌明さんは弁天座の建物を取り壊さずに残す方針。大衆演劇の灯(あか)りをともし続けるために、運営を担ってくれる会社などに劇場を貸し出したい考えだ。

 9月公演は29日まで。16、22日は休館。問い合わせは、弁天座(0745・22・5689)。

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