仏ヌーベルバーグを代表する映画監督で、「勝手にしやがれ」「気狂いピエロ」などで世界の映画人に影響を与えたジャンリュック・ゴダールさんが13日、スイスの自宅で死去した。91歳だった。仏メディアの報道によると、体調に異常はなく、スイスで部分的に合法化されている安楽死を選んだ。遺族の声明によると、ゴダールさんは「穏やかに亡くなった」という。
パリ生まれ。大学入学後、「カイエ・デュ・シネマ」誌に映画批評を書き始めた。1950年代半ばに短編映画を撮り始め、59年の「勝手にしやがれ」で長編デビュー。ジャンポール・ベルモンド主演の犯罪映画は、手持ちカメラを使った即興的な撮影を行い、斬新さが高く評価された。フランソワ・トリュフォー監督らとともに、ヌーベルバーグと呼ばれる映画革新運動を先導し、日本でも、大島渚監督、吉田喜重監督らによる松竹ヌーベルバーグが巻き起こった。
女優のアンナ・カリーナとのコンビで、「女は女である」「女と男のいる舗道」などを発表。65年には、鮮烈な映像による青春映画「気狂いピエロ」を監督した。68年にフランスで起きた「五月革命」以降、政治をテーマにした作品を手がけたが、商業映画に復帰。80年代に「パッション」「カルメンという名の女」など、意欲作を次々に発表した。
2000年代になってからも、3Dデジタル撮影した「さらば、愛の言葉よ」(2014年)や「イメージの本」(18年)などを監督し、晩年まで制作意欲は衰えなかった。
映画評論家の蓮實重彦さんは「10回ぐらい会っていて、私が唯一けんかのしがいのある映画人だった。長い時間をかけず、反射的にものを考える人だった。その結果、即興的な『勝手にしやがれ』のような映画ができたのだろう」と評した。


