ミス・ジャパングランプリに輝いた吉田愛さんは、普段は佐賀県職員として勤務しています。ためらいもあったと話す大会への挑戦とプライベートの過ごし方について伺いました。(全2回中の1回)
「人生で一度は大きなことにチャレンジを」
── まずはミス・ジャパンに応募した理由から伺えますか?
吉田さん:大会の存在は知人から教えてもらって知ったのですが、最初は「そもそも公務員が受けられるのかな」とか、「目立ったことをしていいのかな」と思っていました。でも、自分の気持ちに向き合って、公務員であるということをいったん置いて考えてみたときに「挑戦してみたい」という思いが強いことに気づきました。
締切10分前に応募したというミス・ジャパン佐賀大会へのエントリー写真「初々しくて清楚!」
最後まで迷っていたので、エントリーをしたのは締切の10分前だったんです。小さい頃からアイドルに憧れていたこともあって、人生で一度は何か大きなことにチャレンジしてみたいと思っていました。
大学を卒業して県職員となってからは、普段の生活もどこかで一歩下がってといいますか、自分よりも県民の皆さんのサポートをする立場だという意識が強かったと思います。でも、「いつか佐賀を代表するような存在になって、地元を元気にしたい」という気持ちがあったので、過去に思い描いていた自分に近づきたいという思いで勇気を持って応募しました。
── 職場に報告はしましたか。
吉田さん:実は、最初の頃は言えませんでした。佐賀大会で4か月ほどトレーニングがあるので、2か月が過ぎた頃に上司に打ち明けました。
── 上司の方の反応はいかがでしたか。
吉田さん:不安を抱きながら打ち明けたのですが、「そうなんだ!頑張ってね」とすんなり受け入れて、応援してくださって。そこからは気持ちの面でも安心して、のびのびと活動できたと思います。佐賀大会では、ウォーキングやボイスレッスンなどのトレーニングのほか、みんなで海岸の清掃に行ったり、防災講座を受けて発信したり、幅広く活動させてもらえてとても勉強になりました。
佐賀大会のビューティーキャンプで海岸の清掃を行う吉田さん(写真右)
── 吉田さんの挑戦を、周りの方はどうご覧になっていましたか。
吉田さん:友人は、私が小さい頃からアイドルになるという夢があったことを知っていたので「どんなことにも負けずに頑張って!」と励ましてくれていました。家族は、父はいわゆる典型的な公務員タイプなので、最初は「活動するのはどうなのかな」と言っていることもあったのですが、私の本気度を見て、だんだん応援してくれるようになりました。
未来を切りひらくために
── 佐賀代表としてミス・ジャパンの日本大会に挑むにあたってどんなことを意識していましたか。
吉田さん:とにかくがむしゃらだったのですが、常に1位になるというイメージを抱くようにしていました。頭で考えるだけではなく、実際に紙に書いて見えるところに貼っていました。グランプリを獲ることができたら、さらに可能性が広がると思っていたので、自分の未来を切りひらきたいという思いで挑んでいました。未来が変わっていくと思うと平日も生き生きと仕事に打ち込むことができましたし、毎日がとても楽しかったです。
佐賀大会でピンクのドレス姿がお似合いの吉田さん
── グランプリに輝いてから皆さんの反応はいかがですか。
吉田さん:先日も、地元ですっぴんでお蕎麦を食べていたら、おそらく気づいていただけたのか見られていると感じることもあって、認識していただける機会は増えましたし、「佐賀県に来たので寄ってみました」と来庁してくださる方もいます。窓口でも「吉田愛さんですよね?」と声をかけられることも増えました。
残念ながらたまたま私が不在にしているタイミングでお越しいただく方も多いので申し訳ないのですが、他の職員の方からも、「来てくださった方が受賞を喜んでいたよ」と伺っています。皆さんから「おめでとう」とか「テレビ観たよ」と声をかけてもらってありがたいです。
── 現在は、どんな活動をされていますか。
吉田さん:イベントに呼んでいただく機会が多いです。ゲストとしてトークをさせていただいたり、1日警察署長などをさせていただいたり。最近ではCM出演やファッションショーでランウェイを歩きました。これまで、民間の会社の方と話をする機会はあまりなかったのですが、さまざまな職業の方にお会いする機会が増えてとても刺激を受けています。
そして何よりも今年は国体(国民体育大会)が国スポ(国民スポーツ大会)と名称を変えてから初めての大会が秋に佐賀県で開かれるのですが、県職員としてもミス・ジャパンとしても国スポを盛り上げていけることを楽しみにしています。自分でも想像していなかったほど、活動の範囲が広がっています。
── 県職員とミス・ジャパンの活動の両立でお忙しいと思いますが、お休みがあるときはどう過ごしていますか。
吉田さん:県内の温泉に行くのが好きです。佐賀には各地に温泉があってそれぞれ特徴が違います。「温泉に入って、カニを食べて…」と次はどこに行こうか、プランを立てるのも楽しいです。ドライブで行く先もたくさんありますし、県内で休日を過ごすことが多いですね。でも、ショッピングは福岡に行くことが多いです。以前は図書館勤務だったこともあって本を読む習慣がついたので、読書をしたり、海沿いをお散歩したりしてのんびり過ごすこともあります。
見事大物ヒット!地元の海で魚釣りをする吉田さん
── 地元の佐賀県を離れて、違う場所に住んでみたいと思ったことはありますか。
吉田さん:日本の中核を支えているところなので、やはり東京に行ってみたいと思ったことはあります。でもまずは地元を活性化させて地元のために働きたいという思いが強いです。
── 公務員初のグランプリ受賞と話題になったことに対してはいかがですか。
吉田さん:職業柄、誰もしたことがないことに挑戦するのが怖いと私自身も感じていたのですが、私のように公務員初というものをもっと増やしていけたら現役公務員の方ももっと活動しやすいと思うので、私自身がその一歩となって、新しいことにチャレンジする方が増えたらいいなと思っています。
PROFILE 吉田愛さん
1998年生まれ、佐賀県出身。北九州市立大学 法学部学科卒業を卒業し2021年4月佐賀県庁入庁。2023ミス・ジャパン佐賀大会グランプリ、日本大会グランプリを受賞。公務員初の受賞者として注目を集める。
取材・文/内橋明日香 写真提供/一般社団法人MJ、(株)ミライエンターテインメント、吉田愛