「なぜなら冴羽獠っぽくないから」シティーハンターであるために守るべきこと Netflix 映画『シティーハンター』鈴木亮平×森田望智インタビュー

東京・新宿で裏社会のトラブル処理を請け負う超一流スイーパー、人呼んで「シティーハンター」。1985年から1991年まで「週刊少年ジャンプ」で連載されていた、北条司が描いた伝説のコミックは、台湾・香港・中国・韓国・タイ・インドネシア・フランス・イタリア・スペイン・メキシコ・ポーランドと世界各国で出版され、累計売上数5000万部を突破。1987年からスタートしたTVアニメ放送は、シーズン4までアニメ化され、こちらも世界で放送されている。

そんな「シティーハンター」の実写映画が、この度Netflixにて独占配信中。主人公の冴羽獠を演じるのは鈴木亮平。そのパートナーとなる槇村香を森田望智が演じる。

昨年公開されたアニメ映画『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』が興行収入10億円を超える大ヒットとなり、国内外で大きな期待を寄せられる本作。過去、海外で映画化されてきたものの今回が日本初の実写化となる。2人が演じたシティーハンターの魅力、そして彼らの思うシティーハンターらしさとは何か?このインタビューで迫りたい。

目次

シティーハンターを演じるということとは

ーー鈴木亮平さんは、冴羽獠が俳優を目指したきっかけと伺っています。いよいよだという気持ちがあったと思いますが、いかがですか?

鈴木 そうですね。でも僕が好きかどうかっていうのは、ファンの方とか「シティーハンター」を知らない人には関係ない話なので、自分がファンかどうかは、ちょっと置いといて、とにかく全世代の人に楽しんでもらえるものを作らなきゃいけないな、というプレッシャーの方が大きかったですね。

ーー森田望智さんは香役を演じることについて、どのようなお気持ちでしたか?

森田 最初にお話をいただいた段階では、恥ずかしながら「シティーハンター」を知らなくて‥‥親が世代ということもあって、時が経つごとに「これはすごい作品に出ることになったんだ」っていう実感がじわじわ湧いてきました。

勉強のために、漫画を読んでアニメ版を全部見たんです。その中で純粋に、冴羽獠のことが好きになってしまって、シティーハンターのファンになりました。もう役作りを忘れて作品としてずっと見ていました。だから、ファンの方に喜んでもらえるような香ちゃんをどうやったらできるだろうかっていう葛藤はすごくありました。

ーー冴羽獠といえば、シリアスでありながら、ふざけている二面性が魅力的だと思います。そのあたりは気をつけて演じられたんですか?

鈴木 そこがシティーハンターの魅力ですよね。難しいのは、そこまでの二面性を演じると、どうしてもアニメ的、漫画的な表現になってしまうことです。極端な二面性を瞬時に切り替えるというのは、作品のファンの方や、アニメ文化に慣れている日本のお客さんには許容していただけるけれど、リアルなお芝居を好みがちな海外のお客さんは、かなり戸惑うだろうなって思いました。だからバランスをどこに持っていくか、ということはすごく気をつけました。

ただ結果的に、やっぱり日本の作品だからまずは日本の観客が楽しめる演技、ちょっとアニメっぽさも残して、場所によっては少しお芝居もオーバーに、というところに落ち着きました。海外に合わせてリアルな表現に寄せていくと、どうしても「シティーハンターらしさ」が失われていってしまうんです。そうするとファンの方々は、”見たかったのはそんな冴羽獠じゃないんだよな”となってしまうかなと。

ーー香も思い入れの強い人が多いキャラクターだと思います。そのあたりはどう受け取って、どのように演じられたんですか?

森田 皆さんの知る香ちゃんって多分アニメの香ちゃんだと思うんです。アニメのいいところを取ってリアルな人間として落とし込んで、少し漫画的な表現の部分とうまく融合させられたらいいな、とずっと考えていました。漫画に寄せすぎると生身の人間ではなくなってしまうし、生身の人間でやってしまうとファンの方が見たときに香じゃないってなってしまうのがすごく怖かったです。

日本では初の実写化

ーー熱心なファンがいる漫画は、アニメ化するだけで賛否両論が起きて、ましてや実写化になるとかなり厳しい評価を得ることが多いなか、「シティーハンター」は過去作品が割と高評価を受けてきました。そこに対するプレッシャーもかなりあったんじゃないですか?

鈴木 いまだにすごくあります。実写でいうと、香港版と韓国版はかなり原作とは別物に変えていますが、それはそれで良さがある。そして何よりフランス版の出来がすごく良かったので、もちろんプレッシャーにはなりますよね。

そのフランス版はアニメに重心を置いて作られていて。じゃあ僕たちが日本の作品を日本で実写化するなら、原作者の北条司さんが描いた、漫画を大切にしてみようと。”本当のシティーハンター”とも言える原作漫画と、エンディングテーマの「Get Wild」などアニメのいいところを組み合わせて作る。そうすれば日本ならではの、よりオーセンティックものができるんじゃないかという考えでした。

それから日本で撮ると新宿という街が使えるアドバンテージは大きいと思います。シティーハンターのもう一人の主人公は新宿の街だと思っていますから。今回、思い切ってストーリーも変えさせていただきました。原作にないエピソードをやっているので、そこへの批判はいただくかなと思いつつ、2時間の尺にしたときに、シティーハンターの骨格が伝わるように、核となっている部分をぶらさずに、一番楽しい部分が伝わる形を目指したつもりです。

ーー森田さんは、作品への期待が高まってほかの作品と比べられてしまうことに対してのプレッシャーはありますか?

森田 私もフランス版を拝見して、とても面白くて、”あぁシティーハンターだ”って思いました。でもやっぱり日本の漫画原作なので、絶対に日本でしかできない良さがあるって信じていました。それに亮平さん、監督、キャストさんスタッフさんも、原作に対してリスペクトを持って撮影しているのがひしひしと感じられていたので、ファンの方から見たときに、”これは自信を持ってお届けできる作品になるんじゃないかな”って撮影中から思っていました。

なおかつ今回はじまりの物語なので、幅広い方々に楽しんでもらえると思います。今回、原作では描かれていない余白の部分を広げているので、香ちゃんはお兄さん(槇村秀幸)が亡くなったときにこういうこと思ってたのかな?とか、原作漫画、アニメにも想像を馳せてほしいです。プレッシャーももちろんあるんですけど、今は早くお届けして感想を聞きたいなって思っています。

もっこりと100tハンマー問題

ーー拝見して”シティーハンターらしさ”を追求されたということが伝わってきました。Netflixで実写化のニュースを聞いた際、「もっこり問題」をどうするのかな?と心配していたんですが杞憂でしたね。

鈴木 世界配信の場合に「もっこり」っていう言葉を使うかどうかっていう議論もあったんですよ。でも、”もっこりがなかったらシティーハンターじゃないよね”ってところは守らなきゃいけない。

まずは日本の観客に、”これはシティーハンターだね!”って言ってもらえるものを作って、例え外国の人にとってわからないところがあっても、そのままお伝えして気に入ってもらえればとはいいなと。その結果、なぜか冒頭から「もっこり」を連発することになりました(笑)。

海外の観客を意識していないわけではなくて、わからないものの楽しみ方ってあると思うんです。まず「もっこり」っていう言葉が日本語以外に訳せないんですよね。

ーー字幕はどうなってるんですか?

鈴木 各国では、「MOKKORI」とそのままローマ字で表記されているんです。ストレートなんですけど、「もっこり」というのは決してその意味だけではないし、シティーハンターではかなり広義で使われていますから。そのニュアンスは、なかなか翻訳しづらいですよね。

ーー今のご時世では使えない言葉や動きが「シティーハンター」にはあって、世界配信で気をつけなければならないところはありますよね。

鈴木 例えば今回は、現代の常識に合わせて「相手の同意なしに女性の体に無闇に触らない」というルールを設けました。現代の観客が観た時に嫌悪感を持たれて、獠が嫌われるようなことは一番避けなければいけないと思いました。

ーーじゃぁ、美人のことは「もっこりちゃん」とは言わないんですね。

鈴木 それは言いますね。あと、”もっこりのご用命もぜひ”とか‥‥なんのことかよくわかんないですけど(笑)。

ーー便利な言葉ですからね。

鈴木 というか「シティーハンター」以外でその言葉は使われてないですよね。

ーーーあとは、「シティーハンター」といえば、香の100tハンマーですよね。森田さんは最初にハンマーを持ったときにどう思いました?

森田 私も漫画を読んでいたので、ハンマーはどうするんだろう?ってずっと思っていました。フランス版は大きなハンマーじゃなくて、本物のハンマーを使ってらっしゃるし‥‥と思っていたら、現代にマッチしたアイデアで、本当に大きなハンマーを持てることになりました。

現実世界で、あのハンマーを持つなんて絶対にできないと思っていたけど、こんなアイデアあるんだ!って、心打たれてすごく嬉しかったです。今の日本のカルチャーだからこそできることですし、その文化も伝えられるとも思いましたし”すごくいい使い方だな。これは私がマスターしないと!”って気合いを入れて頑張りました。

鈴木 なぜか最初に持ったときからきてたよね。女性だと力がないから、ハンマーに振り回されないようにちょっとアドバイスしましたね。

森田 持った瞬間から、自ら操る感じがあるのが香ちゃんだから、めちゃくちゃ練習しました。ハンマーが意外と重くて(笑)。うまく扱うのがすごく難しかったですけど、最終的には、これが香ちゃんなんだって思えたのでよかったです。

人生をかけて冴羽獠に憧れてきた

ーー鈴木さんから見た森田さんのここが香っぽいな、似てるなといった部分はありますか?

鈴木 真っ直ぐなところは似てるなと思います。森田さんの演技に対する姿勢と香の正義に対する向かい合い方がすごく似ている。

森田 え、私自身が似ている? いやストイックな亮平さんにそんなこと言われるのってすごい感銘です。ありがとうございます。

ーー森田さんから見た鈴木さんの冴羽獠感ってありますか?

森田 わからないんですけど‥‥全体的に寄せているっていうか、本人そのものが。

鈴木 するどいね(笑)。

森田 普段もかっこいい部分とちょっとお茶目な部分が混ざっている感じはものすごくします。お芝居に対する姿勢というより、亮平さんの性格的な部分で、ちょっと近寄ると突き放されたりします(笑)。

そんなところもあれば、陰で見守ってくれている感じがあって、本当にかっこよさと遊び心をあわせ持っている感じがあります。どうですか?

鈴木 それは……多分ね。僕が、寄せてきたから。

森田 (笑)。

鈴木 人生で30年ぐらい好きだから、意識的にも無意識的にも寄せて生きてきて、訳わかんなくなってる。まぁ影響を受けたってことですよね。だからシリアスになりすぎてるなと思ったら、それは自分の中でかっこよくないんです。なぜなら冴羽獠っぽくないから(笑)。

ーーいつごろから冴羽獠に寄せたって自覚があるんですか?

鈴木 覚えている限り、小5です。初めて買ってもらったCDが「シティーハンター」のサントラで。CDウォークマンで聞きながら、冴羽獠の気分で散歩してましたね。「俺の名は冴羽獠」って、神谷さんの声で(笑)。

ーー鈴木さん、劇中でもたまに神谷明さんの声みたいでした。

鈴木 いやもうなんかね、なっちゃうんですよ。セリフで「もっこりちゃん」って書いてあったら、もうそれ以外、僕は言い方を知らないから(笑)。本当は神谷さんっぽくなるのは避けようと思ったんですけど、途中から諦めましたね。

ーー森田さんも似てるなって思いませんでした?

森田 私はてっきり寄せてらっしゃるんだと思っていて、もうなりきってしまっているからそうなっているんだと。実は似ないように遠ざけているって話をさっき知って逆にびっくりしました。

鈴木 なっちゃうんです。今までやったアニメの声優の仕事とか、改めて聞いてもやっぱり全部神谷節が入っちゃってる(笑)。

ーー本作ははじまりの物語という立ち位置でした。今後こんなエピソードをやりたいなという思いはありますか?

森田 私が好きなのは、獠さんに恋心ある香ちゃん。でもそれを出せないところがすごく好き。2人がとても純粋で、もうちょっと頑張ってほしいっていう応援する気持ちで見ていたので、それができたら本作は全く違うテイストで面白いものができるんじゃないかなと思います。

鈴木 僕も「シティーハンター」は、アクションとかの前に獠と香のラブストーリーだと思っています。そこを大事にしていきたいのは同意ですね。

具体的なエピソードで、シティーハンターに憧れてスクープを狙う記者の冬野葉子っていうヒロインが出てくる「恋人はシティーハンター」(コミックス13巻第140話〜146話「暁のMEMORY」(コアミックス))っていう回があるんですけど、そのエピソードが大好きなので、ぜひやりたい。

ーー今回はまだ恋心に気づいていない状態ですもんね。獠と香のラブストーリーをやるためには、あと何作か作らないといけないですね。

森田 (笑)。

鈴木 もし次作があるなら、今回の何年後かから始まるストーリーが見たいかな。獠と香がもうすでにパートナーになっているところから。まぁ、僕に決定権があるわけじゃないからあれですけどね(笑)。

取材・⽂ / 小倉靖史
撮影 / 曽我美芽

(鈴木亮平) スタイリスト:臼井 崇(THYMON Inc.) ヘアメイク:Kaco(ADDICT_CASE)
(森田望智) スタイリスト:飯嶋久美子(POTESALA) ヘアメイク:尾曲いずみ

作品情報

Netflix映画『シティーハンター』

新宿東口の伝言板に書かれた「XYZ 妹をさがしてください」というメッセージを受け、相棒の槇村秀幸と共に、有名コスプレイヤーくるみの捜索依頼を請け負った“シティーハンター”こと冴羽獠。その頃新宿では謎の暴力事件が多発し、警視庁の敏腕刑事 野上冴子は手を焼いていた。息の合ったコンビネーションでくるみを追う獠と槇村だったが、捜査の最中、槇村が突然の事件に巻き込まれ死んでしまう。獠が事件現場に駆けつけると、そこにいたのは槇村の妹の槇村香。兄の死の真相を調べてほしいと香は伝言板で獠に依頼するが、香を巻き込みたくない獠は香を避け続ける。しかし香がくるみを発見、保護したことで状況は一変。くるみがコスプレイヤーとして出演するイベントに、獠と香は護衛役として潜入することになった。ステージに登壇するやいなや、一気に注目の的となるくるみ。しかしそんな彼女に視線を送るのは、観客やメディアだけではなかった‥‥。

監督:佐藤祐市

原作:北条司「シティーハンター」

出演:鈴木亮平、森田望智、安藤政信、華村あすか、杉本哲太、迫田孝也、木村文乃、橋爪功

©北条司/コアミックス 1985

Netflixにて独占配信中

公式サイト www.netflix.com/シティーハンター

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