<※以下、ネタバレ有>
「リーガル・ハイ」「コンフィデンスマンJP」シリーズなどの古沢良太氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ62作目。弱小国・三河の主は、いかにして戦国の世を生き抜き、天下統一を成し遂げたのか。江戸幕府初代将軍を単独主役にした大河は1983年「徳川家康」以来、実に40年ぶり。令和版にアップデートした新たな家康像を描く。古沢氏は大河脚本初挑戦。松本は大河初主演となる。
本多忠勝(平八郎)(山田裕貴)たちは「岡崎決戦」を主張。しかし、繁栄を極めた大坂の町を目の当たりにした石川数正(松重豊)は「もはや、秀吉の天下は崩れぬ」「(小牧長久手の戦いに)勝ってはおらぬ!あんな勝利は些細なこと。今の我らと、秀吉の在り様を見れば、どちらが勝ったのか誰の目にも明らかじゃ!」。徳川家康(松本潤)に上洛を進言した。
数正は「殿は、化け物(秀吉)には敵いませぬ。秀吉の臣下に入るべきと存じます」。家康は「ならば、岡崎城代の任を解く!」と決裂した。
酒井忠次(左衛門尉)(大森南朋)が仲裁し、数正と家康2人きりの語らい。「殿、決してお忘れあるな。わたくしはどこまでも、殿と一緒でござる」――。額面通りの言葉とは裏腹に、出奔した。
加藤監督は今作の演出統括としてインカメラVFXを駆使したバーチャルプロダクションも担当。前回第33回「小牧長久手の激闘」(8月20日)も演出し、合戦や堀造りのシーンは“動のCG”だったが、今回は大坂城の中を描く“静のCG”となった。
「今回の数正が出奔に至る最大のバックグラウンドは、大坂城なんですよね。あの空間を身をもって知っている数正だけが、小牧長久手に快勝した家康に対して『殿は化け物には敵わない』と言える。そのためには、大坂城の空間設計が肝になると当初から考えていました」
数正が大広間の中央に座して秀吉と直接交渉したシーン、出奔後に妻・鍋(木村多江)と廊下を歩くシーンなど、通常通りスタジオにセットを組みつつ、奥行きはバーチャルプロダクションで表現した。
今作は合戦などの屋外シーンにCGを効果的に用い、天候待ちや酷暑などロケのリスクを回避。屋内シーンについても「戦国時代のもう一つの華は、絢爛たる安土桃山文化の室内装飾です。内部空間にもバーチャルプロダクションを活用して、これまでとは全く違う、美しさとスケールを兼ね備える美術セットを映像化するというというのも当初からの計画でした。歴史的に御殿などの内装が豪華になるのが安土城以後なので、『どうする家康』では後半になります。今後も登場する大坂城などの御殿設定の背景になっているのは、世界遺産・元離宮二条城の3Dデータです。襖などに描かれる障壁画も、実際のものを1点ずつ撮影したものから製作したCGのパーツで構成しています。これらのデータを組み合わせることで、豪華絢爛な装飾をディテールまで描けるのです」とメリットを強調した。
スケール感あふれる近年の海外ドラマも意識。「ロケが難しいからと指をくわえているんじゃなく、大河ドラマが今後も魅力的であり続けるためには、どうしたらいいのか。バーチャルプロダクションを全面的に試すには、『どうする家康』が時代的にもテーマ的にも非常に適しているんじゃないか。そういう考え方からスタートして『戦国の景色を変える』を目標にチーム一丸、奮闘しています」。終盤も「関ヶ原の戦い」「江戸城」などバーチャルプロダクションの“活躍”が期待される。