テレビ東京の女性アナウンサーの退社が相次いでいる。彼女たちの意外な所属先に注目が集まっている。その背景について放送作家でコラムニストの山田美保子さんが解説する。
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3月末で福田典子アナ、6月末で須黒清華アナと松丸友紀アナ、そして6月29日、『伊集院光&佐久間宣行の勝手にテレ東批評』で、退社前日の松丸アナに失礼発言を多発した、“化け物”(by伊集院&佐久間)池谷実悠アナの9月末退社も明らかになったばかりだ。
同局の女性アナウンサーの退社が相次いでいることは、6月27日、同局の石川一郎社長も定例会見で言及。同月末で退社する須黒アナと松丸アナに贈った「テレビ東京のファンとしてずっといてね」「帰って来たくなったらまた言ってね」などという言葉もニュースになったものである。
なかには鷲見玲奈アナや森香澄アナの成功に触発されたのではないかという分析もあるが、退社したアナの所属先をみると、必ずしも、鷲見や森のようなポジションを狙っているようには見えないのである。
福田典子アナは歯科医療系ベンチャー
まず、3月末に退社した福田アナの新たな勤務先は、歯科医療系ベンチャー企業のSCOグループの広報職である。副業兼職が認められているとのことで、同アナはフリーアナウンサーとしても活動していくというが、この経歴で思い出されるのは、元テレビ朝日のアナウンサーで、2021年12月に退社した翌月より、海外旅行事業を手掛けるベンチャー系「令和トラベル」の広報職に就いた大木優紀氏だ。
6月25日、「newsおかえり」(朝日放送)で「夏休み『円安時代 我が家でもイケる海外旅行』特集」に出演したことも話題になったばかり。「執行役員」と紹介されたことや、いまもチャーミングで若々しい大木氏のルックスにもネットが沸いたものだ。福田アナにも“二刀流”の活躍が期待できよう。
続いて須黒清華アナは、「ベルキッスコーポレーション」に所属していた。社名の知名度は低いかもしれないが、森永卓郎氏や加藤浩次、「おかあさんといっしょ」(NHK Eテレ)の21代うたのおねえさん、小野あつこ、さらには、石田健氏、坂口孝則氏ら、情報番組のコメンテーターとしておなじみの人たちや、元・日本テレビの政治部記者で現在は政治ジャーナリストの青山和弘氏らがいる。加藤が吉本興業との契約を解除した後、『がっちりマンデー‼』(TBS系)で共演していた森永氏と同じマネジャーが担当することになったのをはじめ、情報系の番組にパイプをもつ同社。須黒アナの“営業”もしやすいことだろう。
女性アナウンサーが退社したら漏れなく『セント・フォース』へ……という流れは、変わりつつあるかもしれない。
現在では、『ホリプロ』や『生島企画室』など、「女性アナウンサー」部門に力を入れるプロダクションも増えてきており、選択肢が広がっていることに加え、「ライバルがいないところを選びたい」と考える女性アナウンサーは以前から少数だが存在したのである。
たとえば1987年〜1989年、テレビ静岡の局アナだった石川小百合は、その後、『プロ野球ニュース』(フジテレビ系)やTBSの情報番組で活躍したが、彼女が所属事務所に選んだのは『太田プロ』だった。以前、TBSの情報番組で共演していた際、所属タレントに同業者が居ないことが理由だったと彼女自身から聞き、なるほどなと思ったことがある。
鷲見アナの『セント・フォース』入りは特例?
『セント・フォース』のように、女性アナウンサーに特化した強みも間違いなくあるのだが、社内では、局アナ時代よりも多くの女性アナウンサーがいて、全員がライバルだろう。
「ちょっと、おこがましいんですけれど」と前置きしながら、『セント・フォース』の採用ページを開いた経験を前出の『伊集院&佐久間〜』の「特別企画 さよなら松丸アナSP」で吐露したのは松丸アナだ。が、「18歳〜27歳ぐらいまで」という年齢制限を見つけ、既に“ぐらい”から15年が過ぎていた松丸アナは断念。果たして所属先は、『ゴッドタン』で長年共演した「おぎやはぎ」がいる『プロダクション人力舎』だ。これは、サンドウィッチマンとの共演が多かった高橋真麻が、父の高橋英樹と共に2019年、『グレープカンパニー』に所属したケースと似ている。
そうした松丸アナとの『セント・フォ―ス』談義の中で、「あれ? 鷲見(玲奈)って『セント・フォース』だよね?」と、当時の彼女の年齢が27歳よりは上だったと指摘したのは佐久間氏。すかさず、「特例なんじゃないですか?」と、鷲見には特例が適用されたが松丸にはされなかったと受けとられかねないコメントをしたのは池谷アナである。
そんな池谷アナだが、テレ東に入社する前は、『ゴッドタン』の松丸アナと、『モヤモヤさまぁ〜ず』の狩野恵里アナが「テレ東のイメージだった」と言い、「なんでもやっていいんだなって(思っていた)」。が、入ったら「意外とちゃんとしてたんですよね」と局内の印象を語っていた。
松丸アナに話を戻すと、『ゴッドタン』での活躍ぶりが「(演出の佐久間氏の)想像を飛び越えていた」と氏に褒められ、さらに伊集院からは、タレントの朝日奈央や野呂佳代が松丸アナの言動を見て「(自分たちもやらなければと)気づき始めた」と指摘され、「負けず嫌い」「性格が悪い」というエピソードも披露された。
イメージが悪いまま退社していくことを嘆く松丸アナに対し、佐久間氏は、「トーク番組にたくさん出られる試金石を投げた」「はなむけ」とキッパリ。
各局の企画会議でも松丸アナの名前は既に出ており、芸人に鍛えられた“なんでもOK”の松丸アナは、鷲見や森とはまた異なる場所で開花すると思われる。
実は既婚者が多いという特徴もあり、池谷アナは、会社員でもあり俳優でもある男性とのスピード婚を発表したばかり。松丸アナの夫は競輪界のトップ、新田康仁選手だ。
果たして、9月末の退社を発表した“化け物”、池谷実悠アナは、どんな事務所を狙っているのだろうか。「夫が俳優」ならば元フジテレビの政井マヤアナや富永美樹アナのように芸能活動をしている夫と同じ事務所に所属して、“セット”で活動することもできれば、キャラ立ちを活かして、森香澄アナや著名なインフルエンサーが所属する『seju』なども考えられよう。
昨今、「テレビ東京らしさ」が各方面で注目されているが、退社したアナウンサーたちもなかなか面白いことになっている。
“辞めテレ東アナ”たちの“その後”に注目だ。
【プロフィール】
山田美保子(やまだ・みほこ)/『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)などを手がける放送作家。コメンテーターとして『ドデスカ!+』(メ〜テレ)、『1周回って知らない話』(日本テレビ系)、『サンデージャポン』(TBS系)に出演中。CM各賞の審査員も務める。