萬屋一門新たな門出 初代中村萬壽、六代目中村時蔵、五代目中村梅枝を親子三代で襲名

萬屋一門新たな門出 初代中村萬壽、六代目中村時蔵、五代目中村梅枝を親子三代で襲名

三代で襲名披露をする(左から)中村梅枝、小川大晴、中村時蔵(水沼啓子撮影)

(産経新聞)

東京・歌舞伎座「六月大歌舞伎」(6月1〜24日)で女形の最高位、立女形の一人、五代目中村時蔵(69)が初代中村萬壽、四代目中村梅枝(36)が六代目時蔵を襲名する。梅枝の長男、小川大晴(8)が五代目梅枝として、中村獅童(51)の長男、小川陽喜(6)が初代中村陽喜、次男、小川夏幹(3)が初代中村夏幹として初舞台を踏む。

昭和56年から43年間、名のってきた名跡を長男、梅枝に譲ることについて、時蔵は「私が演じたことがない阿古屋(女形の超難役)も玉三郎のお兄さんの指導のもと見事に演じた。ほかの役でも大きな成果を上げているので、そろそろいいのではないか」と考えたという。

また、萬壽の名については、屋号「萬屋」の萬という字が入っていることや、平安時代の元号でおめでたい名なので時蔵自らが決めたという。「萬壽元年は甲子(干支の一番目)で一から始まるということで、萬壽の名を一から築いていこう。また一から自分の芸を見つめ直そうと思った」

梅枝は、時蔵を継ぐことについて「まだ私には早いと思い、最初はお断りした」という。しかし、「いざこの段になってみると、こうして三代そろって襲名ができるのはとてもありがたい。父の思いを継いで、代々の時蔵に恥ずかしくないよう一生懸命勤めていけたら」と意気込んだ。

襲名披露狂言は、新時蔵が「妹背山婦女庭訓・三笠山御殿」でお三輪を、萬壽が「山姥」で山姥を、新梅枝が怪童丸を勤める。また、「魚屋宗五郎」の宗五郎を獅童が初役で、酒屋丁稚を陽喜、夏幹がそれぞれ演じる。

時蔵は、お三輪を演じる上での大事なポイントについて「多々あるが、最後は嫉妬に凝り固まった疑着の相と呼ばれる表情。そこに至るまでのいじめられ方が大事だと思う」。

こんなエピソードも披露した。「私が襲名したときは、教えてくださった六代目歌右衛門のおじさまが稽古場で、いじめの官女たちに『こうやっていじめてあげてよ』とダメ出しをされていた」。今回、いじめの官女役には獅童ら三代目時蔵の子孫に当たる小川家の立役8人が集結して盛り上げる。

梅枝は「祖父、父が襲名のときに勤めたお三輪を、時蔵襲名という場で初役で挑めるというのは巡り合わせ。女形なら誰でも憧れる役で、世界観やファンタスティックなところを、存分にお客さまに楽しんでいただけるように演じるのが目標。その第一歩として丁寧に勤めたい」。

音羽屋ゆかりの演目「魚屋宗五郎」で立役の大役、宗五郎を演じる獅童は、尾上菊五郎から「おれが教えるからやったらいい」と勧められたことを明かした上で、「非常にありがたい。たくさんのことを教えていただいて吸収したい」と喜んだ。

一方、時蔵や獅童の叔父に当たる萬屋錦之介(平成9年死去)や中村嘉葎雄が活躍していた当時、歌舞伎座ではほぼ毎年6月、萬屋一門を中心に特別公演が行われていた。しかし、その後長らく途絶えたままになっている。

獅童は「錦之介、嘉葎雄のお兄さんが出演して歌舞伎座で行われていた萬屋興行を、またいつか復活させたいというのが僕の中にあった。時蔵のお兄さんに『そろそろ6月にやりませんか』とお話しさせていただいた」と、今回の襲名公演をきっかけに萬屋興行復活に期待を寄せていた。

問い合わせは、チケットホン松竹(0570・000・489)。(水沼啓子)

萬屋(よろずや) 三代目中村時蔵から始まる小川家一門が昭和46年、屋号をそれまでの「播磨屋」から「萬屋」に改めた。これを受け、映画界に進出していた初代中村錦之助も、芸名を萬屋錦之介に変更。

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