グァダニーノ監督は、『君の名前で僕を呼んで』や、“人喰い”である若者たちの恋を描いたヴェネチア国際映画祭銀獅子賞受賞作『ボーンズ アンド オール』(22)で世界に賛否両論を巻き起こすなど、全世界から注目を集めてきた。これまでにも様々な“愛”を描いてきた監督だが、本作で一体どのような“愛”を描きだすのか。主演を務めるのは、グァダニーノ監督作へ初出演となる「スパイダーマン」シリーズ、「デューン 砂の惑星」シリーズのゼンデイヤで、すべてを手に入れたテニス界の元トッププレーヤー、タシ・ダンカンを演じる。タシの虜になった親友同士の若き男子テニスプレーヤーを、ジョシュ・オコナー、マイク・フェイストという若手実力派キャストが務める。
日本に先駆け、4月26日に北米3,477劇場で公開された本作は、Box Office Mojo調べによるとオープニング3日間で1501万1061ドル(約23億5379万円)を記録し、初登場第1位を獲得。公開に向けて行われた本作のプロモーションでは、テニスモチーフの衣装で出演者がたびたび登場し、「テニスコア」と呼ばれるファッショントレンドを巻き起こして、社会現象となった。日本公開が迫る本作は、ゼンデイヤの熱演が話題となっている。
そんな物語の舞台で、3人の関係が切っても切れないものとなる要素として欠かせないのが“テニス”だ。脚本を務めたクリツケスは、ある調べものをしているなかで2019年のセリーナ・ウィリアムズ対大坂なおみの試合を観て、本作へのインスピレーションを受けたと語る。これまでテニスには興味がなかったクリツケスだったが、「セリーナ・ウィリアムズと大坂なおみの決勝戦の試合を家族で観ていたら、観客席からウィリアムズのコーチがサインを送ったことを理由にウィリアムズが審判から警告を受け、それが物議を醸しました。そんな話は、いままで聞いたことがなかったけど、映画としては強烈なシーンになるかもとピンときました」と明かす。
そこからすっかりテニスファンを公言するようになったクリツケスは「それからは世界プロテニストーナメントの下位レベルの選手間で争われる、いわゆる“チャレンジャーマッチ”の試合を観るようになりました。そしてその試合が、長い間顔を合わせることのなかった2人が再び出会う舞台になったとしたらおもしろいんじゃないかと思いました」とコメント。すなわち、かつて親友同士だったタシ・ダンカン(ゼンデイヤ)の元恋人パトリック・ズワイグ(ジョシュ・オコナー)と、タシの夫アート・ドナルドソン(マイク・フェイスト)が、チャレンジャーズマッチで再会することに。タシを巡った駆け引きや、勝利への欲望などがテニスコート上で見事に描かれている。
そんな脚本に惚れ込み、オファーを受けたというグァダニーノ監督は「ジャスティン・クリツケスによるすばらしい脚本は、ユーモラスで刺さるものがありました。とても複雑で、本当はそんなことをしたくないはずなのに、さらに物事を複雑にさせてしまうような登場人物たちのストーリーに興味が湧きました」と称える。
本作誕生のキッカケとなった大坂なおみも自身のSNSで、本作の楽曲とハッシュタグを用いて「チャレンジャーズを見た後の私」と、テニスのサーブを打ったり、ラケットを回す姿を投稿している。
@naomiosaka ?? #challengers #tennistiktok #funnymoments ♬ Challengers [MIXED] (Challengers Soundtrack) – Trent Reznor & Atticus Ross & Boys Noize
これまで数々の衝撃作を世の中に送りだしてきたルカ・グァダニーノ監督が、ゼンデイヤを主演に迎えて贈る最新作『チャレンジャーズ』をぜひ劇場で観戦していただきたい。
文/山崎伸子