■ソーがメインの映画は3作品
まず、ソーがメインとなった映画はディズニープラスで配信中の「マイティ・ソー」「マイティ・ソー/ダークワールド」「マイティ・ソー バトルロイヤル」。
第1弾となる「マイティ・ソー」は、最強の戦士だが傲慢な態度により神の国・アスガルドから人間界に追放された王子・ソーが、地球とアスガルドを襲う危機に立ち向かう物語。ソーは闇の力から地球を守る戦いをする中で、真のヒーローとは、そして本当の強さとは何なのかを学んでいく。兄の居ぬ間にアスガルドを支配しようともくろむ弟・ロキ(トム・ヒドルストン)との対決も見応え十分だ。
そして第2弾となる「マイティ・ソー/ダークワールド」は、「マイティ・ソー」「アベンジャーズ」後の世界が舞台。宇宙の秩序を取り戻すべく、ソーが地球を含む9つの世界すべてを守るため戦う中で、ソーへの復讐(ふくしゅう)を誓うマレキス率いる古代の軍が再び宇宙を覆う。あまりにも強大な敵を倒すべく、ソーはいつ裏切られてもおかしくない宿敵・ロキと手を組み、マレキスらに立ち向かう。共闘するシーンでは“兄弟の絆”を感じ、思わず涙することができるのだが、それゆえにラストシーンの衝撃も大きい。
■第3弾ではソーが囚われの身に…
第3弾の「マイティ・ソー バトルロイヤル」は、「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」の後の話。アベンジャーズの一員として、地球を守るために戦ってきたソーの前に、邪悪な敵・ヘラが突如現れる。ヘラは、ソーの最強の武器・ムジョルニアをいとも簡単に破壊し、圧倒的なパワーでソーを宇宙の果てに弾き飛ばしてしまう。遠く離れた星で囚われの身となったソーは、かつて共に闘った“戦友”のハルクと対決する。
そして同作のすぐ後の物語である、6つすべてを手に入れると一瞬で全宇宙の生命の半分を滅ぼす無限大の力を得る“インフィニティ・ストーン”を巡る戦いを描く「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」、最凶最悪の敵“サノス”により、アベンジャーズのメンバーを含む全宇宙の生命が半分に消し去られてしまう中…ソーら生き残ったヒーローたちが逆襲する「アベンジャーズ/エンドゲーム」へと物語が紡がれる。なお、上記「アベンジャーズ」作品はいずれもディズニープラスで配信中だ。
■ソーの最大の武器は無敵のハンマー
ソーは、北欧神話(そのルーツは13世紀まで遡ることができるという)に出てくる雷神“Thor”がモデルで、父は全能の神・オーディン(アンソニー・ホプキンス)、母は魔術を得意とするフリッガ(レネ・ルッソ)。大変に恵まれた血筋を受けて、神の国アスガルドの王子を務めた。
そんな彼にとって最大の武器は、オーディンの魔力の効いた、死にゆく星の心臓で作られたという無敵のハンマー“ムジョルニア”。高潔な魂を持つ者でなければ持ち上げることすら不可能という、武器であり、彼の“相棒”だ。「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」のワンシーンにもあったが、キャプテン・アメリカやトニー・スターク(アイアンマンの腕を使っても)、ホークアイといったアベンジャーズのメンバーも持ち上げられなかった。
個人的にはソーがそんなに高潔であるようには思えないのだが(人間味がすごい。人間ではないのに)、とにかく彼はそれを巧みに使いこなす。ソーが持っていた元からの強さに、ムジョルニアの圧が加わり、もうパワーが交通渋滞を起こしているような感じである。
そんなソーと好対照をなすキャラクターがロキだ。オーディンの養子にあたるので、つまりソーとは義理の兄弟関係ということになる。北欧神話では“悪神”“ずるい奴”扱いされているが、映画での彼は実に人間味があって(人間ではないのに)、憎めないところもあり、たとえば悪役レスラーに通じる親しみを感じながら応援しているファンも多いのではないか。
ソーのことを意識すればするほど空回りしていく。「マイティ・ソー」では対決シーンもあったが、実はこの2人、心の中では互いに認め合っているに違いないと思わせるものがある。
■ロキが主役のドラマ版も配信中
そして、そのロキが主人公となるのが、ディズニープラスで独占配信中のマーベルドラマ「ロキ」。「アベンジャーズ/エンドゲーム」で、アイアンマンたちが訪れた過去の世界で四次元キューブを手に消えたロキ。見知らぬ地で目を覚ましたロキは、”時間の流れが違う“という謎の組織・TVAの男に拘束され、新たな戦いに巻き込まれる。“ロキ推し”にとってはたまらないロキ主役作品ということで、劇場版の公開で高まる作品熱そのままに、彼の物語も見直しておきたいところだ。
ところで、このほど劇場公開された「ソー:ラブ&サンダー」の舞台となるのは、「アベンジャーズ/エンドゲーム」後の世界。ソーの心の中は今にも泣き出しそうな曇り空が続いていた。数えきれないほどの激闘を重ねてきた彼だが、闘えば闘うほど減っていく仲間たち、逆に増えていくのは損失の悲しみだ。
つい先日までそばにいた友が、いまはもうこの世にいない。闘いがなければ、みんな元気で、今日だって楽しく会話できていたかもしれないのに。“もう闘いなんてしない”とばかりに、しばらくの間、闘いを避けてきたソーが、新たな自分と出会う旅が「ソー:ラブ&サンダー」では描かれる。
「マイティ・ソー」「マイティ・ソー/ダークワールド」「マイティ・ソー バトルロイヤル」をはじめとした過去作を見てから劇場に足を運ぶか、それとも最新作を見てから過去作を探求するか。
いずれにしても、人間味あふれる彼の活躍ぶりを見れば、ますます“ソー推し”が増えてしまいそうだ。
◆文=原田和典