【話して鍛える・稲垣宗員】“陽気が才能”B1滋賀・川真田選手

 前回のJ1札幌GK中野小次郎選手に続き、もう一人“ビッグマン”と呼ばれる日本人アスリートを紹介させていただきます。私がパーソナルトレーナーを務める、B1滋賀の川真田紘也選手です。身長204センチ、現在は日本代表にも名を連ねるようになりました。

 徳島県出身、彼のお父さんが城東高校ラグビー部の監督をされていた頃からグラウンドに遊びに来ていたので、幼い頃からよく話したり遊んだりしていました。年を重ねるごとに、ぐんぐん身長が伸び、「このままなら2メートルを超えるぞ」と、よくからかっていたものです。しかし本当に超えるとは…(笑)。

 ちなみに中野選手とは同い年、同じ中学で同じクラス、席は隣同士という奇妙な縁があります。

 川真田選手は高校生の時から私のジムへ通うようになり、とにかくケガの予防と身体をうまく使えるようになりたいと頑張っていましたが、そこで彼の「とにかく明るい」という才能に触れることになりました。

 ジムへ来たときはだいたい、練習がキツかった、試合が始まって30秒で怒られた、などマイナスなエピソードを話すのですが、そのときの様子が「陽気」で、聞いている人たちに悲壮感を感じさせないのです。そして最後には「はぁ〜、でもやれることは頑張らないとアカンのですけどね〜」と大きな体で寝そべってため息。それがなんとも滑稽で、私はいつも笑っていました。

 彼の大学時代のインタビューで印象的なものがあります。

 「当たり前ですけど、本番って自分がやってきたことしか出ないじゃないですか。だから、できないことは『できない』で割り切って、できることを全力でやるしかないと思うんです。緊張がひどかった時、僕は『何かやらなあかん、何かやらな……』って、できもしないようなことまでやろうとしてたような気がします。何でもいいから、自分の得意なことをどんどんやっていくのが一番やないかと思います」。

 カッコつけず、自分の未熟な部分を受け止め、今ある武器を見極め、それを出し切ることに力を尽くす。すべては自分とまっすぐ向き合うことから始まる、そのことに気づけた人間は最強です。

 ため息まじりだけどマイナスには感じさせない川真田選手の「陽気」は、ピンチで悲壮感なく前を向けて、いつの間にか周りの空気を明るくしてしまう才能です。彼はすでに本質的に理解していると思いますが、プロアスリートとしての存在価値をコートの中ではもちろん、コートの外でも高め、「ビッグマン」というニックネームがさらに相応しい男になってくれるよう願っています!

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