取り巻く出来事をじっと追う…宗教2世の目線で描かれた「星の子」を有村昆が解説

取り巻く出来事をじっと追う…宗教2世の目線で描かれた「星の子」を有村昆が解説

芦田の熱演は見事の一言(東スポWeb)

(東スポWeb)

【ニュースシネマパラダイス】どうも! 有村昆です。安倍晋三元首相を銃撃し逮捕された山上徹也容疑者の犯行動機が宗教団体への恨みだったことで宗教トラブルが再び注目されています。

 山上容疑者の母親が熱心な旧統一教会の信者で、1億円以上も寄付して家庭が崩壊したと報じられています。山上容疑者はいわゆる宗教2世です。

 そこで今回紹介するのは宗教2世の目線で描かれた芦田愛菜主演の「星の子」(2020年)です。今回の事件は現実が映画を超えてしまったのが残念でならないんですが、この作品も突き付けられるものがあります。 愛菜ちゃん演じる主人公の林ちひろは生まれた時にアトピー性皮膚炎が非常に酷くて、悩んだ両親が宗教のとある人に「奇跡の水を掛けたら治るよ」と言われてアトピーが治ったことで両親は新興宗教に入信します。

 両親は宗教にどんどんのめり込んで緑のジャージー姿で奇跡の水を浸したタオルを頭に乗せて生活するようになります。家はどんどん貧しくなって、ちひろの姉は家を飛び出してしまうんですね。

 そんな両親を見かねた叔父が助けようとします。両親の知らないうちに奇跡の水を水道水に入れ替えて「入れ替えたことにも気付かず、お前たちは『調子がいい』とか言ってる。こんな物はでっち上げだ!」と目を覚めさせようとするわけです。このシーンは山上容疑者の伯父さんとも重なった部分でもあります。

 さらに中学3年生になったちひろにショックな出来事が起きます。一目ぼれした新任の先生に、夜の公園で怪しい儀式をする両親を見られてしまって。先生はちひろの両親と思わないから「気持ち悪いな、アイツら」とかめちゃくちゃ言って、ちひろは複雑な思いを抱くんですね。

 ラストに教団合宿に参加して家族で星を見に行くシーンがあるんですが両親は「流れ星が見えた」と言うんだけどちひろは「見えない」と。ちひろが「見えた」と言ったら両親が「見えない」と言うところで物語が終わる。同じ物を見てるのに、決定的に見えてる物が違い始めてる。ここから先は想像してくださいという終わり方なんですね。

 映画は宗教を取り巻く言葉では説明しづらい出来事を否定もしなければ肯定もしない。静かにただただカメラだけがじっと追っているという恐ろしい作品でした。

 作品も素晴らしいんですが、愛菜ちゃんの演技が天才的にすごい。親ともめて感情がぐちゃぐちゃになるシーンは芝居を超えた芝居。芦田愛菜じゃなかったら成立しなかったんじゃないかと思います。ぜひ、愛菜ちゃんの演技にも注目してください!

 ☆ありむら・こん 1976年7月2日生まれ。マレーシア出身。玉川大学文学部芸術学科卒業。ローカル局のラジオDJからキャリアをスタートさせ、その後映画コメンテーターとしてテレビ番組やイベントに引っ張りだこに。最新作からB級映画まで年間500本の作品を鑑賞。ユーチューブチャンネル「有村昆のシネマラボ」で紹介している。

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