明石家さんまが大暴れ、吉本史に残る「伝説の一日」が大盛況で終幕

4月2日、吉本興業の創業110周年特別公演『伝説の一日』の初日が大盛況で終了した。

初日公演でまず目を引いたのが、全4回中3回の冒頭でおこなわれた口上を担当した芸人の顔ぶれだ。開幕の口上をつとめたのが、大物・桂文枝と漫才ブームの立役者である西川のりお・上方よしお。弐回目の口上は、漫才界のレジェンドで知られるオール阪神・巨人が担当。そして参回目、吉本を代表する存在・西川きよしとともに壇上へ立ったのが中川家だ。

●中川家、大物路線に乗ったか

『M-1グランプリ』初代王者など実績十分で、芸歴的にもベテランの域に達している中川家。とはいえ、彼らがこの面々に並んで初日口上に名を連ねたのは大きな出来事である。これは、吉本の大御所路線に乗った証明ではないだろうか。また各回トリも、桂文枝、オール阪神・巨人、中川家の流れとなっており、期待度の大きさをうかがわせる人選だった。

初日各回のトップバッターにも着目したい。壱回目は見取り図、弐回目はニューヨーク、参回目はインディアンスが1番手で舞台に立った。いずれも『M-1グランプリ』ファイナル進出の経験が複数回あり、テレビで観ない日はないくらいの売れっ子だ。しかも3組はYouTubeでも高い人気を誇るなど、今の時代性をあらわしているコンビたちである。これもまた吉本新時代の象徴のひとつと言って良いかもしれない。

●岡村隆史の電撃発表に騒然

そうやって110周年の顔となったニューウェーブたちを最後に一気に飲み込んだのは、やはりお笑い怪獣たちだった。

100周年興業に続いておこなわれたのが、明石家さんまによる舞台『さんまの駐在さん』だ。さんまは、いつものように登場時、拍手芸で会場の一体感を作り、さらに「娘の誕生日に呼ばれて(前妻の)大竹しのぶさんの家に呼ばれて行ったら、玄関で『唾、出して』と抗原検査を受けさせられた」と時事ネタをまじえてフリートーク。「前説みたいなことをやってる」とボヤきながらも、マシンガントークで賑わせた。

ここに今田耕司も加わってさらに盛り上がったが、状況が一変したのが、ナインティナイン・岡村隆史が登壇したとき。岡村はパパになったことを電撃発表し、さんまや今田を驚かせたばかりか、すでに愛児誕生から随分と時間が経っていることまで明かした。

さんまは、「明日の見出しが全部決まってしまった。もうエエわ!」と岡村に話題をすべてさらわれたことでイジけてみせた。今田は、岡村が育児で忙しいことを知らずに食事の誘いをしていたことに「俺のノーテンキなLINEを見て、どんな気持ちやってん? 『月水金空いてるー』ってやつ」と赤面。芝居に入っても、今田は「何もやる気がせえへんわ」と投げやりにスタートした。

●さんまの一声で、岡村のニュースと芝居のあいだに一線

さんま、今田が、岡村からトピックスを出させるだけ出させたことで観客は大喜びだったが、一方であまりに騒然としすぎてしまい、芝居に入り込めない雰囲気に。

たださんまは、岡村が演じるキャラクターが意気消沈しているという従来の設定に絡めて「岡村、何を落ち込んでんねん!」と声を張り上げ、話に戻るきっかけを作り、出演者を芝居モードへとチェンジさせた。さらに、村上ショージ、ジミー大西、熊元プロレス(紅しょうが)ら共演者をとにかくイジり倒し、笑いの量をどんどん増やしていき、岡村のニュースと今回の芝居にしっかりと一線を引いた。

もともと、さんまらはアドリブなどが続出することを想定して「長丁場」と踏んでいた。岡村のパパ宣言以降、観客と演者の気持ちの切り替えさせるため、そこにじっくり時間を費やして物語を成立させていったのだ。本来であれば舞台が破綻しそうななか、これほど違和感なく本筋へ戻せるのは、さんまたちにしかできないのではないか。

しかし、軽快なやりとりで前半は時間が押しに押し、後半の出演者から「(袖で)待たせすぎです!」とクレームが入る場面も。それに対しさんまは、「一生懸命やってるんや!」と会場を盛り上げ、舞台終わりの挨拶では 「よくぞ最後まで残っていただいて、ありがとうございます! これからも吉本、盛り上げます!」とコメント。最後は出演者芸人全員で『笑顔のまんま』はじめ、吉本興業の歴代ヒットメドレーを歌い、約14時間半におよぶ公演を締めくくった。

公演初日、まさに吉本史にのこる「伝説の一日」となった。

取材・文/田辺ユウキ

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