将棋の藤井聡太叡王(19)=竜王、王位、王将、棋聖=への挑戦権を争う第7期叡王戦挑戦者決定戦が2日、都内で行われ、出口若武(わかむ)五段(26)が服部慎一郎四段(22)を142手で破り、挑戦権を獲得した。同時に六段への昇段を果たした。藤井との五番勝負第1局は28日に行われる。
一時は服部が優勢になったかと思われたが、終盤で混戦に。一分将棋の中、千日手になりそうな局面を打開した頃、出口の頭には「タイトル戦初挑戦」の文字が「ふわふわと」ちらつき始めた。2019年のデビューから3年。昨年度の勝率が7割3分6厘と好調が続く男は対局後、「少し(将棋界の)水に慣れてきたんだと思います」と柔和な笑顔を見せた。
初めて挑むタイトル戦の相手は、年下ながら先にデビュー(16年)を果たしている藤井。「目の前の一局に全力を尽くされている。いつみても全力の将棋をされているところが強いところだと思います」。出口はデビュー前の18年、奨励会三段時に行われた新人王戦決勝三番勝負で藤井にストレートで敗れている。一方、デビュー後の20年3月に行われた棋王戦予選では勝った。「タイトル戦というもっと大きな舞台で藤井さんと番勝負ができるというのは一個成長したのかな」と再び盤を挟む思いをかみしめた。
昨年4月に北村桂香女流初段と結婚。「”観(み)る将“ではないですけど…妻の将棋を見るようになったので、ちょっと新しい見方ができるようになって来たのかな」。健康にも気を使うようになったといい、「妻が対局を頑張っていると自分も頑張らないとと思う」とはにかんだ。
今大会、目標はベスト4だった。「まだちょっとタイトル挑戦という気持ちにはなってないのかもしれないです。目の前の一局に集中して今終わったという感じ」と挑戦者となった実感はない。だが、23歳で四段(棋士)昇段を果たした出口は「自分は棋士になるのも遅かった。普通の人と比べても早い段階で活躍していかないと」と覚悟を口にする。「どちらが勝つかわからない将棋をお見せできたら」。若武者の決戦はもうすぐ始まる。(瀬戸 花音)