清潔感溢れるビジュアルと、幅広い役柄を我がものとする演技力を武器に、2006年のデビュー以来、数多くの映画やドラマで活躍中の俳優・岡田将生。そんな岡田が好奇心旺盛な旅人を好演したのが、落語の演目を原案とした新感覚オムニバスドラマの第2弾「にんげんこわい2」の第4話「鰍沢(かじかざわ)」だ。
好奇心の赴くままに諸国を放浪している旅人(岡田)が切れたわらじの鼻緒を直すため、道ばたに腰を下ろしていると、ある男から声をかけられる。男から旅の目的を聞かれ、旅人は「行ったことのない場所に行ってみたい」と答えた。すると、その男から「沢より奥に行くな」と釘を刺され、謎めいた薬包を手渡される。しかしその後、好奇心の強い旅人は、誘い込まれるように妖しい雰囲気の川を渡ってしまい、その結果、道に迷って力尽き、倒れ込むことに…。やがて目を覚ました旅人がいたのは見知らぬ山小屋で、そこには、お熊(松本若菜)と名乗る女性がひとり。上等な着物と妖艶な雰囲気を纏うお熊は、旅人が以前、江戸の吉原で出会った月の兎花魁(つきのとおいらん)によく似ていた…。
怖い話の宝庫でもある落語の中から、特に”人間の怖さ”が際立つ演目をアレンジし、美しい映像でドラマ化した「にんげんこわい」シリーズ。岡田が主演したのは、古典落語の中でもサスペンス要素の強い演目だ。
江戸時代が舞台でありながらも、岡田はカツラを被ることなく、現代的な出で立ちのまま。肩の力が抜けたナチュラルな演技で気ままな旅人を演じた。偶然出会った男とも気さくに会話し、笑顔を交わす旅人だが、その行動原理は強い好奇心に基づいているようで、男の忠告を無視して沢の奥まで足を踏み入れてしまう。そんな旅人の冒険心が伝わってくるのが、しめ縄を見つけ、くぐっていくシーンだ。やや暗めの映像ながら、岡田の瞳は輝き、微笑みを浮かべたその表情からは「この先に何があるんだろう」と胸を躍らせていることが伝わってくる。
しかし、旅人は寒さと喉の渇きによって遭難。意識を取り戻したのは、見知らぬ美女・お熊の家だった。「連れと歩いていたら倒れていらっしゃったものですから、勝手にお連れしました」と落ち着いた声で話すお熊。そんな彼女に旅人の好奇心が大いに刺激されたのか、初対面にも関わらず、お熊の顔をじっと見つめるだけでなく、「胸に刃物を突き立てて心中したものの、死体が上がらなかったという吉原の花魁ではないか」などと質問攻めに。その上、お熊の胸元をのぞき込み、傷に指を伸ばすなど、グイグイと物理的距離を縮めていく。無遠慮としか言いようがない旅人の言動だが、不思議と嫌悪感が湧かないのは、ロウソクの暗い灯りの中でも輝く岡田の表情が、子どものように無邪気なためだろう。
そんな旅人を待ち受けるのは、予想外の事態。好奇心に突き動かされた彼が最後に渡る沢の行く先に待ち受けるのは、生か死か…。岡田の表情や演技に注目しながら、息詰まるような時代劇サスペンスをエンディングまで堪能してほしい。
文=中村実香
放送情報【スカパー!】
連続ドラマW-30 真夏の納涼こわい話SP にんげんこわい2
放送日時:2024年8月11日(日)1:45〜
チャンネル:WOWOWライブ
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