第2作『キングダム2 遥かなる大地へ』(22)では秦軍の総大将、麃公(ひょうこう)を演じた豊川悦司、敵国である魏の総大将を務める呉慶(ごけい)に扮した小澤征悦、信の初陣の上官、縛虎申(ばっこしん)役の渋川清彦の熱演が話題に。『〜運命の炎』でも趙国の知将、馮忌(ふうき)に扮した片岡愛之助の王騎をナメきった芝居に目を見張ったが、本作でも実力派俳優たちが映画に厚みと熱量を注ぎ込むその構図がそのまま受け継がれている。注目すべき武将とそれを演じる俳優たちを順番に紹介していこう。
■ついに大将軍としての真価が発揮される王騎
まずは、今回のタイトルにもしっかり刻まれている王騎将軍を演じた大沢たかおだ。過去3作でも、体重を増量した圧倒的な存在感で信が憧れる大将軍の貫禄と風格を体現。信に数々の試練を与えながらも、彼に期待を寄せる器の大きな芝居に魅せられたが、これまで戦局を見守っていた王騎がいよいよ戦場に赴く本作では、王騎=大沢の新たなスゴさが爆発!大将軍とはどんな存在なのか?を自らの姿で示すその迫真の芝居に目が釘づけになる。
■王騎と因縁がある“武神”龐煖
続いては、龐煖に扮した吉川晃司。前作ラストで信たちが野営しているところへ突如として現れ、一瞬にしてとてつもない強さと不気味さを印象づけたのは記憶に新しい。鑑賞前にキャスティングをチェックしていなかった人は、その異様さに驚愕しながら間違いなく「えっ、誰、誰?」となったはず。それぐらい、大きな矛を振り回して、たった一人で信が率いる隊の兵士たちを血祭りにあげていく龐煖=吉川のインパクトは凄まじかった。己の技を磨き高みへ昇ることだけに執着し、自ら「武神」と名乗る龐煖と、彼とは深い因縁がある王騎とのガチバトルは本作における大きなハイライト。王騎と龐煖、大沢と吉川。2つの魂が拮抗し、火花を散らすこの究極の対決は、決してほかでは観ることができない迫力と熱さに満ちている。
■王騎も厚い信頼を寄せる副将、騰の実力とは?
「キングダム」を彩る魅力的な将軍はまだまだいる。王騎軍の副将、騰(とう)を演じた要潤もその一人だ。常に王騎の傍らで支え、なにか命令された時に「はっ」と言うぐらいで、口数も少ない騰。とはいえ、王騎の右腕なのだから、その実力は計り知れない。要はそんな謎に満ちた人物が内に秘める力を、髭を蓄えた精悍な顔つきと独特の空気感だけで印象づけてきたが、本作では騰のただならぬ力がついに覚醒。これまでとは違う表情やアクションに魅せられるはず。
■王騎の命をねらう趙軍の知将、趙荘
『運命の炎』では趙軍の総大将として構えていた趙荘(ちょうそう)役の山本耕史も、その役柄と共にまだ本性を見せていない要注意キャストだ。演技巧者の彼は共演者や観る者を翻弄するクセのある芝居が持ち味だけに、前作から登場していながらなにを考えているのかわからない趙荘役にピッタリ!不敵な笑みの裏にはどんな企みが?剣の実力はどれほどのものなのか?山本の細やかな一挙手一投足から目が離せない。
■山田裕貴に小栗旬、平山祐介、草刈正雄も出演!
このほか、秦への深い怨念を背負った趙将、万極(まんごく)の狂気と残虐さを山田裕貴が原作コミックそっくりの表情が見えないロン毛の白髪とギョロ目で体現し、小栗旬も両軍の戦闘を高みから静観している趙の軍師、李牧(りぼく)の掴みどころのないキャラクターを巧みに演じている。平山祐介扮する蒙武(もうぶ)は秦随一の武力を誇る猛将で戦場でも目立つ存在だ。
さらに、草刈正雄が嬴政の曽祖父にあたる秦国の第28君主、昭王(しょうおう)役で出演しているのも見逃せない。「キングダム」シリーズの迫力とおもしろさは、脇を支える主役級キャストの結集で成り立っている。
文/イソガイマサト
※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記