街頭演説で場外バトル勃発
七夕の7日に投開票された東京都知事選挙は現職の小池百合子氏が291万8015票を集め、3選を果たした。前広島安芸高田市長の石丸伸二氏が165万8363票と躍進。蓮舫氏は128万3262票で3位に沈んだ。投票率は60.62%で前回を5.62ポイント上回った。序盤からポスター問題などで物議を醸した今回の都知事選。各候補の明暗はなぜ分かれたのか。
午後8時の投票終了と同時に当選確実となった小池氏は「ますます重責を痛感するところ」とあいさつ。そして、「これまでなかったような選挙戦でした。一つの知事という席を巡り、56人が立候補という状況。そしてポスターの掲示、さらにはこの間脅迫も受けたり、また街頭ではヤジの大合唱があったりと、これまで経験したことのないような選挙戦でございました」と、17日間の戦いを振り返った。
特に面食らったのが、執拗(しつよう)なヤジだった。7月5日にバスタ新宿前で行った街頭演説は大混乱。観覧ブースを警察官や警備員がずらりと取り囲む物々しいムードの中、演説台の正面後方には、「さよなら小池百合子」「東京を壊すな」「独裁者」などのプラカードがいくつも掲げられ、小池氏に抗議の声が相次いだ。自民党・東京都連会長の萩生田光一氏の仮面姿の男も登場し、「小池百合子への1票は裏金自民党への1票!」と皮肉った。
あまりのしつこさに場外バトルも勃発。「小池辞めろー!」の合唱に、支援者と見られる白いタンクトップの男が「うるせー、ぶっ殺すぞ!」と激高。「何言ってんだお前。ちょっと来い!」とロープをつかんで応酬した。制され、元の位置に戻ろうとするも、勢い余って別の支援者をたたいてしまい、その場で警察に通報された。
その後も「辞めろコール」は鳴り響き、小池氏は演説を中断。約30秒にわたり、沈黙した。政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首が翌日、「小池さん、あれ相当胸に響いてると思いますよ」と話すほどの異例の街頭演説となった。明治神宮外苑の再開発や都庁プロジェクションマッピング問題などの逆風をはねのけた小池氏は「8年間の実績を評価していただいた」と胸を張った。
石丸氏「愉快な仲間たち」に満面の笑み、蓮舫氏の誤算、小池氏との公開討論が…
大方の予想を超えて2位に躍進した石丸氏。「今回、私のチーム、本当に全力を尽くせたなと感じます」と完全燃焼を強調した。特定政党の支援を受けず、SNSを駆使しての選挙戦。NHKの出口調査では、10代・20代から小池氏を上回る支持を集め、無党派層も取り込んだ。6日に新宿で行った街頭演説では、公約の「政治再建」を訴えながら、アルタ前を埋めた聴衆を見渡し、「もはや単なる聴衆ではありません。仲間です。石丸伸二と愉快な仲間たち。こんなにそろいました!」と笑顔でアピールし、喝采を浴びた。ネット上では「石丸さんの演説中身ない」などの声もあったが、終盤にかけて台風の目に。今後は国政にも興味を示し、「たとえば広島1区。岸田(文雄)首相の選挙区です」と含みを持たせた。
よもやの3位になった蓮舫氏は敗因について「私の力不足。そこに尽きると思います」と唇をかんだ。立憲民主党、日本共産党の支援を受け、街頭演説は熱気に包まれた。ただ、小池氏との一騎打ちに持ち込むどころか、急伸した石丸氏にも足をすくわれてしまった。6日に国分寺で行った演説では、「どうして小池百合子さんはチャレンジャーである新人である私と公開討論会に出てくれないのでしょうか。テレビ局から何度も何度も企画・出演依頼が来た。そのたびごとに『小池さんから断られて成り立ちません』」と非難したが……。
一方、今回の選挙戦は本来の選挙活動以外にもさまざまな物議を醸した。6月20日の告示日を迎えると、話題一色となったのが、選挙ポスター問題だ。NHK党は24人を立候補させ、ポスター枠を販売。立候補者と関係のない人物や動物が掲示板をジャックした。また、女性アイドルのほぼ裸に近いポスターが掲示され、警視庁が警告→即日回収する騒ぎもあった。さらに、「カワイイ私の政見放送を見てね」代表の内野愛里氏は、政見放送でストリップさながらの行動に。不適切だとひんしゅくを買った。
内野氏は雷雨の中、ずぶぬれになって演説
これらの騒動は選挙にどのような影響を与えたのか。
内野氏は7月6日夕方、渋谷の駅前で豪雨と雷の中、ずぶぬれになりながら演説。良くも悪くも知名度は上昇し、ツーショット写真を求める男性や若い女性も見られる中、「私の政見放送を見て今回の選挙に興味を持ってくださったという方もたくさんいらっしゃいます」と総括した。
話題先行で、肝心な政策論争がぼやけ、公職選挙法の見直し論も高まった。今後メスが入ることは必至だ。小池氏は「これまで想定していなかった事態に対して、どう法的な課題が整備ができるのか、こういった点も今回の選挙を通じて痛感したところでございます」と話した。ENCOUNT編集部/クロスメディアチーム