ジャッキー・チェン、来日中に語ったファンのためできる“ただ一つ”のこと「1年に1本作品を撮って、皆さんにお見せする」

1974年公開の初主演作品『タイガー・プロジェクト/ドラゴンへの道 序章』から半世紀を迎え、現在でも中国やハリウッドを中心に新作映画の制作を精力的にこなしているジャッキー・チェン。主演50周年記念作『ライド・オン』(公開中)の日本公開にあわせて、なんと13年ぶりとなるジャッキーの来日が実現した。都内3か所、計6回の舞台挨拶を行い、久しぶりに日本のファンに元気な姿を見せてくれた。

MOVIE WALKER PRESSでは、来日中のジャッキー・チェンと今作の監督を務めたラリー・ヤンを直撃!幼少期から大のジャッキーファンを公言し、以前実施したインタビューでジャッキーへの熱い想いを語ってくれた絵描きの石黒亜矢子も同席し、ジャッキーとヤン監督が『ライド・オン』に込めたこだわり、そして日本のファンへの想いを語ってもらった。

今回のインタビューは、石黒が並々ならぬ想いを込めて『ライド・オン』の公開に合わせて描き下ろしたイラストを、ジャッキー本人にプレゼントすることからスタート。ジャッキーは、獣化された自身の姿を中心に過去作のオマージュが散りばめられたイラストをひと目見て、「すばらしい!」と絶賛。直接イラストを手渡せたあまりのうれしさに、感極まって号泣していた石黒を気遣い、記念写真を撮る際には「笑って」と声をかけるジャッキーの優しい対応が印象的であった。

■「もともとスケジュール的に難しかったけど、どうしても日本に行きたかった」(ジャッキー)

――石黒さんのイラストを喜んでいただけてうれしいです。それでは続けてお話を聞かせてください。今作公開前に実施したリモートインタビューでは、ジャッキーさんは日本のファンに向けて「また日本で会いましょう」と仰っていました。まさかこんなに早く来日が実現するとは思ってもいなかったです。

ジャッキー「今回は、本当に撮影の合間を縫って日本に来ることができたという感じです。もともとスケジュール的に難しかったので、前回は代わりに監督が日本に来て舞台挨拶をしてくれていました。そのあとに僕が『どうしても日本に行きたい』と話したら、監督がビックリしていましたね(笑)」

――本当に奇跡的に日本に来ることができたわけですね。

ジャッキー「いま行っていた撮影を早めてなんとか来ました(笑)。カナダでの撮影後に香港で1日撮影があって、さらにその後に広州に行って別の撮影をやらなくちゃいけないという予定だったんですけど、過密スケジュールにちょっと疲れていて。だから『移動が多くて時差ボケが激しいので、ちょっと休みたい』と関係者には伝えて、それを口実に日本に来ました。本当に久々で、13年ぶりの日本になりますね」

――舞台挨拶などで久しぶりに日本のファンとお会いした感想はいかがですか?

ジャッキー「やはり、ファンの皆さんとお会いするのはうれしいですね。わざわざ日本各地から東京までやって来ていただいて。何十年前は、若い女の子だったのが、いまはお母さんになって娘を連れて来てという方がいました。そして今回は、さらにそのまた娘さんまで来ているような、一家団らんみたいな感じでいらっしゃる方もいて。だから、僕にとってそうやって愛し続けてくれる皆さんは、“ファン”というよりも“ファミリー”という感覚を持っています」

――今回公開となった『ライド・オン』は、ジャッキーさんにとっては「馬との共演」が俳優として大きなチャレンジだと伺いました。実際に、馬と一緒に演じてみた感想や撮影上の苦労などがあればお聞かせください。

ジャッキー「馬もそうですが、動物との撮影というのは非常に難しいですね。でも、愛を持ってきちんと接すれば大丈夫で、いい映像を撮ることができます。以前、カナダで乗馬を習ったことがあるんですが、その時の先生が乗馬だけではなく、馬とどう付き合っていけばいいか、慣れていけばいいのかという方法も教えてくれたんです。それはとてもラッキーなことで、今回はその乗馬の先生に教わったことやそこでの経験を活かすことができました。撮影現場では、馬に毎日きちんと対面して、見つめ合って、声をかけて少しずつ慣れていくようにして、撮影をしていきました。馬の目の前でアクションをやったり、大きな音を立てたりすると最初は馬も驚くんですが、だんだんと慣れていくと『この人だったら大丈夫』と信頼感を持ってくれるんです。今回は、馬との信頼の感情を築きあげながら、撮影していった形でしたね」

ヤン「僕も撮影が始まる前までは、馬を撮るわけですからきっと大変だろうと想像していました。でも実際に撮影が始まってみると、ジャッキーが馬を扱う経験自体が非常に豊富で。おかげで馬との撮影は想像していたよりも上手くいきましたし、最終的にはとてもいい撮影現場になりました」

■「ジャッキー・チェンは “アクションスター”であり“ヒーロー”である以前に、しっかりとした演技をされる俳優」(ヤン)

――今作において、ジャッキーさん演じるルオの家というのは、「馬との生活の場」「再会した親子の交流の場」、そして「アクションの舞台」として、とても重要な役目を果たしていると思います。このセットを作り上げるにあたってはどのようなこだわりがあったのでしょうか?

ヤン「おっしゃるとおり、あのセットはとても重要な存在でした。ただ、落ちぶれたスタントマンであるルオがなぜこんな広いところに住むことができるのか?これは映画として見せるにあたっては、合理的に観客の皆さんに納得してもらう必要があると思っていました。そこで、一生懸命考えた結果、落ちぶれたとは言え、かつてルオは大スターだったわけで、その彼が所属していた会社も撮影のセットやスタジオを持っていて、いまは彼が住んでいてもおかしくはないだろうということにしました。そこに唯一の友達である馬を連れてきて暮らすわけですが、生活するだけではなく、やっぱりかつて自分が輝いていた時代を懐かしく思ったりするものも必要だろうし、以前撮影現場にあったいろんな道具や撮影用のワイヤーとかを全部残してあって。それが観客の目に触れることで、『昔はこうだったよね』と思える。彼にとってはそういう環境が必要なのだと考えてセットを作り、撮影をしました」

ジャッキー「もし、こんな家があったら僕はすごくうれしいですね。このセットのアイデアや、あるいはどういう風に作るかというのは、基本的に監督が考えています。僕が撮影前に現場を見に行った時は、セットが8割くらい出来上がっていて、見た感じはとてもいいと思ったんですが、一つ問題がありました。それは、『誰が来てもとても快適に暮らすことができそう』ということ。そこで僕のほうからは、ルオという元スタントマンが暮らすという部分で、意見を出して手を入れてもらいました」

――「アクションの舞台」となることも考えてセットが作られていますね。アクション面においてどのようにこだわって作られましたか?

ヤン「ジャッキー・チェンのスタントチームがそこでアクションするわけですから、セット自体はとても頑丈なものでないといけない。私がセット作りで最初に出した条件は、激しいアクションをしても壊れないように頑丈にできていることでした。結果、木造のセットとしてはとても頑丈で、壊すことも難しいものになりました。いまもそのまま残っているんです」

ジャッキー「僕の場合、まずセットを見に行って、『この空間のこの場所で、どんなアクションができるのか?』というのを研究するんです。今作のセットは事前の準備がよくできていたので、撮影本番の時もすごくラクでしたね」

――『ライド・オン』の制作にあたって、ヤン監督とジャッキーさんの間ではどのようなやり取りがあったのでしょうか?

ジャッキー「僕のほうからは大きな注文などをしませんでした。『ライド・オン』は、監督が脚本も書いているので、ラリー監督の映画ですからね。アクションところだけは、監督から『おまかせしますね』と唯一言われました。

ジャッキー・チェンと言えば代表作は『プロジェクトA』みたいに言われることが多いんですが、僕としてはそこから外れたいといつも思っているんです。映画もアクションだけではおもしろくないと思っているので、そういったアクション中心の映画とはまったく違うジャッキー・チェンを皆さんにお見せしたいと思って撮影には臨んでいます。いままでと違うジャッキー・チェンを撮ってくれて、僕を変えてくれるならば、新人の監督でもまったく問題ないと思っています。そういう意味では『ライド・オン』は、ラリー監督が新しい僕を撮ってくれたと満足しています」

ヤン「唯一のおまかせとおっしゃっていますが、当然ながら現場ではジャッキーといろんな交流があり、意見や提案もいただきました。例えば、ルオが住んでいる家の中にあった金庫ですが、そこに入れる貴重品はジャッキーのアイデアです。また、馬のチートゥが跪くシーンは脚本にはなかったんですが、こうした動きをさせたほうが馬の感情が伝わってルオとの交流を描くことができるだろうという提案を受けました。人物描写についてもいろんな話がありました。それは『こういうふうにすれば僕が格好よく見えるよ』といった話では一切なく、演じる役柄や人物像について、いろいろと話をしていただきました。

ジャッキー・チェンという人物は、我々が見てきたなかでは、“アクションスター”であり、“ヒーロー”ですが、それ以前にしっかりとした演技をされる俳優なんです。今作でのルオという役柄は、以前はスターだったけど、いまは落ちぶれて人生のどん底にいる人物です。そのどん底を、当初はあまりみじめに描かないほうがいいんじゃないかと思っていました。でも、ジャッキーからいろんなアドバイスをもらうことで、自信を持ってルオという人物の“現在”を描くことができました。世の中にはルオのように、かつては売れっ子だったのに落ちぶれてしまい、世の中に忘れられている人物が実際にいます。だから、そうした部分もしっかり描かないと、観客にかつてのスターが落ちぶれていることを信じてもらうことができない。ジャッキーからのそういう提案もあったからこそ、丁寧に描くことができましたし、結果的にすごくよかったと思っています」

■「僕は本当に皆さんを愛しています」(ジャッキー)

インタビューの最後には、「ジャッキー・チェンは長年の憧れであり神様のような方」と話す石黒から、その想いを伝えてもらい、日本のファンを代表してジャッキーからファンへのメッセージを聞いてもらった。ジャッキーは、「何十年来ずっと離れず、ずっと応援してくださっていて、心から感謝申し上げます」と日本のファンへの感謝を述べつつ、自身が長年応援し続けてくれるファンに向けて、“ただ一つ”できることを満面の笑みで語ってくれた。

ジャッキー「皆さんからたくさんのエネルギー、力をもらい、皆さんのおかげで私も若返りすることができました。また、日本の皆さんは、私が作っているチャリティ基金にいつも募金を送ってきてくれるんです。皆さんのこういった気持ちにどう感謝したらいいのかといつも悩んでいます。一人一人に『ありがとう』と言って回ることはできない。なので、僕にできることは一つしかないわけです。

それは、1年に1本作品を撮って、これを皆さんにお見せすること。それによって、皆さんへの感謝の気持ちを表す。そういうことをやるしかないと思っています。これからは、撮れるところまで映画を撮りたいと思っていますし、僕自身これまでと異なるイメージ、異なるキャラクター、異なるジャッキー・チェンを年に1度皆さんお見せしたいと思っています。ぜひ、皆さんのメディアを通して、いまのメッセージを世界中の皆さんにも届けてもらえたらと思います。僕は本当に皆さんを愛しています。ありがとうございました」

取材・文/石井誠

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