【亜細亜エンタメ最前線リポート】#10
今では日常生活に当たり前のように根付いている動画配信サービスだが、2015年が動画配信元年といわれている。この年にネットフリックスも日本に上陸したが、“ネトフリ”の存在感が一気に高まったのはコロナ禍に突入した2020年だろう。人々が自粛生活を迫られた後、韓国ドラマ「愛の不時着」が大きな話題になった。
会員数を1年で300万人から500万人に増やすきっかけになった作品ともいわれ、最終回を見たあと“不時着ロス”に陥る視聴者も多かった。また「梨泰院クラス」も長く視聴ランキングの上位をキープし、その後に配信スタートとなった「イカゲーム」は世界90カ国で視聴ランキング1位を獲得するなど、ネットフリックス最大のヒット作となっている。
韓国コンテンツの本数はユーネクストのほうが圧倒的に多いが、やはりネトフリはオリジナル作品が面白い。現在はキム・スヒョン主演の「涙の女王」が日本の視聴ランキングで1位になっている。
だが、ネトフリ1強時代がいつまでも続くとは限らない。ここ数カ月は期待作の低迷が目立っているのだ。特に期待ハズレだったのは、700億ウオン(約75億9000万円)もの制作費がかかったといわれる「京城クリーチャー」。韓国でも酷評されたこの作品は早々にランキングから姿を消している。
■アマゾンプライム「私の夫と結婚して」は好調
そんなネトフリ作品とは対照的に、最大のライバルといわれるアマゾンプライムで注目されたのが「私の夫と結婚して」だ。ウェブ漫画を実写化した作品だが、ヒロインを務めたパク・ミニョンが役作りのために37キロまで減量したことが連日話題になり、日本版のリメークも報じられている。
また、昨年はディズニープラスも大きな賭けに出たといわれ、注目された。映画俳優チェ・ミンシク主演の「カジノ」のヒットに続き、8月には「ムービング」が配信スタート。全20話の制作費はなんと650億ウオン(約70億円)で、超能力を使うアクションシーンは、ドラマというより20本の壮大な映画を見ているかのような作品に仕上がっている。実際、韓国人たちから強く薦められるほど現地でも話題になったドラマで、主演俳優のチョ・インソンは「ムービング」によって人気が再燃した。
「ムービング」は“第2の「イカゲーム」”といわれているわりには、日本でそこまで大きな波を起こせた印象はないが、動画配信サービスの競争が激化していることは明らかだ。
今年はついにネトフリで「イカゲーム」のシーズン2も配信される。再びヒット作となるのか、もしくは大コケするか。その行方が気になる。(おわり)
(児玉愛子/韓国コラムニスト)