「東洋の魔女」と対のように見える女子バスケチーム「東京2020オリンピック SIDE:A」

1964年の東京五輪の記憶を煎じ詰めていけば、最後に残るのは「東洋の魔女」と呼ばれた女子バレーボール・チームのことである。

紡績工場に勤務する女子工員たちで結成されたチーム。鬼の大松監督のスパルタと根性から生まれた回転レシーブは強豪ソ連の強烈なスパイクを拾い続けた。

では、57年を経た昨年の五輪は。「東京2020オリンピック SIDE:A」(6月3日公開)では、時代の象徴として、女子バスケットボール・チームが「東洋の魔女」と対のように見える。

決勝に向けて躍進するプレーの1つ1つを映画は中継放送より1グレードアップの映像と音で見せてくれる。息づかい、汗、ボールがリングをとらえたときの何とも言えない音…テレビ中継で見た興奮をひと味違う感触で思い出す。

一方で、カメラは育児との板挟みで出場を断念した大崎佑圭を追う。16年のリオ五輪で8強入りに貢献した大崎は出産を経て、20年の東京五輪に照準を絞るが、コロナ禍による延期で「気持ちがもう1年はもたない」と育児優先の道を選ぶ。対照的に「授乳育児」をしながら特例参加したカナダのキム・ゴーシュもカメラは追う。

日本代表のトム・ホーバス監督は、徹底した「チーム力」アップ指導で、大崎の抜けた大きな穴を埋めていく。映画はその道のりをしっかりと追う。子育てと「仕事」の選択、あるいは両立、そしてコロナ…多くの人が今直面する課題と、今も昔も他国より1歩秀でた「フォア・ザ・チーム」の日本らしさが浮き彫りになる。

文字で書くほど、単純ではないが、河瀬直美監督は、さまざまな競技から、納得のハイライトと知られざる難民アスリートのエピソードを織り交ぜ、メダルにとらわれない「人生の勝者」とは何かを問い掛ける。

女子バスケ決勝のひと気の無い観客席にわが子を抱いてポツンと座った大崎の涙。そしてこちらもかなりの時間を割いている女子ソフトボールの対照的な熱い涙。2つの涙が印象に残った。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)

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