■「お前には“特上”だ」
「ブギウギ」は昭和の大スター・笠置シヅ子をモデルにしたオリジナル作品で、歌手・福来スズ子の波瀾(はらん)万丈の人生の物語。第24週「ものごっついええ子や」では、8歳になった娘・愛子の子育てに悩むスズ子(趣里)の日々が描かれている。
過保護なスズ子に愛子が反発し始めていたある日、突如勃発した誘拐騒動。容疑者・小田島は逮捕されたが、その小田島のひとり息子・一(井上一輝)は、内気な愛子にやっとできた友達。騒動で一が転校することになり、愛子はますますスズ子に反発していく。
そんな第115回で注目を集めたのは、小田島の取調べシーン。取調室の中、向かい合って座る高橋と小田島の前にカツ丼のどんぶりが一つ置かれる。小田島への差し入れ…かと思いきや、おもむろに食べ始める高橋。小田島がその様子を遠慮がちに見ていると、高橋の配慮で小田島には特上カツ重が。刑事の野口(北斗)に「お前には特上だ。いつか息子にも食わせてやれるように、真面目に働けよ」と諭された小田島は「息子に食わせてぇ…」と、感情をあふれさせた――。
■視聴者も沸騰「違うドラマが始まったかと」
主要キャストが一人も登場していないのに、2分以上にわたりじっくり描かれたこの取調室シーン。“取調室×カツ丼”という刑事ドラマさながらのベタな組み合わせに、“刑事がカツ丼を食べてしまう”という意表を突く展開。最後は高橋ら人情派刑事たちの温情に触れた小田島が息子を思い、罪を悔いる…人気刑事ドラマを見ているかと錯覚させるような、遊び心あふれるシーンだ。
視聴者からも「違うドラマが始まったかと思ったww」「内藤さん、娘がいる設定まで某刑事ドラマと同じ!」「カツ丼出てきて吹いて、高橋刑事が先に食べ始めてまた吹いた」「この特上カツ重は高橋刑事の自腹だったんだろうな…そこまで想像したら、笑った後に泣けた。いいシーン」といった声が上がり、放送後は「#ブギウギ」がX(旧Twitter)でトレンド入り。Yahoo!検索ランキングでは「高橋刑事」もランキング入りする盛り上がりとなった。
■「警視庁・捜査一課長」で共演済み
高橋刑事を演じる内藤は、20年以上続く「科捜研の女」シリーズの土門刑事や主演作「警視庁・捜査一課長」シリーズ(ともにテレビ朝日系)の大岩一課長をはじめ30本以上の刑事ドラマに出演してきた大ベテラン。刑事役のイメージが強く、2月15日に「プレバト!!」(TBS系)にゲスト出演した際にも「交番で警察官の方と目が合うと黙礼されるんです。僕、上司ちゃうねんけどって(笑)」と、ユニークなエピソードを打ち明けていた。
一方、誘拐未遂犯の小田島を演じた水澤は「SRサイタマノラッパー」シリーズのMC TOM役で注目を集めた俳優。初主演映画「ぼっちゃん」(2013年)で「日本映画プロフェッショナル大賞」新進男優賞を受賞した実力派で、「サイン-法医学者 柚木貴志の事件-」(2019年、テレビ朝日系)の吉川警部役をはじめ「コールドケース」(WOWOW)や「新・浅見光彦シリーズ 後鳥羽伝説殺人事件」(TBS系)、「ボイス 110緊急指令室」(日本テレビ系)などミステリー作品への出演も多い。今回は、誘拐未遂を犯しながらも根底に人のよさと息子への愛情をにじませる人物像を短い出演シーンで体現してみせた。
そんな2人は「警視庁・捜査一課長 season1」(2016年、テレビ朝日系)で共演済み。水澤は、一見真面目な会社員だが裏では金目当てで殺人や詐欺を犯していた非道な人物・沢木役を強烈な二面性で演じた。取調室のシーンこそなかったが、クライマックスには崖ならぬビルの屋上で、内藤演じる大岩一課長に「沢木さん、あなた株に手を出し失敗して、借金がありますね」と引導を渡されるお決まりのシーンも。「ブギウギ」で今回登場した取調室シーンが主要キャスト不在ながらこれほど注目を集めたのは、そんな刑事ドラマの“プロ”たちによる熱演あればこそだったと言えよう。
3月15日(金)は「ブギウギ」第116回を放送する。愛子が学校に行かなくなり、困った鈴子は高橋を訪ね、あるお願いをする。