製作発表時から注目を集めてきたが、2月27日に第1話と第2話が一挙配信されると、戦国コンテンツの歴史に衝撃を与える作品として、SNSを中心に絶賛コメントが続出。その波は日本だけにとどまらず、映画批評を集積・集計する米サイト「ロッテン・トマト」では、批評家からの評価が100%フレッシュ(超高評価)を獲得している。そこで、ドラマ「SHOGUN 将軍」のいったいなにが観る者を引きつけるのか?ディズニープラス公式Xで実施中の「#時は来たSHOGUN #呟き語れキャンペーン」や、「ロッテン・トマト」に寄せられた批評家コメント、本作に魅せられた著名人たちの声をピックアップしながらひも解いていきたい。
■「どれをとっても妥協なし」松平健ら“歴史もの”に造詣が深い人々から賞賛の声!
本作は真田演じる関東を治める戦国武将、吉井虎永が敵対勢力と戦い、様々な計略を用いながら絶大な権力を誇る地位、“将軍”を目指していくストーリー。虎永の宿敵で石田三成にインスパイアされた石堂和成(平岳大)、日本に漂流してきたイギリス人航海士で虎永に協力する“按針”ことジョン・ブラックソーン(コズモ・ジャーヴィス)、按針の通訳となる戸田鞠子(アンナ・サワイ)、虎永の家臣でありながら怪しげな動きも見せる樫木藪重(浅野忠信)、亡き太閤の側室でその世継ぎの母でもある落葉の方(二階堂ふみ)といったひと癖もふた癖もあるキャラクターが次々と登場する。
大坂から江戸にかけて繰り広げられる壮大な攻防戦は、さすがハリウッド!というスケール感。一方で、過去の海外作品に登場してきた日本は、どこか“コレジャナイ感”が漂っていることも少なくなかった。しかし、本作は徹底した時代考証と緻密なストーリー設計がなされただけあって、歴史作品にかかわってきた俳優、歴史ファンの著名人からも感嘆の声が上がっている。
「暴れん坊将軍」シリーズで長年徳川吉宗公を演じてきた松平健は、「真田さんが将軍役さながらにプロデューサーとして陣頭指揮を執り、衣装、所作、殺陣など、どれをとっても妥協のない完璧な時代劇を作り上げてくれた。“時代劇”を正しく世界に広めてくれたことに感謝するとともに、その情熱を心から応援しています」と、真田の手腕を絶賛。
また城好きで戦国時代の虜であるという田村淳は、本作が海外で制作された意義について語っている。「『SHOGUN 将軍』を観て新たに海外の視点が加わることで時代の描かれ方がますますおもしろくなると気付きました。この作品がきっかけで日本のクリエイターが悔しがって、『あの目線を入れようよ』となる気がします」。
歴史通として知られるタレントの松村邦洋は、ロケーションに恵まれたハリウッドでの撮影だからこそ可能にした本作の魅力に言及。「いまの日本の時代劇は、関ヶ原の戦いや、大坂夏の陣、冬の陣、源平合戦も、セットやCGの時代ですが、(「SHOGUN 将軍」は)広大な自然を背景にした大掛かりなドラマになっています」。
さらに上述の通り、本作は海外メディアからも大きな反響を獲得している。「テーマ性を重視しながらも、歴史上の出来事や人物をドラマティックに描いている。すべてを巧みに盛り込んだ説得力のある展開にグイグイと引き込まれる」(TV Guide)というコメントからも、作品のクオリティ、波乱に満ちたストーリー展開に魅了されていることが伝わってくる。
一方で、「この作品は様々な意味で“死”をテーマにしており、特に異なる文化や宗教が“死”をどのように捉えているかを描いている。と同時に、陰謀、策謀、武器のぶつかり合いなど、期待に違わぬ壮大な歴史叙事詩でもある」(Flicks)、「政治的策略と陰謀、魅惑的な日本の文化、それらを“苛烈な激しさ”でまとめ上げて私たちを魅了するこの作品は、なによりも優先して観るべきだ」(Screen Rant)という意見も。日本の、それも戦国時代特有の文化やしきたり、死生観などが興味深いものとして受け止められているようだ。
Xに投稿された映画・ドラマファンたちのコメントも紹介したい。「世界よ!これが日本の時代劇というものだ」「あの時代の残虐性や歴史的な背景を見せつつ物語が進んでいき、このあとどうなって進んでいくのか気になる展開で今年最高のドラマになる!」といった投稿があり、戦国ドラマとしてのクオリティの高さに大勢が興奮している様子。「すべてが本物志向で仕上げられた、紛うことなき日本が舞台の物語が世界へ配信されるという歴史的快挙」「海外スタジオの制作でこれほどの時代劇ができるとは驚きでした」の言葉からもわかるように、日本の歴史を描くレガシーは本作にきちんと息づいている。
■歴史ものは得意じゃない…それでも「SHOGUN 将軍」は沼る!
ところで、歴史ものと聞くだけで、登場人物に共感できない、当時の時代背景がわからない、といった理由から敬遠してきた人も多いのではないだろうか?しかし、本作は歴史に詳しくない視聴者の心もしっかりつかんでおり、「時代劇は得意じゃないんだけど、もうめちゃくちゃおもしろかった!画策されるあれこれどうなる!?」「歴女じゃない私でもすっかりハマったから誰にでもオススメできる戦国ドラマ!」といったコメントが。すっかり「SHOGUN 将軍」ファンになってしまったようだ。
■映画のような満足感!ハリウッドならではのスケールに没入
本作の配信開始に先駆けて、2月19日には都内の劇場でキャスト、プロデューサー陣が登壇したジャパンプレミアが開催され、第1話と第2話がスクリーン上映された。物語序盤から、嵐で荒れる大海原を船が突き進み、天守閣がそびえ立つ大坂城を中心とした大坂の町がどこまでも広がり、真田の剣技が光る殺陣シーンも披露されるなど、巨大なスクリーンで観てもいっさい見劣りしない。幸運にも、スクリーンで本作を鑑賞できた人たちはその圧倒的なスケールに衝撃を受けている。
「ハリウッドの映像技術を駆使して壮大なスケールで描かれる日本の姿は圧巻の一言」
「期待を上回るスケールだった。こんな重厚で描写の細かい時代劇は子どものころに見たきりじゃないかな。絶対、見て損はしない」
「この超大作が配信されるのが信じられない」
「迫力ある画に圧倒されました。1話ごとのボリュームに映画のような満足感がありました」
ドラマとは思えない、映画のような鑑賞後の満足感。この点に言及する海外メディアもあり、「豪華絢爛で深みがあり、繊細ささえ感じさせる大人のためのドラマ。カミソリのような切れ味のある、見応えたっぷりのスペクタクルだ」(Inverse)、「品格のあるドラマだ。豊かなロケーション(この16世紀の日本がすべてバンクーバーで再現されたとは思えない)、見事な演技、そして時間はかかっても見る者を否応なく引き込む魅力的なストーリーに圧倒された」(London Evening Standard)というレビューが確認できる。
■真田広之ら実力派俳優たちの演技が、物語にさらなる深みを与える
プロデューサーとしても製作に携わった真田は並々ならぬ想いで撮影に臨んでおり、ジャパンプレミアでの「多くのスタッフ、キャストの情熱の結晶を観ていただける日が来て、とてもうれしく思っています」という言葉にもその強い気持ちが表れていた。ハリウッド進出のきっかけとなった『ラスト サムライ』では、日本人から見て不自然な描写にならないように積極的に意見を伝えるスーパーバイザー的な役割もこなしていたとか。それから約20年が経ち、劇中の虎永さながらのリーダーシップを本作で発揮。「日本から海外の作品に飛び込んでくれたキャストや時代劇のスペシャリストであるクルーたちの才能をいかに最大限に引き出すかが自分の仕事だと考え、現場で一緒に戦って参りました」とも語っている。
そんな真田の熱演はもちろん、プロデューサーとしての手腕を推す声も多く、ユーザーからは「日本を描いた近年の海外作品のなかで最も真摯に作り上げられていると感じた」「真田広之をはじめとしたキャストの演技や所作もとても美しく引き込まれてしまった」といったコメントが見られる。
さらに、「いろいろな場面で細部までこだわって創ったのがわかる真田広之さんの圧倒的な存在感。浅野(忠信)さんをはじめ共演者の方たちのすばらしい演技」のように、脇を固めるキャスト陣を讃える声も届いている。「浅野忠信さんの樫木藪重の演技が魅力的で引き込まれた」や「平(岳大)さんのクレバーな敵役にグッとくるし、西岡(徳馬)さんの安心感が心地よい!浅野さんのワイルドな野心家っぷりもなかなか〜。実力派ぞろいで豪華」などなど。
「日本が正しく描かれている」ことに言及するコメントも。「個人的に印象が強かったのは、女性の歩き方です。“あの時代の身分の高い女性の所作”としてすばらしく、文化監修や演技指導がいかに仔細に行き届いているか伝わるシーンでした」「武家や奥方様の衣装はもちろんすばらしかったのですか、身分が高くない市井の人々の衣装の“よごれ”もすごくリアルに感じました」と大絶賛。真田らの作品に懸けた情熱がしっかりと視聴者に届いている。
これらの“日本らしさ”については、「複雑な日本の封建社会の先に、俳優たちのすばらしい演技と圧倒的な映像美に出会えるだろう」(Empire Magazine)、「女たちの華麗なる句会と、男たちの血生臭い戦いが実に見事に共存しながらも、激しい展開で魅了する」(Decider)など海外でも高く評価されているようだ。
初回配信から大勢の映画、ドラマファンを魅了している「SHOGUN 将軍」。「早く続きが観たい!」という声も多く、全10話で展開される虎永たちの物語にますます期待がかかる!
■著名人たちの全文コメント
●松平健
「真田さんが将軍役さながらにプロデューサーとして陣頭指揮を執り、衣装、所作、殺陣など、どれをとっても妥協のない完璧な時代劇を作り上げてくれた。迫力あるセットを背景にしながら決して大味にならず、時代劇ならではの“光と陰影”を上手に使って登場人物の本音や葛藤を緻密に表現している。“時代劇”を正しく世界に広めてくれたことに感謝するとともに、その情熱を心から応援しています」
●田村淳
「僕はいままで日本で製作された日本目線の戦国時代を見てきて、それで戦国時代の虜になった1人なのですが、『SHOGUN 将軍』を観て新たに海外の視点が加わることで時代の描かれ方がますますおもしろくなると気付きました。この作品がきっかけで日本のクリエイターが悔しがって、『あの目線を入れようよ』となる気がします。ポルトガルとイギリスは僕たちにとっては外国ですが、彼らの日本に対する感情や想いが描かれることで、更なる深みを出してくれます」
●松村邦洋
「ハリウッドスケールで撮影された映像は迫力がありました。いまの日本の時代劇は、関ヶ原の戦いや、大坂夏の陣、冬の陣、源平合戦も、セットやCGの時代ですが、広大な自然を背景にした大掛かりなドラマになっています。三船敏郎さんや島田陽子さんが出演した80年の名作が、真田広之さん自ら、芝居とプロデューサーの二刀流で大幅にスケールアップして戻ってきました。野球の大谷翔平選手のように、日本の俳優が海外に羽ばたくきっかけになる作品ではないでしょうか。そして、ウィリアム・アダムスから見た日本という切り口がすごい。鞠子・吉井虎永による、260年の平和な世を作るための戦いを見て下さい」
構成・文/平尾嘉浩
※西岡徳馬の「徳」は旧字体が正式表記