「お酒大好き女子」としても広く知られ、TV番組「おんな酒場放浪記」にもレギュラーで出演しているモデルの倉本康子さん。モデルデビューからこれまで、「好き」を仕事に結びつけて、活動の場を広げていったそうです。(全3回の1回)
アルバイト感覚で出場したミスコンがきっかけ
── 短大のミスコンがモデルデビューのきっかけだったそうですね。当時、モデルへの憧れはあったのでしょうか。
倉本さん:学生時代は「早く社会に出たい」とは思っていましたが、「モデルになりたい」と考えたことはありませんでした。子どもの頃からなりたい職業が見つからず、幼稚園の文集では、当時好きだった千昌夫さんを意識して「演歌歌手」と書いていたくらい(笑)。
高校卒業後は短大に進学したのですが、そこで「ミスコンに出ませんか?」と声をかけられたことが、モデルデビューのきっかけになりました。とはいえ、特に最初の頃はお誘いを断り続けていたんですけどね。
── なぜ断ってしまったのですか?
倉本さん:単純に、興味がなかったからです。でも実行委員の方からの「アルバイトだと思って出ませんか?」という誘い文句に、心が動きました(笑)。その後、ミスコンを協賛していたモデル事務所のスタッフの方にスカウトされ、モデルとしての活動がスタートしました。ちなみに、いただいた報酬は友達とカラオケやボーリングなどに行って使わせていただきました。
── ファッション雑誌『CanCam』や『STORY』、ファッションショーなどでも活躍されてきました。モデル人生の中で大きな転機となった出来事はありましたか?
倉本さん:「事務所の移籍」が大きな転機となりました。デビュー後は『CanCam』の撮影がメインでしたが、仕事をしているうちに「ファッションショーの舞台」に興味が沸いて移籍を決意。ショーでの活動を通して「改めて服が好き」と思えるようになり、再びファッション誌へ。現在の事務所へ移籍して約20年が経ちますが、自分らしくのびのびと仕事ができていると感じています。
事務所を変えるって、転職と同じくらい体力も気力も必要です。それでも、「自分の興味のあるフィールドで活動していたい」という思いを胸に、これまでの人生を歩んできました。
自身の“好き”を発信することで仕事につなげた
── 自他ともに認める「お酒大好き」の倉本さんですが、お酒と仕事をどのようにつなげていったのでしょうか。
倉本さん:SNSを始める以前から、自分の「好き」を周りに発信してきたことが、今の仕事にもつながっていったように思います。私は、お酒好きの父の影響もあり、20歳から居酒屋で飲むことを楽しんできました。今も仕事終わりの晩酌は欠かせません。
当時、居酒屋といえば「男性の憩いの場」みたいなイメージが強かったと思います。でも、「女性だって居酒屋で楽しんでるぞ」ということを発信したくて、「連載企画にならないかな?」と仕事仲間に話していたんです。「あわよくば、月に一回くらい私の晩酌代を、仕事で立て替えてもらえないか」と期待していたのは秘密ですが(笑)。
吉田類さんとの連載が「おんな酒場放浪記」のきっかけに(Instagramより)
でも、周りのライターさん、スタイリストさんたちに話しているうちに、本当に『STORY』で連載することに!「類とヤッコの『居酒屋女子』入門」というタイトルで、吉田類さんを看板に立てて、私が類さんに入門するという形で企画がスタート。この連載がきっかけで、『おんな酒場放浪記』につながっていきました。
こんなふうに話すと、「自力で切り拓いてきた」という受け取られ方になってしまいそうですが、人と運に恵まれていたのだと思います。私の何げない話を、形にしてくれる人たちに感謝しています。
自身の骨格に悩み「どんな人も素敵に見える服が作りたい」
── 現在はファッションブランドのプロデューサーとしても活動されていますね。何かきっかけがあったのでしょうか。
倉本さん:「自分の体型や骨格の悩みをカバーできる服を作りたい」と思ったのがきっかけです。私はいかり肩なのですが、この骨格のせいで着こなしが難しい服も結構多いんです。以前は「マネキンみたいなスーパー体型になりたい」と考えていましたが、ブランドを手掛けることで「どんな人も素敵に見える服作りをしたい」と思えるようになりました。
プロデュースするファッションブランド「fua」10周年記念のサプライズバースデーの様子(Instagramより)
私がプロデュースしている「fua」では、デザイン性の高いものではなく、大人の女性がカッコよく見えて、TPO問わずに着られる服を目指しています。これがなかなか難しいんですけどね。普段使いもできて、アクセサリーの組み合わせ次第でフォーマルにも着られる、カメレオンのような服を作っていきたいと思っています。
── ご自身のコンプレックスが服作りに生かされたのですね。作り手の立場に立って、モデルとしてのマインドに変化はありましたか?
倉本さん:モデルとして着させてもらう服の特徴を意識するようになりました。撮影前には、「この服はどこがポイントでどこが売りなのか」を確認するようにしています。服作りに携わってみて、「一着一着にこだわりと思いが詰まっている」と改めて実感したからです。服の魅力が最大限伝わるような、ポージングや角度を意識してカメラの前に立っています。
服のポイントをより良く見せるためのポージングも追求(Instagramより)
PROFILE 倉本康子さん
モデル、タレント。1974年、東京で生まれる。モデルとしてファッション誌や広告で活躍。お酒好き女子としてテレビ番組「おんな酒場放浪記」にレギュラーで出演。InstagramやYouTubeチャンネル「倉本康子チャンネル」ではお酒がらみの企画が盛りだくさん。
取材・文/佐藤有香 画像提供/倉本康子