<※以下、ネタバレ有>
最終回は「神の君へ」・徳川家康(松本潤)は豊臣との決戦に踏み切り、乱世を終える覚悟で自ら前線に立った。真田信繁(日向亘)らは家康の首をめがけて攻め込む。徳川優勢の中、千姫(原菜乃華)は茶々(北川景子)と豊臣秀頼(作間龍斗)の助命を訴えたものの、家康が下した決断は非情だった。翌年(元和2年、1616年)、高僧・南光坊天海(小栗旬)は家康の偉業を称え、乳母・福(のちの春日局)(寺島しのぶ)は竹千代(のちの徳川家光)に“神の君”の逸話を語る。江戸が活気に満ちあふれる中、家康は突然の病に倒れ…という展開。
家康は“神の君”か、はたまた腹黒の狸か。「我らは、有象無象の声に惑わされることなく、正しく、君の偉業を伝えてゆかねばなりませぬ」(語り)。江戸城の一室。天海は、役人たちが覚書にした“か弱き家康”の証言をチェックし「駄目!」「ロクなのがねえ」とボヤキ。稲(鳴海唯)が、家康と鳥居元忠(彦右衛門)(音尾琢真)が“涙の盃”を交わしたエピソードは「駄目ですかね?」と尋ねると「そういうの。こういうやつをもっと集めよ、皆の衆」と指示を出した。
徳川秀忠(森崎ウィン)は「天海よ、立派な話ばかり残すというのも、いかがなものか」。天海は「世間では、狡猾で恐ろしい狸と、憎悪する輩も多ございます。かの源頼朝公にしたって、実のところはどんな奴か分かりゃしねえ」と「源氏物語 夕顔」「吾妻鑑」を手に取りながら「周りがしかと称えて、語り継いできたからこそ今日(こんにち)、すべての武家の憧れとなっておるわけで」。秀忠が「だがのう、人は誰しも間違ったり、過ちを犯したりするもので…」と語るのを制し、天海は「人ではありませぬ。大権現!」――。
「鎌倉殿…」最終回には、松本が家康役でサプライズ出演。今回はその逆の形となり、「…家康」制作サイドから小栗への“恩返し”オファーとなった。
村橋監督は「“小栗天海”に関しては、短いシーンでしたが、たっぷり暴れてもらいました。テイクを重ねるごとに『やりたい放題ですね(笑)』と声を掛けると、その2倍にも3倍にも面白い芝居を返してくれるので、撮っていて物凄く楽しかったのを覚えています」と述懐。
「そんな小栗さんが撮影を終えての全体挨拶で、盟友・松本さんの横で『今回は好き勝手やらせてもらいました』とおっしゃっていたのが印象に残っています」と明かし「大河ドラマの主演の重圧というものは想像を絶するものですし、スターたちが競演する中で、それを受け止める側である主人公の立ち位置は、お芝居をする上で自由とは程遠いのだと思います。そんなしがらみから解放されての大河の現場は、小栗さんにとって新鮮だったのでしょう」と受け止めた。
「そして、その言葉は何よりも親友・松本さんに向けられたものだったのではないでしょうか。『1年半の間、その重圧と不自由さに苦しみ抜いたことをオレだけは知ってるよ』という意味での。直接ではなかったものの、2人だけが分かる労いの言葉が交わされた瞬間だったのではないかと、私は思っています」