カンヌ映画祭の「応募料」は「4万5000円」、アカデミー賞との違いは…知られざる舞台裏

 世界で最も権威ある映画祭・カンヌ国際映画祭が開会中。5月28日(現地時間)の最終日には最高賞「パルムドール賞」が発表されます。毎年、世界中で話題になりますが、そもそも「カンヌ国際映画祭」とはなにか、どのくらいすごいのか、分からない人も多いのでは? そこで、発表前に知っておきたいカンヌの「キホンのキ」をお伝えします。(デジタル編集部 古和康行)

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「新作お披露目会」がカンヌ、「功績をたたえる」のがアカデミー賞

 カンヌ国際映画祭は1946年に始まった映画祭です。ドイツのベルリン、イタリアのベネチアと並んで世界3大映画祭の一つで、「世界で最も権威ある映画祭」です。例年5月に開催されますが、新型コロナウイルスの影響で2020年が会場での開催を中止、21年も7月に延期となっているので、3年ぶりに「平常運転」となりました。映画祭の時期には、世界中から映画業界人やジャーナリストが大勢集まり、注目を集めます。

 アメリカのアカデミー賞も世界的な注目を集めますが、あちらは「映画賞」。すでに公開されたものから、約1万人いるアカデミー会員の投票で決定されます。会員には、監督、スタッフ、俳優に加えてマーケティングや広報の担当者、制作・配給会社の幹部といったビジネス面から支える人たちもいます。このため、「映画産業に貢献した作品」の「功績」をたたえる意味合いを強く持つのです。

 対して、カンヌは「映画祭」。ほとんどの作品はカンヌで「初出し」となるため、映画祭で上映されるまでは限られた人しか見ていません。加えて、審査員も映画監督、俳優、批評家らが務めるので芸術性が重視される傾向にあります。

 ちなみに、映画祭に併設する形で「カンヌ・フィルム・マーケット」という大規模な見本市も開かれています。ここではカンヌ国際映画祭で上映された作品の配給権などを売り買いしていて、「新作のお披露目会」としても注目を集めるのです。

 忘れてならないのは、カンヌが、政治・社会状況のせいで苦境にある監督に光を当てる役割も果たしてきたことです。冷戦時代には、共産圏諸国で冷遇されていた映画がカンヌで上映され世界的評価を得ました。

「4万5000円」とクレカで応募“は”できる

 さて、世界で最も権威のある映画祭の「カンヌ」ですが、その門戸は広く開かれています。公式ホームページによると、応募する作品を記録した媒体によって違いますが、応募料だけなら最高でも350ユーロ(日本円で約4万5000円)です。少しお高いですが、世界的な映画祭への応募費用と思うと身近に思えるかもしれません。ただし、門戸は開かれていますが、カンヌの「オフィシャルセレクション」として上映されるのは、選ばれし作品だけということも忘れてはなりません。ちなみに、決済方法はクレジットカードだけです。

 作品の上映時間は、長編の場合60分以上、短編の場合は15分以下でなくてはいけません。「初出し」が前提なので、YouTubeも含め一般の人が見られるものは審査の対象外です。日本語の作品を出品する場合は、英語かフランス語の字幕をつけなくてはいけません。映画が上映作品に選ばれた場合は、公式記者会見の前にお知らせがきます。

「最高の賞」は「コンペティション部門」から選ばれる

 カンヌ国際映画祭には複数の公式部門が設けられています。以下の3部門には、独自の賞が設けられています。

「コンペティション部門」

 メイン部門で、長編と短編の2種類があります。長編は60分以上、短編は15分以下の作品が対象です。最高賞「パルムドール」はここに出品された作品から選ばれます。今年は長編で21作品の上映が決まり、日本からは是枝裕和監督の「ベイビー・ブローカー」が出品されています。短編部門は「パルムドール」しか賞がありませんが、長編部門にはパルムドールも含め七つの賞が設けられています。カンヌの場合、最高賞は「パルムドール」で、次点が「グランプリ」です。

「ある視点部門」

 公式サイトによると、「テーマと美学が独創的な作品に焦点を当てる」「強力な存在感を持つ作品」を選ぶとありますが、事実上は「第二のコンペティション部門」です。いかにも、「カンヌらしさ」が出る部門と言えるでしょう。新しい才能の受け皿になることも多く、ここでぐんと知名度をあげる監督たちの作品も多いのですが、コンペティション部門で主要な賞をとった名匠たちの作品が入ることもあります。

「シネフォンダシオン(学生映画部門)」

 文字通り、映画を学ぶ人たちが作った映画を対象に選出する部門です。ここでカンヌを初めて体験した若手監督が、ほかの部門で大きく飛躍するケースもあります。

厳しすぎるルールと観客…ドレスコードと途中退席の恐怖

 世界最高峰の映画祭だけに、メイン会場・リュミエール大劇場での公式上映への来場者に課せられるルールもとっても厳しいのが特徴です。

 特に夜の上映会の来場者は、出品者・取材者も含めて、厳しいドレスコードを求められます。男性はタキシード、女性はイブニングドレスや着物などのフォーマルを着用しなくてはなりません。ですが、ここにもちょっぴり変化が。2015年のカンヌ国際映画祭では、底が平らな靴を履いた女性が「靴を履き替えるように」と命じられました。それに激怒した俳優たちがレッドカーペットの上でハイヒールを脱ぎ捨てたことが大きなニュースになりました。この批判をかわしたい運営側は、「靴について規定はない」として任意としました。

 観客の厳しさも「世界最高峰」といわれる所以の一つ。ニュースではよく「日本人監督の作品がスタンディングオベーション」と報じられますが、実はこの「逆」のことも起きます。「面白くない!」「時間がもったいない」と思われれば、途中退席も当たり前。中にはブーイングされることもあるといいます。せっかく招待されても制作陣にかかるプレッシャーは相当なもののようです。

 それでも全映画人憧れの舞台でありつづける「カンヌ」。最終日へ向け、今年はどんなドラマが待ち受けているのでしょうか。パルムドール発表は28日です。

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