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プロの現場は、「面白いと思うものを形にするだけ、1人で完結していた」というアマチュア時代とは、「作業的にはガラッと変わった」という。
「プロデューサーの意見をいかにくみ取るかというのが一番の仕事になってきて。プロデューサーといってもいろんなタイプの人がいて、じっとこっちのアイデアを待ってくれる人もいればどんどんアイデアを出してくれる人もいて、相手次第でこっちも状況に応じたプロットを出すというか。それこそ選考で見られている対応力がある意味、一番求められています。筆力とかアイデア力があるという前提ですが、コミュニケーション能力だったり、プロデューサーの言っていることをくみ取って、それを(脚本に)落とし込む能力が一番、1人では身に着けようもないことなので、そこはこの3年間でとことん鍛えられたと思います」
東映では映画に携わるチャンスもある。
「映画企画部の方とも、成立までには至らなかったけど、企画書用のプロットとかのお仕事を、『相棒』のデビュー作を書いた時に声を掛けてくださって。僕はドラマ部の所属なので、僕が貸し出されるみたいな形ではあるけど、そういう形で、社内で他の仕事をされている映画の方とも仕事できるチャンスがあったので、映画を書くチャンスもなくはないし、ドラマ部もけっこう映画を作っている。劇場で自分の名前を見るのが一つの夢なので、書けたらなあと思いますね」
光益さんは、このシステムの長所をこう説明する。
「3年間は成立する脚本を書くことに専念できる。いろんな番組に携わっている東映のプロデューサーさんたちが身内としてある程度、扱ってはくれるので、出会いやすい。社内をうろついてたら、いろんなプロデューサーさんと会う機会はあるので、どんどん出会って経験を積むことができる。しかも、固定給が出るっていう待遇が(東映の他には)まずない。僕がそうだったんですけど、ここに入る前から会社を辞めて脚本家になろうとしてたので、そういう立場の人は、お金をもらいながら修行ができることはうれしい」
また、同期の存在も大きいという。
「大変な仕事だということは入ってみて分かる部分もあって、たまには弱音も吐きたいし、いろいろ言い合う相手が欲しくなるんですけど、明確に3人、同期っていう仲間がいるんで、定期的にご飯に行ったりLINEでやりとりしたりしているんですけど、それは心強い。同じ立場の分かってくれる人がいるのはうれしいですね」
光益さんは、脚本家の志望者にこうメッセージを送る。
「本気で脚本家になりたい、テレビドラマを書きたいと思ってる人は、迷うことはないかなと。状況が許せばですが、損はないというか、ここまで明確な入り口ってたぶん今、業界にはないと思うので、取りあえず受けてみたらどうでしょう」
東映株式会社の芸術職・脚本家採用のエントリー締め切りは来年1月5日。詳しくは同社の公式サイトまで。(終わり)