■上野「余白を持たないと見えてこないものがある」
試写を見終わった直後で、作品の世界にどっぷり浸かった状態の観客からの質問ということで、熊澤監督も「すごくいい質問がきましたね」と思わずうなるような質問が次々と寄せられた。
その中で、周囲の意見に左右されず自分らしく生きることの大切さも感じ取れる今作にかけて、「自分らしく生きるために心掛けていることは?」という質問が。
それに対して上野は「余白を持つことですかね」と答え、「情報が錯綜していて、日々新しい情報が更新されていて。(演じる)良子さんはあまり携帯を見たりもしていなくて、本を読んだり、タイムレスな生き方をしているんですけど、ああいった時間とかが大事なのかなと思いますね。余白を持たないと見えてこないもの、感じられないものがあると思います」と演じる役柄にも絡めつつ、持論を展開した。
また、無意識にフィルターをかけて差別や偏見を持ってしまうことをテーマに描かれている今作にちなんで、「被害者も加害者も出さず、報道被害や差別・偏見をなくすために必要なことは?」という質問も。
この問いに、林は「どの場面においてもいつからか物事の判断基準、評価とかが分からなくなってきていて。全然知らない人に『こういう人間だ』って言われたりとか本当に蔓延していると思うんです。僕自身も(大勢の人の前に)立って話してますけど、そんなにアドバイスできる立場の人間じゃないと思っていますし、何なら『分かりません』って言いたいくらいなんですけど(笑)」と、素直な心情を明かす。
■林「幸せを願って生きているほうがいい人生を過ごせる」
その上で「もし自分が知らない人によって嫌な気持ちにさせられることがあったときは、絶対に負けないでいたいなと。誰かを攻撃したり、傷つけたりするよりも常に周りの人、誰かの幸せを願って生きているほうが絶対にいい人生を過ごせる、と自分に言い聞かせて。(他人を傷つけるような)この人よりは絶対に俺の方が幸せだ、と思うようにして、自分を保っています」と、自身が心掛けていることを伝えた。
「第14回 小説現代長編新人賞」を受賞したパリュスあや子の小説「隣人X」を原作とした今作の舞台は、紛争のため故郷を追われた“惑星難民X”があふれる世界。各国がその対処に苦慮する中、いち早く受け入れを発表したアメリカに追随するように、日本も受け入れを決定する。人間の姿をそっくりコピーして日常に紛れ込んだXがどこで暮らしているのか、Xは誰なのか、彼らの目的は誰も知らない。社会に不安や動揺が広がり、週刊誌記者の笹憲太郎は、X疑惑の掛かった柏木良子の追跡を始める…という物語。
映画「隣人X -疑惑の彼女-」は、12月1日(金)より東京・新宿ピカデリー他全国ロードショー。
◆取材・文・撮影=月島勝利