<※以下、ネタバレ有>
原作は漫画家・よしながふみ氏の同名人気作。3代将軍・徳川家光の時代から幕末・大政奉還に至るまで、男女が逆転した江戸パラレルワールドを紡ぎ、センセーションを巻き起こした。
過去計3度、ドラマ化&映画化されたが、今回は幕末・大政奉還まで初めて映像化。2025年の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」も手掛ける森下佳子氏が、今年1〜3月の「Season1」(全10話)に続いて脚本を担当。8代・吉宗の遺志を継ぐ若き蘭方医たちが謎の疫病「赤面疱瘡(あかづらほうそう)」撲滅の道を切り拓く姿、開国・攘夷・大政奉還・江戸城無血開城という激動の時代を描く。大筋は原作通りのストーリー展開だが、ドラマは「医療編」「幕末編」と銘打つ。
第18話は、通商条約の調印を進めていた堀田正睦(高木渉)の失態に加え、腹心・阿部正弘(瀧内公美)との死別が重なり、徳川家定(愛希れいか)の心痛は尽きない。ついには床に臥せてしまう。開国派と攘夷派の思惑がひしめき合う中、大老に就任した井伊直弼(津田健次郎)は反発を強める薩摩らを尻目に、徐々に立場を強めていく。瀧山(古川雄大)と胤篤(福士蒼汰)は条約締結を推し進める井伊を懸念。2人の気掛かりはやがて…という展開。
病に伏した家定を心配する胤篤のもとに届いたのは、懐妊の知らせだった。実の親から盛られた毒によって体が弱まり、妊娠は望めないと思われた中での嬉しい知らせ。継承問題も抱えていたが、愛する2人の間に芽生えた新たな命に、大奥は暖かい空気に包まれていた。
家定が胤篤に手作りカステラを振る舞い、「奥でも、表でも共に時を刻む」と懐中時計を共に覗き込んだり、流水紋の裃を着用した胤篤の美しさに照れ隠しする様子など、仲睦まじく、微笑ましい姿が描かれた。
だがその後、中奥で過ごしているはずの家定が、戌の日を過ぎても大奥に姿を見せなかった。老中・井伊直弼(津田健次郎)も「お変わりない」と話すのみで、胤篤や瀧山を始め大奥には不穏な空気が漂い始めた。
そんな中、胤篤は、自身付きの中臈・中澤(木村了)から、薩摩藩主で胤篤の養父・島津斉彬が亡くなったことが知らされる。斉彬は武力を持って幕府へ攻め込もうと画策していたが、その軍事演習の最中に倒れ、帰らぬ人となった。
この時、中澤は「今、江戸城に主はおらぬ。これ以上ない機会であったのに…」と悔やむが、胤篤はここで初めて、家定が既に亡くなっていることを知る。
大奥には、将軍の私事を知りすぎているため、取り乱さぬよう将軍の死をひと月以上知らせないという慣例があった。「家定公は死に申した、腹の子とともに」という中澤の告白に胤篤は激高。「毒か…上様に毒を盛ったのは薩摩か!」。やり場のない悲しい叫びだけが、大奥に響いた。
出産の希望に満ちた日々の中で、天国へ旅立った家定。愛希は同局を通じ、家定について「とても聡明で強い。強いといっても、監督の言葉をお借りすると、“受け入れる強さ”を持っている女性だなと思いました」と印象を語り、「愛にあふれている人だと思って演じました」と、演技に込めた思いを明かした。
胤篤との愛を育む中、お互いが思いを通わせたタイミングについては「私もどのタイミングなのかなと台本を読みながら思っていたんですけど、最初の時点からだったのかなと」と回顧。「もちろん警戒はしているけれども、初夜の時点から、話を聞いているとすごく面白いなとか…自分でも気付かないうちに惹かれていたのかなと思うんですよね。家定自身が自分の感情に気付いていなかったというよりは、そもそも人を好きになるという感情を知らないし、男性に対しての強いトラウマがあるから、常に心を閉じて感じないようにしていたのかなと解釈しました」と、実父による性的虐待を受けた過去を踏まえた心情を慮った。
次期将軍を巡る継承問題で、一橋慶喜を擁立すべく婚姻を結んだ胤篤だったが、2人は策略婚を超えた絆を育んだ。「きっと本質的なところでは、出会ってすぐに惹かれていたのかなと思います」と愛希。18話では、流水紋の裃を着た胤篤に「好きだ、私はそなたが好きなのだ」と涙を流す場面が描かれた。
愛希は、家定はこの時はじめて胤篤への思いを自覚したのではないかと推察。「家定がはっきりと自覚するというか…ふわっと心に花が咲くような、舞い上がる気持ちになったタイミングとしては、流水紋の裃姿を見た時かなと思います」といい、「胤篤は、家定にとって初めて愛することが出来た男性。賢い人だけど、おちゃめさもあって。家定にとって、彼の存在は、癒やしでもあったと思います。そして、ただの男女というよりは、尊敬し合える仲だしずっと共に歩んでいきたいと思える、最初から恋人というより夫婦のような関係性が強かったと思います」と、2人の関係について語った。
胤篤を演じた福士との共演については「実際お会いするまでは、勝手に自分の中でどんな方なのかなと想像膨らませていたんですけど、いい意味で裏切られたというか。すごく明るくて気さくな方でした」と、その人柄を称賛。「そしてすごくお芝居に対して、深く考えられていて。お芝居が好きなんだなというのが強く伝わってきました」と、同じ俳優としての目線で称えた。