両親への自殺ほう助の罪で東京地検に起訴された歌舞伎俳優の市川猿之助(本名喜熨斗孝彦)被告(47)が31日、保釈保証金500万円を納付し、勾留先の警視庁原宿署から保釈された。弁護人が28日に東京地裁に保釈請求し、東京地裁がこの日、保釈を認める決定をした。検察側は決定を不服として準抗告したが、地裁は退けた。
午後8時27分頃、黒いスーツ姿で原宿署から出てきた猿之助被告は詰めかけた約100人の報道陣に向かって深々と6秒一礼。その後署に向けても頭を下げた。多くのカメラが言葉を待ったが何も語らず、そのまま車に乗り込んだ。白髪交じりで、髪の毛は伸びていた。視線は揺らぐことなく、足取りはしっかりしていた。
起訴状によると、両親の自殺を手助けするため、5月17日、東京都目黒区の自宅で向精神薬を両親に服用させ17〜18日に死亡させたとしている。
保釈となった猿之助被告。今後、早ければ今秋にも裁判が行われるとみられ、法曹関係者の間では「執行猶予が付くのでは」の見立てが多い。その場合、歌舞伎俳優として屈指の集客力を誇った猿之助被告が今後どうするのかが注目される。
猿之助被告について舞台関係者は「今では数少ない会場を満席にできる集客力のある歌舞伎役者。知名度、スター性、実力をすべて兼ね備えていた」と語る。歌舞伎界にとって、猿之助被告がいない現状は集客面で苦しいものがあり「今後、関係者の間では俳優としての復帰を望む声が高まるだろう」と舞台関係者は語る。
また、歌舞伎と漫画、ゲームとのコラボの先駆けとなったのは2015年に猿之助被告が手掛けたスーパー歌舞伎セカンド「ワンピース」。その発想力と企画力、プロデュース力は唯一無二といわれ「俳優での復帰が難しければ、裏方としての才能でも期待する人は増えてくるはず」との指摘もある。関係者は「いずれにしても判決が出るまでは動きはないでしょう。その後、本人の体調や精神状態をみながら話し合っていくのでは」と話している。