■いくつものハマり役を抱える売れっ子に
今から10年前、2013年に始まった第1期の「はたらく魔王さま!」以来、ちーちゃん役は東山と決まっているのだ。当メディアのインタビューで彼女は「ちーちゃんと私を重ね合わせているファンも多くいらっしゃるみたいです」と話していたが、そういうハマり役を持つ人は強いし、それがいくつもあるのならますます揺るぎない。
東山で言えばちーちゃんの他にも「ニセコイ」桐崎千棘役、「神のみぞ知るセカイ」中川かのん役、「きんいろモザイク」九条カレン役、「ゆるキャン△」志摩リン役などなど、それぞれのファンが、キャラに東山を重ね合わせていることだろう。
■アーティスト活動も好調の“二刀流”
東山といえばもう一つ、忘れてはいけないのが歌い手としての姿だ。2017年に“FlyingDog”からアーティストデビューを果たし、そこからわずか1年で、ファーストワンマンライブを日本武道館で成し遂げたのは、驚くほかない。2013年から「きんいろモザイク」の主要声優による声優ユニット・Rhodanthe*(ローダンセ)の一員として歌っていたから全くの新人音楽家とはいえないとはいえ、前世でどれだけ徳を積んだんだよ!とツッコミを入れたくなる。
と、思いきや、もともと音痴だったから合唱部に入って鍛えたという逸話も持つ努力家。それがすごい。音痴だと分かったら行き先を変えて歌以外に活路を見いだすのが通常コースなのではないかと思うのだが、そこを踏ん張って、真面目に練習を重ねて音痴を克服し、立派なボーカリストになった。マイナスをマイナスのままにはしておかないぞというパワーが今日の東山を作り上げたのかもしれない。
「声優アワード」では助演女優賞やゲーム賞、歌唱賞を受賞。歌唱賞は安野希世乃、鈴木みのり、JUNNA、西田望見、そして東山からなるユニット・ワルキューレとして受賞している。海を越えてアメリカ・メジャーリーグでは東北出身の“怪物二刀流選手”が連日とてつもない活躍ぶりを見せているが、こちらの二刀流もすごい。東山の爽やかな二刀流で、酷暑の夏も楽しんで過ごしたい。
◆文=原田和典