AERA dot.で連載をしていたタレントのryuchellさんが12日、東京・渋谷区の事務所で亡くなったことがわかった。27歳だった。警察は現場の状況から自殺とみている。
午後8時前、記者が現場に到着すると、事務所前には報道陣のほか、住民が人だかりをつくっていた。
警察関係の車両が到着すると、中からストレッチャーを運び出すなどあわただしさが増した。
現場で状況を見守っていた男性はこう語った。
「近くに住んでいるんですが、ニュースを聞いて、仕事帰りに来ました。ryuchellさんは、女性らしい姿になってから一度だけ見たことがあります。最近は改めて頑張っているなという印象だったんですが……ショックですね」
ryuchellさんはモデルのpecoさん(26)とともにバラエティー番組などで活躍。2人は2016年12月31日に結婚を発表し、18年7月には男児が誕生した。だが22年8月、ryuchellさんは自身の性自認にかかわる悩みを告白し、2人は婚姻解消を発表。「新しい家族のかたちを選んだ」として、pecoさんとその後も一緒に暮らしながら息子の子育てをする生活を送っていた。
AERA dot.では「ryuchell & pecoの子育て日記」として22年1月から連載をスタート。ryuchellさんとpecoさんが隔週で、子育ての様子を語る記事を配信してきた。
昨年8月に婚姻解消をした際には、ryuchellさんとpecoさんが同時に取材に応じ、目の前で心境を語り合った。pecoさんは悩みを抱えていたryuchellさんの様子を「本当に壊れかけていた」と告白。ryuchellさんは悩みを打ち明けたことについて「以前とは全然違う。去年のような生活が続いていたら、最悪な状況になっていたと思う」と語っていた。ryuchellさんとpecoさんはお互いに「人として好き、お互いに尊敬している」と語っていた。
こうした2人の決断を応援する声も多かった一方で、ryuchellさんについては、SNS上では厳しい批判が相次いだ。現在でも<妻子を差し置いて好きなことをやっている><子育てはぺこちゃんに丸投げ>などと、事実とは異なった誹謗中傷ともとれる投稿があふれている。
ryuchellさんはこうした批判にも目を通していたようだ。昨年8月の取材の際には、「いろんな意見をもらいました。覚悟はしていましたが、やはりけっこう落ち込みます」などと胸中を答えていた。
今年6月には、連載を担当している記者の取材に対して、「真に受けていい批判と、気にしなくていい単なる誹謗中傷の批判とは分けてみるようにしている」「価値観の違いからどうしても分かってもらえない人はいると思う」「顔の見えない人の批判は気にしていない」などとたびたび語っていた。
仕事に対する意欲もみせていた。今年1月には4年ぶりとなるアルバムをリリース。全国ツアーも実施した。「苦しいときでも応援してくれたファンの方々に感謝を伝えたかったが、逆にパワーをもらった」「応援してくれる人がいる限り、頑張っていきたい」とも語っていた。
自身の批判に関しては、心配をかけないように気丈に振る舞っていたのかもしれない。記者が「私は最後まで応援しますよ」と声をかけると、ryuchellさんは「ありがとうございます」と笑顔で返した。その表情は今でも忘れられない。
(AERA dot.編集部・吉崎洋夫)
※厚生労働省は悩みを抱えている人に対して、主に以下の相談窓口などの利用を呼びかけています。
・#いのちSOS(電話相談)
・チャイルドライン(電話相談)
・生きづらびっと(SNS 相談)
・あなたのいばしょ(SNS 相談)
・こころのほっとチャット(SNS 相談)
・10 代20 代女性のLINE 相談(SNS 相談)