バックドロップのバンドロゴを脈打つように照らす赤いライトが会場のボルテージを高める中、4人はステージへ登場。「ティーンエイジグラフィティー」で開幕を告げ、「HEBEREKE」「リバイブレーション」でファンの心拍数を一気に高めていく。「みんなで跳ぼう!バカ最高だ!」とあおった「スーパーソニック」では、フロアの照明を点けて観客1人ひとりとしっかり目を合わせながら、佐藤赳(Vo&Gt)は「マジで出し惜しみなし。楽しんでいって」と呼びかけた。
疾走するメロディックチューン「FULLTEN」「爆音の鳴る場所で」を披露した後、「やべぇじゃねぇか」と笑顔でファンに語りかける佐藤。「ちょっと大きくなっただけです。(胸を叩きながら)ここは変わらないんでよろしくお願いします」と、初めて立つZepp Shinjukuへの決意も口にし、「東京・府中から来ましたkoboreです」と“いつも通り”のあいさつを交わした。
ツアーをスタートさせてから約2ヶ月。最新アルバムの収録曲もしっかりと育ててきたことを証明するように、4人は新旧の楽曲を織り交ぜたセットリストを展開させていく。MCでも「帰ってきました東京!」と充実した表情を見せるが、「ファイナルだとは思っていません。“ツアーの1本”としてしっかり歌って帰ります」と“らしい”言葉も届けていた。
その言葉通り、4人は続く「ユーレカ」からライブの空気をガラッと変える。語りかけるように歌う「涙のあと」や、スポットライトの下で佐藤が絶唱した「オレンジ」と、“届ける、伝える”という意志をさらに前面に押し出した楽曲を次々に披露。「ひとりにしないでよね」の曲中で佐藤が「無敵な4人じゃなくて、4人だから無敵なんだ。俺たち最高だろ?」と笑ったように、この“空気の変化”は曲調の振り幅だけが生み出したものではない。ツアーを通じて極限まで高められたアンサンブルの洗練度、そしてメンバー1人ひとりが鳴らす一音一音の説得力がそう感じさせていた。
■バンドとともに成長した楽器群 より説得力を増したサウンド
高速2ビートからメロウな8ビートなど、多彩なリズムで楽曲の土台を支えた伊藤克起(Dr)。起用したドラムセットはTAMAのSTAR Bubingaキット(BD22”×18”、TT10”×8”&12”×9”、FT16”×14”)で、スネアはDrummer’s Base製のコパーとウッドを組み合わせたハイブリッドシェル(14”×6”)。
キックペダルはdwのシングルペダル・DW9000XF。シンバルはZildjian製で統一され(ハイハット14”、クラッシュ18”、スプラッシュ10”、ライド22”、チャイナ20”、クラッシュ19”)、本人左手側にはYamahaのドラムモジュール・EAD10も配備されていた。
曲に応じてピック弾きとフィンガースタイルを使い分けた田中そら(Ba)は、Yamaha BB434をメインに起用しつつ、「涙のあと」では同社製BB2024Xをチョイスした。
田中のアンプは、GALLIEN-KRUEGER 800RB(ヘッド)+Ampeg SVT-810E(キャビネット)という組み合わせで、足下にはMXR製M80 bass d.i.+やM108 10 BAND EQ、Darkglass Electronics製Vintage Deluxe V3などを配置した。
激烈なドライブトーンから美しいクリーンでの繊細なタッチ、ギターヒーロー然としたソロまで、Iconic GuitarsのVM62Sのみで弾き切った安藤太一(Gt&Cho)。アンプはMarshall製JMP(ヘッド)と同社製1960キャビネットで、中低音域をやや強調させるセッティングを採った。
そして最前段にFactory of the Apes製GOKUSOTSU(ファズ/オーバードライブ)を配置し、10種以上のペダルをFREE THE TONE製ARC-4(プログラマブルスイッチャー)で統括している。サウンド面では、マキノ工房製TUBE DRIVER 7(オーバードライブ)が主軸を担い、JERSEY GIRL homemade guitars製Plus Driver(オーバードライブ)、Z.VEX製Fuzz Factory(ファズ)などで歪みのベーシックとバリエーションを創出した。
安藤とツインギターの両翼を担った佐藤もまた、ゴールドカラーが印象的なYamaha製RSP02Tのみを起用。同スペックの黒色モデルをサブに据えていた。
アンプはHughes&Kettner製GrandMeister 36(ヘッド)とMarshall製MX212(キャビネット)という組み合わせ。サウンドメイクは同機で完結させており、足下にはアンプのチャンネル切り替えスイッチのほか、TC Electronic製チューナー・Polytune 2 minのみが配置。ボーカルマイクには、SHURE製ワイヤードマイク・SM58が選ばれた。
■メジャーデビュー直後に突入したコロナ禍 念願の声出しツアーに込めた思い
演奏者、バンド、楽器、楽曲の成長も導いた今回のツアー。4人は「行った19ヶ所へ『さよなら』と『またね』を」と思いを馳せながら「もういちど生まれる」をプレイした後、佐藤は「ちょっとだけ話しますわ」とマイクを取った。
はじめに「事務所とかレーベルとか大人とか、正直どうでもよかった。自分がいい曲を作れなかったとき、ダメになったとき、誰かのせいにするのがイヤだった。大人のせいにするのがイヤだった」と吐露。そして「でも俺は今、『koboreだけじゃない』と思えてる理由がある」といい、「レーベルとか事務所とかじゃなくて、側にいてくれる仲間がいる。最高のチームで、最高の状態でバンドがやれてる。PAとかローディーとかっていう役割なんて1個もなくて、1人ひとりがかけがえのない大事な仲間です」と感謝を告げた。
続けて、その感謝の言葉をファンにも向け、「一番はあんた。音楽なんてどこでも聴ける。だけど、お前が自分の意志でそのフロアに立ってくれていることがうれしい。ライブハウスに来てくれてありがとうね。ずっと友だちでいてくれ」と会場を見渡した。
そして「ちょうどこれからってときにコロナ禍になった。考えていたことは全部白紙、水の泡、仕切り直し」とメジャーデビュー当時を振り返りながら、「『コロナ禍、終わりましたね』なんてヘラヘラできなくてさ。あの大事だった時間っつうのが、もう戻ってこないと思ったら悔しくて悔しくて仕方なかった」と心境を告白。
しかし「何もしないやつには何もねぇよ。だから歌わないって選択肢はなかった。曲を作り続けた。ツアーを廻った」と前を向き、「歌わなきゃってとき、いつもみんなの顔が浮かびます。歌うよ」と再び決意を込め、力強く<こんな僕にも明日は来るのさ 迎えに行くのさ>と歌う「夜空になりたくて」を届けた。
■怒とうのラストスパートへ 会場全体で歌う“俺らとお前の歌”
「お待たせ、汗かくぞ!」――そんな言葉ととともに鳴らされた「君にとって」を皮切りに、ライブは怒とうのラストスパートへ。「テレキャスター」「幸せ」「当たり前の日々に」といったエモーショナルに疾走する楽曲で畳みかけ、MCともリンクする歌詞はファンの心を打った。そうして高まる会場の熱に呼応するように、バンドも「必死に生きてさ、そんなお前がただ遊びに来たライブハウスだろ? そんなお前たちに、俺たちkoboreは、中途半端な音聴かすわけにはいかねぇんだよ!」と全身全霊で音を飽和させていく。
この日3度目の「爆音の鳴る場所」で自分たちとファンの“居場所”を明示した後、「終わっちまうけど…」と惜しみながら「始めるんだ、また」と宣言し、最新アルバム『HUG』の1曲目「TONIGHT」とラストナンバー「この夜を抱きしめて」を届けた4人。「ずっとずっと、俺らの歌じゃなくて、俺の歌じゃなくて、お前だけの歌じゃなくて、俺らのお前の歌を歌い続けたい。ありがとう!」と宣言し、本編を締めくくった。
メジャーデビュー直後からコロナ禍に巻き込まれ、今回が念願の声出しツアーとなった。アンコールでは「いつかこういうところで歌えたらいいなって思って作った曲をやるよ」と、バンド初期の名曲「ヨルノカタスミ」と「勝手にしやがれ」をファンとともに絶唱。鳴り止まないフィードバック音を“再会の約束”として残しながら幕を下ろした。
そして終演後、会場の出口では3年ぶりの対バン企画『FULLTEN』を地元・府中Flightで、8月から12月にかけて行うと発表。サプライズでフライヤーが配られ、ファンの興奮を最後まで高めていた。
■『kobore one man 2023「この夜を抱きしめてツアー」』Zepp Shinjuku公演セットリスト
01. ティーンエイジグラフィティー
02. HEBEREKE
03. リバイブレーション
04. スーパーソニック
05. FULLTEN
06. 爆音の鳴る場所で
(爆音の鳴る場所へ)
07. うざ。
08. 夜に捕まえて
09. LUCY
10. ユーレカ
11. ひとりにしないでよね
12. 涙のあと
13. オレンジ
14. もういちど生まれる
15. 夜空になりたくて
16. 君にとって
17. テレキャスター
18. 幸せ
19. 当たり前の日々に
(爆音の鳴る場所へ)
20. TONIGHT
21. この夜を抱きしめて
22. ヨルノカタスミ
23. 勝手にしやがれ
■『kobore pre.「FULLTEN」』日程
・8月8日(火) 東京・府中Flight『FULLTEN Vol.2』
・9月18日(月・祝) 東京・府中Flight『FULLTEN Vol.3』
・10月9日(月・祝) 東京・府中Flight『FULLTEN Vol.4』
・11月10日(金) 東京・府中Flight『FULLTEN Vol.5』
・12月21日(木) 東京・府中Flight『FULLTEN Vol.6』
※各公演ゲストは後日発表