「第76回カンヌ国際映画祭」のコンペティション部門で脚本賞を受賞した映画「怪物」(6月2日公開)の是枝裕和監督(60)と脚本家の坂元裕二氏(56)が29日、東京・羽田空港で凱旋記者会見を行った。一足早く帰国していた坂元氏はトロフィーを初めて手にして感激。「今も夢を見ているような気分で、この重みが作品の責任感のように感じます」と喜びを噛み締めた。
この日、空港に到着したばかりの是枝監督を、先に帰国していた坂元氏が出迎え会見を緊急開催。坂元氏は授賞式に出席していなかったため、トロフィーを手にするのはこの日が初めて。代理で受け取っていた是枝監督から1・7キロの〝バトン〟が手渡されると、緊張した面持ちで受け取り「実感は正直あまりありません。今も夢を見ているような気分で、でもこの手に乗った重みが作品の責任感のように感じます」とカンヌ初受賞の喜びを明かした。
受賞後、坂元氏のもとには多くの祝福が届いたという。「昨日ジョン・キャメロン・ミッチェル監督から『授賞おめでとう』とメッセージを頂いてタクシーの中で涙がでました」と「クィア・パルム賞」審査員長からの賛辞に感激。
また、坂元氏は30年前にカンヌ映画祭へプライベートで訪れたことを明かし、「いつか自分の作品をここで上映できたらどんなにすてきだろうと考えていて。30年来の忘れていた願いが蘇ってきた」と感慨深げ。次回作については「正直自分がこれから何を書けるのか見えてはおりません。もう結構なベテランでカスカスなんです」と笑いを誘った。
2人の再タッグについて聞かれると、是枝監督は「チャンスがあれば僕はお願いしたい」と熱望し、坂元氏も「2回目という必然があればこんなに幸せなことはない」と〝相思相愛〟。写真撮影では是枝監督が舞台袖に移動し坂元氏の〝晴れ舞台〟を仕立てる粋な振る舞いで会場を沸かせた。
同作は、子供たちと学校を巡るサスペンス調の物語で、母親や教師らに視点を変えながら展開。フジテレビ系「東京ラブストーリー」(1991年)で知られる坂元氏と是枝監督の初タッグ作品で、音楽は世界的音楽家の坂本龍一さん(享年71)が手掛けた。
カンヌでは独立部門「クィア・パルム賞」と合わせて2冠を獲得した。