坂元裕二氏「怪物」着争点は車いす横断者待ってた車にクラクション鳴らした「気付かぬ加害」経験

坂元裕二氏「怪物」着争点は車いす横断者待ってた車にクラクション鳴らした「気付かぬ加害」経験

カンヌ国際映画祭「脚本賞」を受賞した喜びを語る坂元裕二氏(撮影・足立雅史)

(日刊スポーツ)

第76回カンヌ映画祭(フランス)で脚本賞を受賞した「怪物」の坂元裕二氏(56)が29日、授賞式から一夜明けて東京・羽田空港に帰国した是枝裕和監督(60)とともに会見を開いた。

坂元氏は、同映画祭の主要部門から独立した賞の1つで、邦画として受賞した「クィア・パルム賞」審査員長を務めた、米国のジョン・キャメロン・ミッチェル監督から「おめでとう」と祝福のメールが来て「涙が出ました」と明かした。受賞を予想したか? と聞かれると「カンヌに呼んでいただいたのが、何よりもうれしいこと。それ以上の事は考えてもいなかった。チームの1人して作品を見て、好きになれた作品。評価を受けるとうれしいなと言う気持ち。自分のことは全く考えていなかったことが本音」と答えた。

その上で「(受賞を)支持される方が(脚本を)読んでくれているわけじゃない。出来上がった作品から評価される。作品の素晴らしさ…自分では評価しにくい。ミッチェル監督は人の命を救う映画となっていると言ってくれた。そうなるとうれしい」と笑みを浮かべた。

「怪物」は、是枝監督にとって邦画3作ぶりとなる新作。同映画祭コンペティション部門への出品は、韓国映画に初めて挑戦した22年「ベイビー・ブローカー」に続き、2年連続、7回目の選出(カンヌ国際映画祭への出品自体は9回目)。監督は、自ら脚本も執筆するのが映画製作の基本スタンスで、外部の脚本家とのタッグは、95年の映画監督デビュー作「幻の光」以来28年ぶり。坂元氏が川村元気プロデューサーと作っていたプロット(あらすじ)を、18年に是枝監督に見せた“逆オファー”によって、初タッグが実現した。

物語の舞台は、大きな湖のある郊外の町。そこで起きた、よくある子供同士のケンカに見えたものが、息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子供たち主張が食い違い、主次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちはこつぜん姿を消す物語。シングルマザー麦野早織を安藤サクラ(37)沙織の息子・湊を黒川想矢(13)湊の友人の星川依里役を柊木陽太(11)担任教師の保利道敏を永山瑛太(40)が、それぞれ演じた。劇中には、黒川が演じた湊と柊木が演じた依里が、男の子同士でお互いを好きになっていく過程と、その心の動きが繊細かつ克明に描かれている。2人は演じるに当たり、性的シーンで俳優と製作側を取り持ち、ケアするインティマシーコーディネーターや、保健体育の先生の指導も受けている。

坂元氏は、着想のルーツとなった自身の身辺に起きた出来事を語った。

「以前、車を運転して赤信号で待っていたら、トラックが止まっていて、信号が青になっても、しばらく動かない。プップーと、クラクションを鳴らしたところ、それでも動かない。ようやく動いたら横断歩道に車いすの方がいて。トラックの後ろにいた私は、それが見えなかった。クラクションを鳴らしてしまったことを後悔していまして」

ひとしきり語った後、坂元氏は「生活していて、見えないことがある。自分が被害者だと思うことは敏感だが、加害者だと気付くのは難しい。どうしたら出来るか…この10年考えてきた、1つの描き方として、この描き方を選んだ」と「怪物」の脚本に込めた思いを、具体的に語った。

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