歌舞伎の女形の最高峰、立女形(たておやま)で人間国宝の坂東玉三郎(72)の〝素の姿〟を見られる特別企画「お話と素踊り」が5月25日、埼玉・サンシティ越谷市民ホールで開かれる。同企画は令和3年、新型コロナウイルス禍による舞台休演が相次ぐ中、玉三郎が新たな取り組みとして始めた。これまで東京や大阪など全国12カ所で上演。玉三郎が公演への思いを語った。
公演は「トークコーナー」と衣装や鬘(かつら)を付けずに踊る「素踊り」という構成で、上演時間は約90分。これまで豪華な衣装を身に着け、大掛かりな舞台演出による舞踊公演を度々、上演してきた玉三郎。素踊りを選んだ理由をこう話した。
「歌舞伎役者としては素踊りは珍しいが、お客さまが気楽に来られることが大事だと思った。それに素踊りなら衣装や鬘、道具は必要ないので、1日だけの公演でも身軽に全国各地へ行ける」
第1回公演は感染「第5波」の渦中の3年7月、都内で開催された。「難しいときなのに、お客さまがたくさん来てくださり、胸がいっぱいになった。開催を諦めていたので、自分としては本当に意外だった」と、観客の多さに驚いたという。
「普通のお芝居だと上演時間は2、3時間と少し長くなるが、この公演は割と短い時間で踊りを見て帰れるという安心感があったのではないか」と話した。
素踊りの演目は、地唄舞「雪」。昔、芸妓(げいこ)だった女性が別れてしまった恋しい人に会えないつらさから、世を捨てて尼になろうという心情を表現した。薄いねずみ色に染めた白地の着流しで踊る。この地唄舞には、歌舞伎の雪のシーンには欠かせない名曲「雪の合方」の旋律も登場する。
トークコーナーでは歌舞伎の化粧や衣装など伝統芸能に関する話のほか、観客から質問も募集。10問ほどに絞り、玉三郎が直接答えるという趣向だ。後半では、普段なかなか見られない映像も流す予定という。
「(自身が)ダイビングをしている海の映像や、楽屋の映像を出そうかと思っている。ぜひ気楽に見に来てほしい」
問い合わせは、サンライズプロモーション東京(0570・00・3337)。(水沼啓子)