裕基は萬斎の長男で、昨年慶応大を卒業したばかり。3歳に初舞台を踏み、そこから師弟の関係となっていることもあり、父には普段から敬語で話しているという。裕基は「小さい頃からそのような感じになってまして、よく自分の友だちなんかがお父さんが話しているところを見たりした時に、いわゆるタメ口と言いますか、敬語じゃないところを見ていると、驚きというか、そういう関係性もあるんだっていうのはあります」と苦笑しつつ「(自身は)師弟関係が確立してしまっているので敬語でしゃべることが多いですね」と語った。
萬斎も「一門で活動していると周りにお弟子さんもいて、弟子の中の一人でもありますから、自然とそういうふうになっていっちゃいますね」と明かした。
ユーモラスな演技も印象的な萬斎だが、師匠としての姿は「横にいると何とも言いにくいですけど、鬼ですね」と裕基。これに、萬斎も「私も父に、そういう稽古を付けられましたし、誤作動しないように、ちゃんと教え込む。お猿さんと教え込むのと一緒ですから、調教に近いぐらいな教え方かもしれません。基礎のことに関しては型にはめ込むと。その代わり、身に着けてしまう逆に自由になるとだんだん分かる」と応えた。それに万作は「でも孫を教えるときは鬼になるよりはもうちょっと丁寧に説明してやるところがありますね。(息子には)鬼ってほどではないですけど、長時間やって、それを終わるとキャッチボールして一緒に遊んでやるという、そういうやり取りでした」と説明。これに、萬斎は「この子に稽古した後、僕もやりましたね」と振り返ると、裕基は「当時は嬉しかったと思います。どうしてもそういう父としての存在が薄くならないように、父のほうから心がけてくださっていたのかなと思います」と語った。