【4.24『POUND STORM』大会直前インタビューVOL.1】LDH martial artsを率いる高谷裕之代表が目指す格闘技の未来。

元DREAMフェザー級王者でありさまざまな団体で活躍、海外での試合経験もある高谷裕之は、いま格闘技界の盛り上がりをバックアップする側にいる。

現在の仕事はLDH martial artsの代表取締役CEO。同社はEXILEなどの人気グループを擁するLDHグループの、格闘技やトレーニングを専門とする部門だ。トップであるEXILE HIROが熱心な格闘技ファンだったことから高谷との親交が生まれ、高谷のセカンドキャリアもサポートしたいと会社を設立。

目次

LDHの取り組みとビッグマッチ開催

このLDH martial artsはジム「EXFIGHT」を運営、一般会員に格闘技に親しんでもらうところから始まって2020年には世界と闘える選手を発掘すべく『FIGHTER BATTLE AUDITON』を開催している。ここまで2回開催されたオーディションの模様は、ABEMAの『格闘DREAMERS』で配信された。またEXFIGHTに設置されたケージ(金網の試合場)を使い、新鋭たちがしのぎを削る総合格闘技大会『EXFIGHTシリーズ』も定期的に開催中だ。

そして、それらの活動の“出口”として、4月24日にビッグマッチ『POUND STORM』を開催することに。会場は両国国技館。LDHのアーティストによるライブパフォーマンスも行なわれる、音楽と格闘技が融合した新イベントだ。

大会のメイン、コメイン(セミファイナル)で行なわれるのは、LDH所属のプロ選手による大きなチャレンジ。中村倫也はブラジルの強豪アリアンドロ・カエタノ、宇佐美正パトリックは修斗のトップ選手である大尊伸光と対戦する。中村はプロキャリア2戦、宇佐美は3戦だからかなりの冒険と言っていい。

しかし、中村はレスリングで、宇佐美はボクシングでオリンピックを狙える位置にいた逸材。プロMMA(総合格闘技)でもデビュー以来、連勝を飾っている。これから世界に向けて羽ばたこうとする両者。今回はその大きなステップであり、同時に試練の一戦だ。

指導してきた中村、宇佐美について、また『POUND STORM』の魅力について、そしてLDH martial artsのイズムについて。大会を前に高谷CEOにインタビューした。

「勝てるかどうか、正直ギリギリ」のマッチメイク

――4.24『POUNDO STROAM』のマッチメイクは、どれもシビアです。中村倫也選手、宇佐美正パトリック選手の試合も、相手は相当な強豪ですよね。

「勝てるかどうか、正直ギリギリだと思います。ただ倫也もパトリックも、目指しているのは世界ですから。特に倫也はコンテンダー・シリーズ(UFCの選手発掘企画)に出たいという希望も持っているので。そうなると世界的に実績と名前のある相手に勝っていかなきゃいけない。そうじゃないとコンテンダー・シリーズに選考されないだろうと。そういう面でチャレンジが必要なんです」

――世界を見据えるからこそなんですね。逆に言うと、日本で倫也選手の試合を見られる機会は今後そうないかも……という。

「かもしれないですね。コンテンダー・シリーズがあって、そこからUFCと正式契約になったら他の大会には出られないですから」

普通の新人とは「全然違う」中村、パトリックの実力

――めちゃくちゃ出世が早い(笑)。倫也選手はもちろん、パトリック選手もですが普通の新人とはレベルが違うと感じる部分がありますか。

「もう全然違いますね。普通の新人は総合格闘技全体を教えていかなくちゃいけないんですけど、2人には明確な軸があるんですよ。倫也でいえばレスリング。こっちが教わるくらいです。身体能力も高いですし、吸収力も凄い。早い段階で、あとは打撃をどう仕上げていくかという状況でした」

――突出した武器があって、そこに肉付けしていけばいいと。まして倫也選手はお父さんがジムのオーナーで、小さい頃から総合をやるつもりだったというのも大きいんでしょうね。

「大きいですね。試合を見てるから知識がありますし、どうやって強くなるか考えてます。レスリング出身ですけどテイクダウンして上から攻めるだけじゃなく、練習では下からも得意ですからね。倫也のレスリング能力があれば、普通に考えたら下になることってそんなにないと思うんですけど」

――それでも「万が一下になっても」とか「世界レベルで闘ったら下になるかも」という考えがあるのかもしれないですね。

「打撃をもらって(倒れて)下になる場合もあるかもしれないですから。そういうところまで想定してるんだと思います」

LDHのプロ格闘家志望者が急増中!

――パトリック選手の場合は、ボクシング仕込みのパンチが大きな武器です。

「パンチが凄いのはもちろんなんですが、実は小さい頃から空手をやっていて蹴りも得意なんですよ。威力だけじゃなく反応も凄いです。仕留めにいくスピードですね。仕留めどころを逃さない嗅覚がある。課題はグラップリングで、組み技はプロのレベルになるまでどうしても時間がかかるものなんですよ。そこが倫也との差かなと最初は思ってました。でも今はかなり成長していますね」

――この2人は『FIGHTER BATTLE AUDITION』の出身で、今はその模様を密着して番組化したABAMA「格闘DREAMERS」シーズン2も配信されています。その影響で「LDHで格闘技をやりたい」という若い選手志望者も増えているのかなと。

「特にシーズン2が始まってからは増えてますね。今日もプロになりたいという子が何人か来てました。このジムは最初、女性会員のほうが多かったんですけど、最近は男性会員、選手志望も多いです」

――知名度だけでなく、ジムに試合ができるケージがあるなど環境も素晴らしいですよね。

「僕が現役の時にこの環境がほしかったくらいです(笑)。コーチ陣には世界で闘ってきた岡見がいて、レスリングベースのトップ選手だった石田(光洋)くんがいて、打撃のスペシャリストの白須(康仁)さんもいて。いい環境だと思います」

格闘技イベントにもLDHのイズムが

――育成を重視してアマチュア、新鋭の試合もあって、さらに今回のようにビッグマッチもあります。ここで全部できるというか。育成もビッグイベントもというのは、LDH martial artsとして最初から計画されていたんですか?

「そうですね。LDH自体がそういう組織ですから。ダンスのスクールがあって、そこからステージに上がるようになって、と。それと同じなんですよ。ジムがあってアマチュアからプロの試合まである。そういう形でというのはHIROさんが言っていたことでもあります。しっかりステップを登っていけるようにと。ただジムで開催する『EXFIGHTシリーズ』と『POUND STORM』では規模やレベルに差があるので、その中間になる大会を後楽園ホールクラスでやりたいなと思ってます」

――そこまできっちり、底辺から頂点まで格闘技に深く関わると。それがLDHのイズムという感じですか。

「LDHの発信力で格闘技を盛り上げるっていうのは、アマチュアの一般会員からプロ、ファンの人たちまで全部ですよね。育成に関して言えば、やっぱり見ているのは世界です。今は日本と世界の差が開いているので、それを埋めていきたいですね。そのためにも底辺の拡大が不可欠です。LDHのイメージがあれば見てくれる人も増えるでしょうし、見る人が多ければ格闘家になりたいっていう人間も増えますから。やっぱり格闘家になるようなタイプは人に見られたいんですよ(笑)」

ライブのイメージは「スーパーボウルのハーフタイムショー」

――特に『POUND STORM』は華やかなものになりそうです。

「大きいイベントは最初からやりたかったんですよ。そこで大事なのは選手なんですけど、『FIGHTER BATTLE AUDITION』の過酷な選考の中で選手がよく育ってくれました。両国でメイン、セミを張れる選手が出てきたのが大きい。もちろんいろんなジム、団体から注目選手にオファーをして出てもらうんですが、その中でも主役に所属選手を持ってこれたのはよかった。PRIDEでいえば桜庭(和志)選手、修斗でいったら(佐藤)ルミナ選手がそうだったような。そういう意味でも、アマチュアからの育成が大事だったんです」

――『POUND STORM』はLDHのアーティストのライブパフォーマンスも行なわれるコラボイベントです。どんな雰囲気になりそうですか?

「ライブは、イメージとしてはスーパーボウルのハーフタイムショーという感じです。格闘技の試合を盛り上げてくれるものという話をしました。たぶん格闘技ファンも、ライブを楽しんでもらえると思います。僕もLDHのグループはそんなに詳しくなかったんですが、ライブに行ってみたらやっぱり面白いんですよ。逆にアーティストのファンの人が格闘技をどんなふうに楽しでくれるかなっていうのも気になりますね」

EXILE HIROの格闘技リスペクト

――格闘技マニアにこそ見てほしい大会でもあると思います。中村倫也選手と宇佐美正パトリック選手の逸材ぶりは、格闘技が好きな人ほど分かるでしょうし。

「はい。相手の強さも含めてしびれる試合になると思います。倫也って、まだ本当の強さを出してないと思うんですよ」

――デビューから2試合とも打撃で勝ってますから、レスリングやグラップリングの全貌はまだ見えていませんね。

「そういう意味でも面白いと思います。今回は相手が強いですから、今まで出していない面も見られるはずです。向こうは典型的グラップラー。ギロチンが得意なので、どう対策を立ててタックルにいくのかなとか。パトリックに関して言えば、もう誰にでも凄さが伝わりやすい選手なので。熱い試合になると思います。相手の大尊選手もいい打撃のある選手ですから楽しみです。イベント全体の話をすると、とにかくHIROさんが格闘技の大ファンで、リスペクトを持ってます。新しいイベントなんだけど、格闘技のもともとの魅力を消さないようにというのも凄く考えてます」

――この両国大会を経て、これからのLDH martial artsが目指すものを教えてください。

「まずはオーディションやABEMAでの放送も含めて、格闘技が好きな人、格闘技を始める人を増やしていきたいです。このジムで頑張れば、アマチュアからプロ、ビッグイベントまで路線がありますし。それと大会自体もどんどん大きくしたいですね。今はUFCが世界最大の格闘技イベントですけど、それに追いつけるようになっていけたら。今は世界中の選手がUFCを目指してますけど、いつか海外の選手が『POUND STORM』に出たいと言ってくれるようにしたいですね」

――最後に、この記事を読んでいる方々にメッセージをお願いします。

「この大会、第1部では『FIGHTER BATTLE AUDITION』で勝ち残った選手たちの最終選考として実績で格上の選手たちに挑みます。受けてくれた選手たちとの夢の潰し合いを繰り広げます。第2部は今まさに成長している注目のプロ選手たちのサバイバル。そして第3部に中村倫也と宇佐美正パトリックが出ます。もすうぐ世界に出ていく2人の勢い、そしてライブまで全部楽しんでください。出場する全20選手は、みんな夢をかなえようと頑張っている。その夢を一緒に応援してほしいと思います」

▼FIGHT CARD▼全10試合
【バンタム級】 
アリアンドロ カエタノvs 中村 倫也

【ライト級】
大尊 伸光 vs 宇佐美 正 パトリック

【フェザー級】
山本 健斗デリカット vs 河名 マスト

【バンタム級】
風間 敏臣vs 齋藤 奨司

【ウェルター級】
グンター カルンダ vs エフェヴィガ 雄志

【ライト級】
マックス ザ ボディvs オーディン

【ミドル級】
岩﨑 大河 vs 三上 ヘンリー 大智

【フェザー級】
狩野 優 vs 中村 京一郎

【フェザー級】
スソン vs 宇佐美 秀 メイソン

【バンタム級】
海飛 vs 鈴木 崇矢

【出演アーティスト】
PKCZ(EXILE MAKIDAI、DJ DARUMA、ALAN SHIRAHAMA)
EXILE SHOKICHI
GENERATIONS from EXILE TRIBE
THE RAMPAGE from EXILE TRIBE
MIYAVI

■『POUND STORM』概要

【第1部】
LDH「FIGHTER BATTLE AUDITION」最終選考を兼ねた5試合を開催。 立ちはだかるプロ格闘家を倒して、LDH所属契約を勝ち取るための闘い。夢への第?歩を踏み出せるのか!!

【第2部】
格闘技界注目の若手選手が出場する3試合を開催。未だ負けなしの強者、元レスリング世界王者などが集結。これからの活躍が期待される者たちによる闘い。次のステージに昇るのは誰なのか!!

【第3部】
プロデビューから快進撃を続ける中村倫也と宇佐美正パトリックの2試合を開催。世界への挑戦に向けての試金石となる大注目の闘い。二人はどこまで夢を叶えていけるのか!!

※記事中の「高谷裕之」の「高」の字の表記は、正しくは「はしご高」

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この記事を書いた人

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