ネタバレあり!『モービウス』を機に改めて考えたい「スパイダーマン」の複雑な世界線

ネタバレあり!『モービウス』を機に改めて考えたい「スパイダーマン」の複雑な世界線

『モービウス』を機に「スパイダーマン」シリーズの関係性をおさらい!

(MOVIE WALKER PRESS)

「スパイダーマン」のヴィランとして登場するマーベル・コミックスの人気キャラクターで、生きるために医師から怪物になった悲しき主人公にスポットを当てた、ジャレッド・レト主演作『モービウス』が公開されている。

「スパイダーマン」シリーズといえば、映画化の権利関係もあり、様々なユニバースやシリーズが存在し、少しややこしい状態。『モービウス』はどんな位置づけの作品なのかを含め、状況を整理していきたい。

■『モービウス』が属する“ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース”とは?

天才的な頭脳を生かし、人工血液を開発するなど名医として多くの人命を救ってきたマイケル・モービウス。彼は自身が抱える血液の難病を治すため、吸血コウモリの血清を自らに投与。すると病気が治るだけでなく超人的な力まで得るも、その代償として暴走する力の制御に苦しむことになってしまう。

一方、同じ病気を患っていた子ども時代からの親友マイロも、血清によって能力を得るが、その全能感の虜になり次々と悪事を働いていく。同じ能力を手にしながらも対立することになった2人がぶつかり…というのが本作の物語だ。

本作は、ヴィランを主人公としたことや同じ能力を持つ者同士が戦うという点でも類似している『ヴェノム』と同じ“ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース”(SSU)の第3作目。SSUとは、以前は“ソニー・ピクチャーズ・ユニバース・オブ・マーベル・キャラクター”(SPUMC)と呼ばれていたもので、その名の通りソニー・ピクチャーズが手掛けるスパイダーマン関連映画のこと。さらにそれらの作品群が世界観を共有しているユニバースのことを指す。

「スパイダーマン作品はすべてSSUなのでは?」と思うかもしれないが、ここに絡んでくるのが、マーベル・スタジオによる“マーベル・シネマティック・ユニバース”(MCU)。もともとスパイダーマンの映画化権はソニーが持っているのだが、トム・ホランド版がMCUに合流したため、現行の『スパイダーマン』映画はMCU、それ以外のスパイダーマンヴィランの映画はSSUという状況になっているのだ。

■『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が開いたマルチバースの扉

そしてこのSSUとMCUは“マルチバース”と呼ばれるややこしい関係にある。マルチバースとは、日本語で「多元宇宙」といったところ。いくつもの宇宙が存在し、それぞれの宇宙にそれぞれのスパイダーマンが存在するパラレルワールド的なもの、と言えばイメージがつきやすいだろう。この説明としてアニメ映画『スパイダーマン スパイダーバース』(18)がわかりやすいのでチェックしてみてほしい。

SSUとMCUは本来交わることのない世界線なのだが、その前提を覆してしまったのが『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(22)。この作品では、スパイダーマンとドクター・ストレンジのある失敗によってマルチバースの扉が開かれ、SSUとMCU、さらには過去の「スパイダーマン」シリーズの世界線までもがリンクしてしまい、3人のスパイダーマンと、各シリーズのヴィランたちが対決するという物語が描かれた。

■『モービウス』の世界線と今後の可能性

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』でのマルチバース化によって、『モービウス』に浮上したのが、この作品がどのユニバースで起きている話なのか?という疑問だ。

例えば、予告映像ではマイケルが歩く裏路地の壁にトビー・マグワイア版スパイダーマンのイラストの上に「MURDERER(人殺し)」と書かれた落書きがチラッと映ったが、これはマグワイア版「スパイダーマン」シリーズに加え、スパイダーマンがミステリオを殺した犯人に仕立て上げられたMCU版『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(19)も想起させる(本編には登場しなかったが…)。

さらに、本編に映るタブロイド紙デイリービューグルの紙面には、「RHINO ON THE LOOSE: ZOO HOAX FOOLS US ALL」という見出しが掲載されており、これは「アメイジング・スパイダーマン2」(14)に登場したヴィランのライノを思わせる。このように、至るところに異なるスパイダーマンのユニバースの要素が入り混じっている。

そして結局『モービウス』はどこのユニバースに属するのか?という疑問の答えだが、劇中でモービウスが悪党を脅すシーンで発した「私はヴェノムだ」という冗談や、刑事の「サンフランシスコの一件以来の大惨事だ」というセリフ(『ヴェノム』はサンフランシスコが舞台)、そしてなにより、本作の監督のダニエル・エスピノーサが明言しているように、『モービウス』は『ヴェノム』と同じユニバースの作品となっている。

そんな本作だが、エンドクレジット後でまたユニバースの垣根を越える展開が描かれる。というのもMCU版『スパイダーマン:ホームカミング』(17)のヴィランであるバルチャーことエイドリアン・トゥームスが、『モービウス』の世界に突如現れ、モービウスと手を組もうと近寄ってくるのだ。

これはコミックスに登場する、スパイダーマンを苦しめるヴィランのチーム、“シニスター・シックス”を彷彿とさせ、SSU4作目として『クレイヴン・ザ・ハンター』が控えていることからも、ヴィランたちが集結することは十分にあり得る展開といえるだろう。

今後のSSU作品がどのような展開を見せていくのか?ユニバースのつながりを意識しながらチェックしてみてほしい。

文/サンクレイオ翼

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