“女芸人マニア”として知られているお笑いコンビ「馬鹿よ貴方は」の新道竜巳が、これから“馬鹿売れ”しそうな女芸人を紹介するこの連載。新年最初となる今回は、87歳の母親と63歳の息子という、ハチャメチャな親子コンビを紹介する――。
【プロフィル】
コンビ名‥おとんがポックリ残されたうちら
所属‥吉本興業
養成所‥東京NSC20期生
結成‥2014年4月1日
写真左‥小春誠治
生年月日‥1959年2月21日
写真右‥小春桂子
生年月日‥1936年1月1日
先日、テレビ神奈川のバラエティー番組「ニューヨークと蛙亭のキット、くる!!」を見ていたら、とてつもない存在感を見せた究極のクズ息子がお母さんと組むコンビが登場しました。それがこの「おとんがポックリ残されたうちら」さんです。息子の誠治さんが63歳、母親の桂子さんは、なんと今年の元日に87歳になりました。
このコンビ、まずネタの見せ方が斬新すぎます。桂子さんはネタを全く覚えられないため、イヤホンにボイスレコーダーからセリフが流れるようにし、ネタ中はそれを聞きながら演じるんです。イヤホンからはコードがつながっていますが、お客さんの疑問は無視してネタを行います。
芸人を目指したきっかけは、漫才の素人大会に出場したら50組中2位になったこと。桂子さんが「吉本にすぐ電話せい」と言い、誠治さんが電話して養成所に入ったという流れです。僕も何かのライブで見た覚えがありますが、とてもおもしろい。その時もすごくウケていました。
「おとんがポックリ残されたうちら」という強烈なコンビ名ですが、その名の通り、お父さんは12年前に亡くなったそうです。棺おけの前で泣いていた桂子さんに誠治さんが「おとん、ポックリ逝ったな。残されたな、俺ら2人」と言ったら、桂子さんは「漫才コンビの名前みたいやな」と答えた。後になってそのことを思い出し、コンビ名にしたそうです。
コンビを結成した直後は、歌手のDAIGOさんがやる“DAI語”のように、「おとんがポックリ残されたうちら」をアルファベットにして「OPNU」と名乗っていましたが、2018年ごろから今のコンビ名になったようです。
誠治さんは「仕事があった時に備えて、いつでも体を空けときたいと思って、仕事はしてない」と言ってます。こういう言い方をするということは、芸人になる前は仕事していたのかと思えば「働いてないです」。結婚しているんですが、働かなかったため、20年前から別居しているそうです。
過去には会社に20年近く勤めていたこともあるのですが、なぜか急に曲ができたのでオーディションに送ったら合格。そこで会社を辞めてシンガー・ソングライターになろうとしたんですがうまくいかず、挫折したところ奥さんに愛想を尽かされました。
おカネがなくなった誠治さんは、「おかんの年金で暮らせないか? おとんの退職金もあったので、それでいこう」と思ったそうです。そして「父親の年金を10億にする」と宣言。1000万円をちょっとずつ株に使い、「10億稼いだら豪邸に住もう」と思っていたんですが、おカネは全部なくなってしまった。誠治さんの見解では、そこからお父さんは寝込んでしまったのではないかとのことです。
誠治さんがNSCに入ったことを別居中の奥さんにメールしたらひと言、「死ね」と返ってきたそうです。そんな誠治さんですが、ギャンブルはやらないし、お酒もたばこも全くやらないそうです。「唯一の楽しみはピンサロです」とお母さんの隣で楽しそうにしゃべっていた。なかなかの人間です…。
お母さんは、とにかくお客さんが笑ってくれるのがうれしいとのこと。笑い声が聞こえてくるのが一番幸せだそうです。これだけハチャメチャな息子・誠治さんに対しても愛情深く接しているのが、見ているだけでも分かり、とても癒やされました。
☆しんどう・たつみ 1977年4月15日生まれ、千葉県出身、本名・濱島英治郎。平井“ファラオ”光と組む「馬鹿よ貴方は」として「THE MANZAI」「M―1グランプリ」で決勝進出を果たした実力派。緻密なネタ作りに定評がある一方、女芸人ナンバーワン決定戦「THE W」では、予選会場に足しげく通い、ほとんどの出場者のネタを見るほどの“女芸人マニア”。