「新文芸坐」を巡っては、昨年9月に「元新文芸坐スタッフ」を名乗る人物が、ツイッターで「池袋の映画館、新文芸坐に勤務していた際に受けたパワハラや労働問題などについてつぶやきます。告発後に話し合いをしたものの『なかったこと』にされました。弁護士にも相談したものの、経済的・精神的に裁判をするのは難しいと結論を出しました」などとしてハラスメント被害を告発。今年4月には「告発直後から新文芸坐を運営している株式会社マルハンの人事部を通じて、話し合いをしてきました。結果的としては、解決していることもありますが、すべてにおいて円満に解決することはできませんでした。しかし、当方が大変消耗しており、限界を感じたため、話し合いを終了することにしました」と報告していた。
映画「LOVE LIFE」は、ベネチア国際映画祭のコンペティション部門に選出された話題作。木村文乃、永山絢斗ら実力派俳優が出演し、ミュージシャン・矢野顕子が1991年に発表した同名楽曲をモチーフに、愛と人生に向き合う向き合う夫婦の物語を描く。
ハラスメントへの覚書を固定ツイートにするなど、ハラスメント問題に深く取り組んできた深田氏。「新文芸坐」での上映が発表されると、「元新文芸坐スタッフ」は深田氏に対し「突然失礼します。『LOVE LIFE』が池袋・新文芸坐で上映されるようですが、新文芸坐でのハラスメント等の問題や現状をご存知の上で、上映の判断をされていますか?深田監督のハラスメントへの取り組みと矛盾していると感じました」とメッセージを送った。
これについて深田氏は「新文芸坐におけるハラスメント被害を訴えられている『元新文芸坐スタッフ』様ならびに新文芸坐、双方にヒアリングを行わせていただきました」と報告。「ヒアリングにおいては、訴えの出ている被害・加害の経緯やその後の話し合いの経過、謝罪の状況について、可能な範囲においてできるだけ詳細に両者より確認し、また新文芸坐からは現在の労働環境、『元新文芸坐スタッフ』様の求める改善策も含めた今後の改善の方針などについて伺いました」とし「それを受けて、配給・製作委員会と相談の上で総合的に判断し、今回は予定通り上映は実施することとなりました」と発表した。
続けて「ただし、今回の決定は継続中の問題の幕引きとは一切無関係であり、ハラスメント等の行為を看過したり現在の状況を全肯定する意図でなされるものはないことを付記します」と説明。「原則として映画館内部での労使の問題について直接介入を行える立場にはありません」とし、両者の話し合いが進展するよう祈りを込めた。
この対応に、元新文芸坐スタッフは「こちらの被害者です。ハラスメント問題に取り組んでいる深田晃司監督の作品が、ハラスメント問題等が解決していない新文芸坐で上映されるということに、大変傷ついております」と反応。「(1)深田晃司監督自身に上映館についての決定権があるわけではなく、意見は言えるという立場ではあるものの、最終的には製作委員会の判断となるそうです。 (2)深田晃司監督個人としては、新文芸坐で上映することに対して、まったく問題ないとは考えていなく、大変心苦しく思っているそうですが、今回は配給会社を説得できるまでには至らなかった、とおっしゃっていました」と補足した。