【ニュースシネマパラダイス】どうも! 有村昆です。米国のトランプ前大統領が2024年の大統領選に立候補することを表明しました。同氏を巡っては機密文書の持ち出しや、連邦議会襲撃事件への関与など複数の疑惑が浮上しています。大統領選に立候補することで訴追させにくくする狙いがあるんじゃないかという指摘もあるようです。もし、そうだとしたらリーダーとしていかがなものでしょう。
そこで今回は「リーダーを選ぶ」という観点から、日本でも話題になった「ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ」(20年公開)を紹介しましょう。本作はウルグアイのホセ・ムヒカ元大統領が主人公。ムヒカ氏が12年に国連で行ったスピーチに感銘を受けた、当時フジテレビのディレクター・田部井一真さんがウルグアイに渡って取材をしたドキュメンタリー映画になります。
ムヒカ氏は地球の環境を議論する会議で人間の幸せについてスピーチをしました。先進国の人はそれっぽいことを言うけど、何の解決策も示さないですよね。ムヒカ氏は言います。「豊かさは物とは比例しない。いい服を着たり、いい家に住んでも、もっともっとと満足しないことこそ本当に貧しいことだ」と。
ムヒカ氏は公邸に住まず、妻と愛犬と小さな農場で質素な生活をしたことで「世界一貧しい大統領」と呼ばれたのですが、それには理由があって貧困層向けの住宅建築プロジェクトのために自分の給料の8割を寄付したりしてるんです。そんなムヒカ氏だからこそ「我々は発展するために生まれてきたのではない。幸せになるために地球に生まれてきたのだ」というメッセージは心に響きます。
こう話すと平和主義者のおじいちゃんが大統領になったと思うんですが、若い頃は軍事政権にNOを突き付ける左翼ゲリラだったんですよ。銃撃戦をやって12年間の投獄生活を送った経験もあります。
投獄中に本を読むことしかやることがなくて、いろいろな国の本を読んだそう。なので日本の歴史とか文化にもとても詳しい。そんなムヒカ氏が危惧したのが日本の若者の投票率が低いこと。16年に来日した際には、講演で若者たちに「(政治を)信じてないんだね。信じてないなら自分が信じられる何かをつくり出そう。自分と人生を信じよう。不満を持つことはいいことなんだ」と訴えかけています。
いい生活をしたいと思うことも決して悪いことではないと思います。ただ、どんな未来を目指し、どんなリーダーを選ぶべきなのか、そして自分自身はどういう幸せを得たいかは、しっかり考えたいですよね。本作はそのきっかけを与えてくれる一本です。
☆ありむら・こん 1976年7月2日生まれ。マレーシア出身。玉川大学文学部芸術学科卒業。ローカル局のラジオDJからキャリアをスタートさせ、その後映画コメンテーターとしてテレビ番組やイベントに引っ張りだこに。最新作からB級映画まで年間500本の作品を鑑賞。ユーチューブチャンネル「有村昆のシネマラボ」で紹介している。