初めて日比谷のレッドカーペットを歩いた感想を聞かれた二宮は「レッドカーペットができたこと、沿道で見に来てくれた人たちから声をかけてもらって、反対側で取材を受けるという光景を見て、3年ぶりに、映画祭をやっているんだなとこみ上げてくるものがありました」と喜びを口にした。
また、日本映画の魅力を尋ねられた二宮は「映画って、役者や撮影の技術もどんどん前に進んでいるエンターテインメントの一つだと思うし、いろんな国の映画がありますが、僕はやはり『日本の映画っていいな』と思ってしまいます。映画はそうやって回顧できるおもしろいエンターテインメントだなと思いますし、日本の顔の一つになっているのかなとも思います」としみじみ語った。
『ラーゲリより愛を込めて』については「辛くて苦しくて重たくてしんどい状況が続くけど、だからこそその先に続く希望や愛、日本人の絆がより深く刺さるんじゃないかなと。多くの方に観ていただきたいです」とアピール。
瀬々監督は「実際にウクライナで戦争が起こっている状況です。平和って当たり前だと思っていたけど、いまの状況をどうやって生きていけばいいのかということを、日本の過去の時代をもう1回捉え直すことで、いまの時代をも捉え直せればという想いで作りました。皆さん、遠い世界のことじゃないと思って観ていただきたいです」とあふれる想いを語った。
セレモニーは、元宝塚歌劇団の柚希礼音、紅ゆずる、美弥るりか、七海ひろきの華麗なるオープニングアクトからスタート。その後、フェスティバル・アンバサダーの橋本が登場。今年のTIFFについて「野外の華やかなレッドカーペットはコロナ禍以来かなと思うと感慨深いし、特別な1年になるのかなという気がしてうれしかったです」と笑顔を見せた。
今年のTIFFのテーマは”飛躍”だが、日本映画が飛躍を遂げていくための課題について問われた橋本は「日本の映画とひと口に言ってもいろんな映画がありますが」と前置きしたあと、「日本というとても小さい島国では、どうしても広い世界に対して閉鎖的な印象が強いと私も常日頃思いますが、その閉ざされた国のなかでも、これだけ豊かで繊細な感性が育っているんだなとしみじみ感じます」と語った。
さらに橋本は日本映画の魅力について「湿度の高いところです」と延べ、「映像って平面的なのに、日本映画は空気の匂いや湿度、自然の豊かさが肌の感触にダイレクトに伝わってくるような生活感がとても好きです。そしてこれからどんどん飛躍していくために、まずは世界を見渡すこと、世界を知ることが大事なのかなと」と力強く語った。
その後、コンペティション部門の審査委員長を務めるジュリー・テイモアをはじめ、シム・ウンギョン、ジョアン・ペドロ・ロドリゲス、柳島克己、マリークリスティーヌ・ドゥ・ナヴァセルら審査員たちも登壇。
ジュリー・テイモア審査委員長は「世界中から招集された人たちが集まって審査できることはすばらしいこと。映画祭では、自分が行きたいと知らなかった場所に、作品を通じて出会うことができます」と、多国籍の審査員たちとTIFFで審査をできる喜びをかみしめた。
さらに「いま、世界はコロナや戦争などで分断されています。でも、映画祭で映画を観て、クリエイティビティや想像力によって、皆で一つになれるんだと、もう一度思い直してほしいです。いま、一番欠けているものは、人や場所に対する共感だと思うので、この映画祭でそれらを得られたらと思っています」と映画祭開催の意義を述べた。
第35回東京国際映画祭は、本日10月24日〜11月2日(水)の10日間にわたり、シネスイッチ銀座、丸の内TOEI、角川シネマ有楽町、TOHOシネマズシャンテ、TOHOシネマズ日比谷、ヒューマントラストシネマ有楽町、丸の内ピカデリー、有楽町よみうりホール、東京ミッドタウン日比谷ほかで開催される。
取材・文/山崎伸子