さだまさしさんといえば、ラジオで鍛えたトークの長さと面白さもおなじみ。そのさださんイチオシの若手落語家が、昨年真打ちに昇進した正太郎改め九代目春風亭柳枝さん(40)だ。14日に東京・目黒で開かれる柳枝さんの披露公演には、さださんら豪華ゲストが出演し、口上にも並ぶ。さださんは落語を演じるのか。柳枝さんはどう「対抗」するのか。
落語イコール爆笑、ではない。ほっこり笑える滑稽噺(こっけいばなし)、心に染みる人情噺を、決して派手ではなく、じっくり聞かせる柳枝さんは、間違いのない実力を持ったアベレージヒッターだ。
東京落語の世界では真打ちに昇進すると、ようやく一人前。「師匠」と呼ばれるようになり、弟子も取ることができる。そして寄席や披露公演でトリを取る。でも、落語家生活はここからが長い。人気、実力をつけ、再び寄席のトリに呼ばれるようになる真打ちは全員ではない。
昨年、正太郎から九代目柳枝という大名跡で真打ちに昇進。柳枝は62年ぶりの復活で、先代を知る人は少ない。だから自分で名前を大きくしないといけない。
披露公演は、多くの人に名前と芸を知ってもらうためのまたとない機会。柳枝さんもコロナ禍の中で披露公演を務め、今回が東京での最後の披露公演となる。
その公演に、柳枝さんを盛り上げてあげようと集まるのは、さださんのほか、立川談春さんと春風亭一之輔さん。
さださんと柳枝さんのつながりはこうだ。さださんは東京・国学院高校時代、落語研究会に所属。その後輩である同校の先生が、柳枝さんが中学3年の時、「文化祭で誰か落語をやらないか」と勧めたのだという。「誰もやらないので、やってあげようと演じたら、ハマってしまった」のが柳枝さんだ。
大学卒業後、塾講師をしていたが、敬老の日に慰問で落語を演じたのをきっかけに、春風亭正朝さんに入門。真打ち昇進前の二ツ目時代は人気、実力のある先輩落語家にかわいがられ、落語会にも呼んでもらった。談春さん、一之輔さんはそうした先輩でもある。
大名跡復活に、さださんも「我々にとっては(三遊亭)円生が復活したようなもの」と大喜び。柳枝さんはいつものように、現代人にも十分楽しめる古典落語を披露するだろう。さださんが柳枝さんに「対抗」して終演時間がどれだけ延びるかだけが心配な、めでたい会になりそうだ。
九代目春風亭柳枝襲名披露公演inめぐろパーシモンホールは14日午後6時半、都立大学・めぐろパーシモンホール大ホール(東急東横線都立大学駅下車)。出演は、春風亭柳枝、春風亭一之輔、立川談春、春風亭正朝、さだまさし。8000円(小倉染色図案工房謹製の手ぬぐい、口上書付き)。問い合わせは03・6327・3710(チケットポート)。【油井雅和】