するりベント酒 フーテンの寅さんの故郷、葛飾・柴又で今年の春を堪能 焼きそばとチューハイで満開の花見

週刊連載なので、時間差ができてしまって申し訳ない。先週、花見に行ってきた。

場所は葛飾・柴又だ。フーテンの寅さんの故郷である。寅さん、やっぱり好きだなぁ。たぶん全作見てる。見逃しているのがあったらものすごく嬉しいな、という境地だ。

柴又に行ったのは今までに2回だけ。その一回は「孤独のグルメ」の大晦日スペシャルのロケだ。もう4年前か。

今回、柴又駅を降りて、寅さんの銅像を拝み、帝釈天の参道手前にある、ロケ地のゑびす家の前を通ったら、店は休みだったんだけど、入り口になんと

「孤独のグルメ出演店」

と貼ってあってビックリした。振り返ると参道入口の桜が青空に満開。

なのに帝釈天は曜日のせいか休みの店が多く、わりと空いていてゆったり歩ける。

お参りして、おみくじを引いたら「凶」だった。よく引くのでもう驚かない。お、また来たかよしよし、とニヤける。

寅さんの冒頭によく出てくる江戸川の土手に行ってみる事にした。歩いていくと、土手の手前に「軽食・菜花」という店があり「焼きそば」ののぼりが立っている。お!江戸川土手で、焼きそば弁当で、酒だ。即決定。

テイクアウトできるかと聞くと「できますよ〜」とのこと。飲み物は、ビールもあったが、たまにはタカラ缶チューハイにしよう。

できてるのを温めるのかと思ったら、奥さんが注文を聞いてから焼きそばを作り始めた。

待っている間、店内を見ていると、寅さん映画の写真が貼ってあって、その写真が今この店から見える風景に似ている。聞くと、ご主人が、

「出ましたよ。1作目と4作目に出てる。まさにそこから撮ったのが、映画の最初に出てます」

と何百回も答えたであろう軽い口調で言った。映画に出た時とは、改装されているようだ。店舗は写真よりずっと新しい。見える土手に階段はなくなり、左右にスロープがついている。なるほど時代だ。

容器に入れたのを袋に入れてくれて手渡され、冷たい缶チューハイと持って、土手に上がった。眼前の視野がぐーんと広がる。グラウンドの向こうに、江戸川が晴天を写して青く横たわっている。思わずマスクを下げて深呼吸。胸の中まで青空が入り込んでくるようだ。

右手を見ると、少し先に満開の桜が固まって植わっているところがある。しかもその下のベンチが空いている。思わず足早になりそこを目指す。

いやー、あっぱれ。桜の花の下で、焼きそばに酒だ。最高のお花見になった。

ソース焼きそば、具は豚肉とキャベツ、そこに玉ねぎが入っているのが珍しい。青海苔がかかり、紅ショウガが添えてある。言うことなし。冷たいチューハイをグビリとやる。木漏れ日がチラチラ美しい。

向こうに見えるのは矢切の渡しだ。舟が行き来している。

大混雑の井の頭公園から逃げて、電車でえっちらおっちらここまで来て、本当によかった。つかのま、今年の春を堪能しました。 (マンガ家、ミュージシャン 久住昌之)

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